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6.終わりそして始まり

「待っていたぞ!魔王!」

「なっ!なぜ勇者がここに!?エルマ貴様!テレポートに失敗したのか!」


テレポートした瞬間、勇者パーティーに囲まれている状況に愕然とした顔になる魔王様


「いえ、テレポートは成功しましたよ」

「ふざけるな!これのどこが成功したのだ!」

「そ、そうよ!これじゃあさっきよりも最悪の状況じゃない!」


魔王様とリティアは慌てた様子で後ろを振り返り、私の姿を確認するとその目を丸くする


「エルマ、なんだその姿は・・?」

「白銀の髪にまっ白な瞳って・・?」

「エルマ・・いったい誰の事を言っているのですか、愚かな魔王よ・・」

「なんだと!」


私の蔑むような視線に怒りの表情を浮かべた魔王が手を振り上げる


「女神セリア様に何をするつもりだ魔王!」


魔王の手が振り下ろされる前に私と魔王の間に割り込んだ勇者の一太刀で力が弱りきっている魔王はリティアと共に吹き飛ばされる


「今だサヤ!魔王を捕らえよ!」

「はい!拘束の鎖よ!魔王を束縛せよ!」

「んなっ!」

「きゃっ!?なによこれ!う、動けない!?」


吹き飛ばされた魔王とリティアの体が漆黒の鎖によって拘束されていく


「こ、これは拘束の鎖!我が城で保管されていたはず・・なぜ人族が持っている!?」


それはあなたのズボラな管理体制が原因で私が持ち出していた事にも気付かなかったからですね


「助かりました勇者よ」

「いえ、これも女神セリア様の奇跡の御業があっての事です!」

「本当ですよ!魔王達を一瞬で私達のところまで転移させられる魔法なんて・・女神様にしか使えませんよ!」


魔王に役立たずと罵られていた私のテレポート魔法に目をキラキラさせる幼い魔法使い

この子は本当に可愛いわね・・娘にしたい・・


「め、女神セリアだと!?・・ふざけるな!そこの女は俺の妻だ!」


魔王の言葉に勇者から抑えきれない殺気が噴き出す


「魔王よ!貴様が女神セリア様を手に入れようとしていた事は聞いているぞ!」

「な、何を言っている・・!手に入れるも何も・・そいつは本当に俺の妻・・」

「そ、そうよ!その女は魔王様の妻のエルマよ!」

「うふふっ、なにを言っているのかしら?魔王の妻はあなたでしょう」

「はっ?」


微笑と共に発した私の言葉にリティアは呆気にとられた顔になる


「そのとおりだぜ!魔王と共にやってきたのが何よりの証拠だ!てめえが魔王の王妃エルマなのだろう!」

「見苦しく足掻くのはやめて、夫婦諸共処刑される事だ」

「う、うそでしょう!?」


武闘家マルサンと戦士ラリーの処刑発言にリティアの顔は真っ青になる


「な、なんで私が王妃にされるのよ・・!?」


リティア、あなたは魔王の妻になりたかったのでしょう?

あなたの希望を叶えてあげただけですよ


「ま、待ってよ!私は四天王の一人!『美魔のリティア』よ!勇者だって私の名は知っているでしょ!」

「『美魔のリティア』だって・・」


リティアの名乗りに勇者は眉をひそめる


「そんな見えついた嘘を言うな!」

「嘘ってどういう事よ!本当に私は四天王のリティアよ!」

「だからそれこそが嘘だと言っている!なぜなら・・」


勇者はリティアを見下し、言葉を続ける


「『美魔のリティア』はもう討伐しているのだからな!」

「「・・・・・・・・・・はっ?」」


リティアだけではなく、隣で聞いていた魔王様も呆気にとられたかのような返事をする


「と、討伐したって・・ど、どういう事よ・・!?」

「アクアドラゴンを討伐するために攻略した雲突の塔、そこを管理していた魔族こそが『美魔のリティア』だったのだろう!」

「はっ!?何言ってるのよ!雲突の塔ってなによそれ!」

「雲突の塔だと・・確かその塔はエルマの両親の遺産を保管していた塔ではなかったか・・?」


おや?魔王様はそんな事だけは覚えていたのですね


「そうです!あの塔に現れた女の魔族は自分は四天王の一人、『美魔のリティア』だってしっかり名乗っていたんですからね!」

「はあ!?」


幼い魔法使いの言葉にリティアはさらに混乱した顔になる


「なんでそんなわけのわからない塔の魔族が私の名を騙っているのよ!?」


それは私が叔母様に勇者が現れた時、四天王の名を騙れば恐ろしくなって逃げていくはずだと言ったからですね


「それに名乗ったからって、四天王を間違える!?」


確かに叔母様は美魔っていうにはふくよか過ぎる体型だった・・けど、名ばかり四天王のリティアは魔王城から出た事はなく、人族に情報がまったくなかったのだ

それゆえに女の魔族が四天王リティアだと名乗れば、それが本物のリティアと似ても似つかない者であってもリティアとなる


それになにより・・


「女神セリア様があの女魔族こそが『美魔のリティア』だと教えてくれているんだ!貴様がどれだけ嘘を並べて俺達を混乱させようとしても通用しないぞ!」


今の勇者達にとって私の言葉は絶対であり、私が叔母様を四天王のリティアだと言えば、リティアになるのだ


「すでに四天王はすべて討伐された!残るは貴様ら魔王夫妻だけだ!」

「ひいいいいいいいいっ!?」


勇者に剣を向けられるとリティアの真っ青だった顔色が血の気がすべて失ってしまったかのように白くなっていく


「ま、待ってよ!お願い待って!わ、私は魔王にこき使われていただけの魔族の娘なの!こんなバカ丸出しの男の妻なわけないでしょ!」

「んなっ!リティアこの俺がバカ丸出しだと!」

「そうでしょう!いつもいつもいばりくさって・・あんたみたいな男、魔王じゃなかったら相手にするわけないでしょ!」

「ふざけるな!俺が貴様の贅沢のためにどれだけ魔王軍の軍費を使ったと思っている」


いや、まじでなにやってるのよ

軍費を愛人に使っていたって・・もしかして私が何もしなくても魔王倒されていたかも・・


「夫婦醜い争いはそこまでだ!」

「観念しろ魔王!」

「女神セリア様の願ったこの世界の平和のためにその首!切り落とさせてもらうぞ!」

「ち、違う!俺の妻はリティアじゃない!そこの女神の名を騙っている嘘つき女だ!」

「そうよ!私はエルマなんかじゃない!魔王の妻じゃない!」


何度も訴える魔王

しかしここは魔族の国ではない

誰一人魔王の言葉を信じる者などいない


「や、やめろぉぉぉぉーーーーーーーっ!」

「いやああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!」


勇者の剣が振り下ろされる中、魔王様の金色の瞳と私の瞳が重なり合う


「た、助けて・・くれ・・っ!」


あら?魔王様、その命乞いは私に言っているのですか?


人族を滅ぼしたら冤罪で処刑しようとしていた私に?


魔王様を見つめる私の瞳がニッコリと笑みの形へと変わっていく


「!?」


その瞬間、明らかに安堵の表情を浮かべた魔王様


その魔王様にだけに分かるように・・


私はゆっくりと口元を動かしていく


「・・さようなら・・魔王様・・」

「なっ!?・・なぜっ・・・・・・・・・・!」


この日、勇者によって魔王サランドとその王妃であるエルマは討伐され、世界は平和の光に包まれたのだった




・・・・・・・・・・




「クソッ!これはなんだ!我は王だぞ!こんなマネして良いと思っておるのか!」

「そうじゃ!教皇であるワシにこんな扱い!天罰が下るぞ!」


処刑台の上で喚き散らしている中年2人に私は呆れ混じりの声で返答する


「あなた達が勇者様の暗殺を企んでいた事は分かっているんですよ」

「うぐっ!?な、なにを言っておられるのですか、女神セリア様・・!」

「そ、そうです!我らがなぜこの世界を救った勇者を殺さねばならないのですか・・!」


この状況になっても必死に言い訳を続ける二人の見苦しさに眉がハの字になっていく


「貴方たちの悪事の証拠は全て私が暴いているのですよ、言い訳は止めなさい」


私がテレポートで勇者暗殺計画の証拠を集めたからこそ、勇者パーティーが中心となった反乱が何事もなく成功したのだ


「世界を救った勇者様の名声、それは今やとても大きく・・このままでは王の地位まで奪われると危惧したのでしょう?」

「うぐっ!?」

「女神である私が勇者の元にいる事が気に入らず、勇者を殺してまで私を手に入れようと考えていたのでしょう?」

「あ・・!そ、そのよ、ような・・こ、ことは・・あ、あ、ありま・・っ」

「それにあなた達には勇者様暗殺計画以前に私利私欲のためにこの世界を混乱に陥れた罪もすべて白日のもとにさらされているのですよ」


この二人は勇者暗殺計画の他にも悪事を働いており、その量は魔王がいなくてもこの二人のせいで人族は滅びていたのではと心配してしまう量だった


「・・・・ふ、ふざけるな!女神セリアが信徒であるこの私を罰するなどありえん!貴様は女神セリアなどではない!」

「そ、そうだ!人を騙す魔族のモノに違いない!皆騙されるな!この女は女神セリアではない!」


ここにきて真実にたどり着いた二人

しかし、その言葉を信用する者達がいるわけがなく・・


「ふざけるな!この世界を平和にしてくれた女神セリア様になんて口を聞きやがる!」

「何が教皇だ!女神セリア様の信仰を悪用しやがって!死んで償え!」

「勇者様暗殺まで考えていたなんて恐ろしい・・お前達の方こそ悪しき魔族の仲間ではないのか!」


民達からの罵詈雑言、そして飛び交う石


「あぐっ!や、やめろ・・き、貴様ら・・いぎっ!」

「な、なぜ・・うぐっ・・なぜだ・・!」


多分、この状況でなかったら正体がバレて私は大ピンチになっていたのだろう


「女神セリア様まで愚弄した罪・・もはや許せるものではない・・今すぐに地獄に落ちてもらおう!」

「待て勇者!私が貴様のためにどれだけの支援をしたのか、忘れたのか!」

「恩知らずめ!この教皇がいなければ貴様のような化物が勇者などになれなかったのだぞ!」


魔王の首を切り落とした勇者の剣が自らの頭上に掲げられた瞬間、顔を真っ青にした2人


「俺が勇者として魔王を倒せたのは全て女神セリア様の導きのおかげだ!」

「や、やめろぉぉぉぉーーーーーっ!」


・・・・・・・・・・



「勇者よ、貴方がこの国の新たな王となり人々を導いて下さい」

「はい、女神セリア様」


王と教皇の処刑が終わった後、私は勇者を新たな王にする事を民達に宣言する


「おおーーーっ!勇者王ばんざーい!」

「女神セリア様に祝福されし新たな国の誕生だぁぁぁーーっ!」


民からの喝采の嵐の中、なぜか勇者が私の前に跪く


「どうかしたのですか勇者?」


流れではこのまま城に戻るはずでは・・?


「女神セリア様・・どうか・・僕と結婚してください!」

「えっ!?」


勇者の突然の告白に自分の顔が真っ赤になっていくのが分かる


「僕が今日まで勇者として生きてこられたのは女神セリア様のおかげです!これからは僕が女神セリア様を守っていきたい!」

「勇者・・」


勇者が自分に好意を抱いているのは分かっていた

けど、それは女神セリアへの信仰からだと思っていた


「・・・・・・」


私は目を閉じ、勇者からの告白を受け止めていく


(魔王との結婚生活は最悪なもので・・もう二度と結婚なんかしないと思っていた・・けど、目の前で私からの返事を待つ真剣な顔の勇者に対してその思いが揺らいていく)


「本当に私を守ってくれますか?」

「はい!僕の全身全霊をかけて絶対に女神セリア様を幸せにしてみせます!」


まっすぐ私の瞳を見つめる勇者の言葉に私は決心する


「分かりました・・あなたの告白を受け入れます」

「本当ですか!女神セリア様!」

「それをやめて下さい、これから夫婦になるのですからセリアと呼んでください」

「あ・・わ、わかりました・・セ、セリア・・」

「うふふっ、敬語もやめて下さいね」

「ど、努力します・・」


顔を真っ赤にする勇者の首にゆっくりと手を回していく


「勇者様・・」

「セリア」


そして私と勇者様の唇が重なっていく


「おおおおおーーーーっ!」

「勇者様!女神セリア様!お幸せにぃぃぃぃーーーっ!」

「うううっ・・失恋しちゃったよ・・勇者様・・やっぱり女神セリア様が好きだったんですね・・」

「おいサヤ、大丈夫か?」

「大丈夫だよ、マルサン・・私は勇者様と女神セリア様との結婚に大賛成だからね!」

「そうか!ならもっと祝福してやらないとな!」

「うん!」


勇者パーティーの仲間からも大きな歓声が上がり、大喝采の中、唇を離した私は勇者の胸に顔を埋めていく

「勇者、私を幸せにしてくださいね・・」

「はい、約束します」


勇者の言葉に私は笑みを浮かべる


「絶対に裏切ったりしないでね・・そうじゃないと・・」


(あなたも魔王と同じ運命になってしまいますよ・・うふふふっ)



これにて終わりになります。

いろいろ他にもエピソードを思いついたんですけど追加してしまうといつものようにプロット崩壊させて書けなくなりそうなので・・一応終わりになります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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