異世界でのこぼれ話①
遂に始めてしまいました。
お時間があればよろしくお願いします。
本編と平行しつつ、ぼちぼち書いていこうと思います。
眠っていたはずのベッドの中から、血みどろの世界に来て3日目。
緑に囲まれた野営地は、一見するとキャンプ地にいると錯覚してしまいそうになる。
もちろん、戦装束の騎士や、腰に下げられている剣、何より観光地でしか見ない馬車を見るとここは違う世界なのだということを認識させられる。
だがそれ以外では、あまりにもふたつの世界は似通っていた。
森の木々も、その間を飛んでいる鳥たちも、
地球で見たのと変わらない姿をしている。
寸分無く違うかといわれれば自信が無い。
以前はごく当たり前に周囲に存在していたものたちで、深く観察したことは無かったから。
もちろん、端々まで眼を向ければ違いは多岐にわたってあった。
奥深く、人の立ち入らないジャングルのようなところには、虫だけでなく、鳥や、果てはウサギのような小動物でさえも溶かして養分にしてしまう植物が。
ムカデのように無数の足を持ち、色彩も似通っていながら、大きさだけが鼬のように巨大なもの。
蚊の様でいて、なぜか天幕の布まで溶液で溶かし歳若い者の生き血しか吸わない虫。
手乗りサルのような姿なのに、その背にはこうもりのような翼があり、伝書鳩と同じく、伝令ができるもの。
カバのように巨大なのに、全身・尻尾はふさふさで、しかも2本あり、性格は犬みたいな
動物も・・・・。
だがそんなことは知るはずも無い。
そんな奥地には今のところ全く用がないし、進行上、出てきてこられても迷惑だからだ。
だから、今日もエミは何も知らない。
フェミニストな騎士たちが、見えないところでエミが来てから身だしなみに気をつけ始めたことも、殿下が毎晩寝顔を見ている事だって、
もちろん知らない。
そうやって異世界での日々は過ぎていく。