夢十夜 意訳第3話
夏目漱石の夢十夜 第3話を現代版に意訳してみました。
オリジナルを書けるだけの力がまだありません。
なので古い文豪を教科書にして意訳勉強中です。
夜 完成
こんな夢を見た
女を背中におぶっている。
誰だかは分からない。
ただ不思議なのは、顔がない、正確には何か顔全体を覆うマスクのようなものを着けていた。
そのかわり、靴を履いていなかった。
僕は、なぜそんなものをかぶっているんだい、と聞くと「なによ、ずっと前からじゃない」と当然かのように答えた。
誰かの声に似ていたが思い出せなかった。
地下鉄の階段を上がり地上に出た。
歩道はとても狭かった自転車や看板や陳列棚 等で実際には 人一人通れるぐらいのスペースしかなかった。
鷺の影が時々暗闇に差した。
「公園の前まで来たわね 」
「どうしてわかるんだい」
「だって鷺鳴いてるじゃない」
すると、鷺がふたつ鳴いた
何故こんな女を背負っているのが解らなが、兎に角、どこかに置いて家に帰りたかったかった。
向こうを見ると公園の入り口から黒い森が見えた。
あそこに行ってみようと、考えた途端
「ふーん、そうなんだ」
「何がだよ」
女は答えなかった、ただ
「あなた、重くない?」と聞いた
「重くはないけど」
「今に重くなるわ」
僕は、黙って公園の森を目印に歩いていった。
公園の遊歩道は、不規則で真っ直ぐにたどり着ける道はなく、なかなか森はにたどり着けなかった。
しばらくすると 二股に分かれていた
そこで、少し休んだ。
「石が立ってるはずよ」 と女は言う
なるほど 石柱が立っていた。
左に市民の森、 右に公園管理事務所と書いてある。
暗い公園に赤い字がとても鮮やかだった。
その鮮やかな赤が女の足の爪にも綺麗に塗られていた。
「左がいいんじゃない?」
左を見ると さっきの森の影闇の影を高い空から二人の頭に投げかけていた
僕は、ちょっと躊躇した。
「遠慮しなくてもいいわ」
マスクの下で、全て知ってるわよという声だった。
僕は、仕方なく森の方へ歩きだした。
やがて、森に近づいてくると
「どうもこのマスクは、不自由だし不格好だわ」
「だから おぶってやってるじゃないか」
何だか嫌になった。
早く森に行って捨ててしまおうと思い急いだ。
「もう少し行くとわかるわ、 ちょうどこんな夜だったわ」
独り言を言っている。
「何が?」
「何が って知ってるじゃない」 嘲笑するように言った。
すると、何か知ってるような気になってきた、はっきりとはわからないけど 、ただ こんな夜だったようにも思える。
そして 、もう少し行けばわかるようにも思えてきた。
分かってしまえば、何か大変な事になりかねない。
分からないうちに早く捨ててしまおうと思い急いだ。
雨はさっきから降っている、遊歩道は、だんだん暗くなる。
女を抱えたままの手は、さっきから痺れが治まらないしポロシャツの両脇と襟は汗で色が変わっている。
背中の女は僕の過去、現在、未来をことごとく 言い当てる。
そして、白いマスクを被り声は、朝の天気予報の様に明るい。
僕は、サーカスの綱渡りを思い浮かべた。
細いロープを裸足の男が長い天秤棒を巧みに操り、バランスを取りながら歩いている。
落ちそうになりながらも天秤棒を使い上手くバランスを戻す。
その天秤棒の片方に女がぶら下がっている。
もう片方には、僕自身がぶら下がっていた。
「そこよ、そこだわ。ちょうどその桜の根のところよ。」
雨の中で女の声ははっきりと聞こえた。
靴の感触は、芝生の土の上のようで、遊歩道からは、外れてしまっている。
少し前にある黒いものは確かに女の言う通り 桜の木 だった。
「その桜の根のところ だったわね」
「うん そうだったね」 思わず 答えた。
「たしか、大正15年寅年よね?」
なるほど、大正15年 寅年 らしく思えた。
「あなたが私を殺したのは今からちょうど100年前なの」
僕はこの言葉を聞くや否や今から100年前の大正15年 寅年のこんな雨の夜に、この桜の下で布袋を被せて遊女を絞め殺したという自覚が忽然と頭の中に起こった。
僕は、人殺しだったと初めて気がついた。
途端に背中の女が釣鐘のように重くなった。
終
高評価があればつつぎを意訳していきたいと思っております。




