どこかの生物学者による解説
本編次話にほんの一瞬ほど関連します
カナルディオンの山中には、様々な生物がおり、その生態は多様性、独創性に富んでいる。
今日はその中でも、一般市民の間で、広く親しまれているヤグーについて紹介しよう。
生物学名は『ヤグー』
これは、発見者のヤグディル・オスレーの名前からつけられている。
成体でおよそ、5キロほどの大きさになるこの生物は、山中に多く生息していて、それぞれが単体で生活を営んでいる。
繁殖期になると集団を形成することもあるが、それ以外はのんびり悠々自適生活といっても良い。
険しい山々を好んで生息するため、天敵が少なく、そのため気性も穏やかだ。また数も多いことから、比較的捕獲がしやすいだろう。
ヤグーの見た目についての説明に移る。
まず全体的に鶏を想像して見よう。
次に、鶏の胴体部分を魚の鱗で覆う。
足は短く太く、筋肉に富んでいて、その脚力は岩を飛び移る際に発揮される。
見た目はアヒルの足のようにも見えるが、その違いは大きい。
足先には鋭い爪が付いていて、捕獲時に触れると、怪我を追うこともあり、けっして油断は禁物だ。
頭はまさに鶏の頭部を4倍ほど大きくし、なおかつ鶏冠の変わりに、尾までモヒカンのように羽が揺れている。とくに頭頂部の羽の見事さは有名だ。黄色、橙、赤の三色が繁殖期には色鮮やかに主張される。
緩やかなカーブを描いた背の先、尾っぽは太く長く、イグアナのよう。
ただ、トカゲのように尾っぽきりをするところが違う点だ。ここで、分かって欲しいのは、ヤグーの尾は生涯に2度しか生えてこないことだ。
何故二度なのかの謎はいまだ解き明かされていない。
主に、人間にとって山中での非常食扱いを受ける彼らの肉は実に美味い。
よく締まっている肉は、鳥のささ身に似ているだろうか。
私のお勧めは、塩焼き、チーズ巻き、そして煮込みだ。
本来の旨みを引き出すため、余計な味付けは無いほうがいい。
うちの家内は料理があまり上手くないのだが、ヤグーの調理だけは天下一品だ。
これに惚れて結婚を決めたといっても過言じゃないかもしれない。
ちなみに、夫婦仲は円満で、今度の休みにはデートと称し観劇へ行く予定だ。
目下の悩みは来月迎える結婚20周年記念のプレゼントは何が良いだろうか・・・ということに尽きる。あらゆる方面から現在検討中で、良いアイディアがあれば、ぜひ教えてもらいたい。
ん?そんなことは聞いてない・・・と。
こりゃ失敬。
ともかく、もしあなたが、山中で遭難し、そこでヤグーを見つけたとしたら幸運だ。
すかさず捕獲のための準備をし、つかまえ、非常食としよう。
一匹捕まえるだけで、成人一人の二日・・・いや節約すれば4日は持つ。
その間に、助かる道が模索できるだろう。
また、ヤグーの生息地では岩が多く見られ、運がよければ近辺で洞窟などの避難場所も見つかる。
一石二鳥だな。
ただ、これだけは注意して欲しいのは、ヤグーを捕獲するのに、決して『落とし穴』などという戦術を捕らないで欲しいということだ。
先程も述べたとおり、ヤグーは脚力に優れている。
小さな岩なら軽く飛び越えるだろう。
落とし穴を作り、それを軽々飛び越えた先に、もし諸君が隠れていたとしたら・・・・
爪に当たった君の身体は、全治2ヶ月の怪我を追うことだけは確実だ。
経験者の言うことは絶対に聞いておこう。
では、諸君の旅の安全を祈って。
サモエル・マチビアンコ・グエトロ