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4.女神セリアの導き

「四天王2人の討伐に成功した勇者殿の功績に教皇様も大変満足されていますぞ!」

「そうか」

「むっ」


賛辞の言葉を右から左に受け流すような勇者の態度に教会から派遣された司祭の眉がピクリと動く


「クロス様、あの方は教会の司祭殿なのだからもう少し礼儀正しく・・」

「・・礼儀正しくすれば、魔王を討伐出来るのか?」

「それは・・」


(それにあんな成金司祭と話などもしたくない)


金や銀で装着された祭服に包まれたその身体は贅沢な食事をしている事が分かるほど肥え太り、太い指には幾つもの高価な指輪が嵌められていた


(信徒達からのお布施で明らかな贅沢三昧をしている・・!)


その姿に勇者クロスは嫌悪感をあらわにしていた


(神を信仰する教会の金なら女神であるセリア様のもののはず・・それをコイツらは湯水の如く使って・・)


女神セリアの導きに何度も助けられてきた勇者にとって、女神セリアの存在は絶対的なものになっていた


「それに四天王を倒せた事はすべて女神セリア様の導きがあっての事、僕の功績などではない」

「女神セリア様・・ですか・・」


勇者が女神セリアの名を口にした瞬間、今度は司祭の眉がピクリと動く


「しかし、女神セリア様はなぜ我々教会にお告げをするのではなく、直接勇者殿の元に来られたのか・・それはおかしいのではありませんか?」

「なんだと?」

「まずは教会の代表である教皇様にお告げをするのが筋というものなのではないのですかな?・・もしやその女神セリア様は偽物なのでは・・」

「・・・・!」

「それは違いますよ」


司祭の言葉に勇者パーティーの仲間から殺気が噴き出た瞬間、凛とした声が響く


「女神セリア様!」

「なっ!あ、あなたが女神セリア・・様なのですか?」

「はい、そうです」


(あ、危なかった・・!)


この時、女神セリアの頬には少し汗が流れ落ちていた

それは自分が偽物だと気づかれたからではない

司祭が偽物発言をした瞬間、勇者クロスが何の迷いもなく剣を引き抜こうとしていたからであった


(さすがに勇者が司祭を殺したらまずいでしょ!

せっかく魔王様を殺させるために色々やってきたのに同じ人族に処刑なんかされたら目も当てられない!)


今の自分が司祭の目の前に現れたら、面倒なことになると分かりきっていたので、司祭がいなくなるのを待っていたエルマだったのだが、さすがに魔王を殺すために導いてきた勇者クロスが反逆者扱いになるのは困ると慌てて現れたのだ


「おおおっ!女神セリア様!まさかその御身を我が目に出来る日が来ようとは信徒としてこれほど喜ばしい事はございませんぞ!」


さっきまで偽物だと疑っていたはずの司祭の態度が180度変わる


「女神セリア様、どうか忠実なる信徒である教皇様にもそのお姿をお見せ下さい、道筋はご安心ください!この私が責任を持って女神セリア様を教皇様の元までお送り致しますぞ!」


女神セリアを教皇の元まで連れて行ったとなれば、その功績は明らかであり、次期教皇も夢ではないと鼻息荒くして女神セリアに迫る司祭


「・・・・」


その様子に勇者は静かに鞘から剣を引き抜いていく


「い、いえいえ!せっかくのお誘い嬉しく思いますが!今は一刻も早く魔王を倒すのが先決です!」


勇者が剣を振り下ろす前に鼻息を荒くさせている司祭を遠ざける


「そんな事を言わずに幸い今は勇者殿の活躍もあり、魔王軍の動きも遅いですから、教皇様にお会いになる時間くらいは大丈夫ですよ」


それは私が魔王様を誘導しているからよ!

思わずそう叫びそうになるのだが、必死に堪える・・

もう勇者を止めるのやめようかという誘惑に抗い、引きずる笑顔でなんとか対応を続ける


「それは間違いです、魔王軍は勇者様を討伐せんと動き続けています

それを証明するようにアクアドラゴンがこちらに向かって来ているのを感じます」

「なっ!?なんですと・・!」

「アクアドラゴンは四天王に匹敵する強さを持っています」

「し、四天王に匹敵・・!た、確かに今は魔王討伐が先決ですな!私は教皇様に勇者殿と女神セリア様のご様子をお伝えしなければいけませんので、これにて失礼させていただきますぞ!」


まさに脱兎のごとく逃げ出していく司祭


「ふ~っ、これで邪魔者はいなくなりましたね」

「女神セリア様、良かったのですか?あんな無礼者は斬るべきだったのでは?」

「勇者よ、貴方には魔王を倒すという大切な使命があるのですよ短慮を起こしてはいけません」

「うっ、ごめんなさい・・」


しょぼんとうなだれる勇者の姿は叱られた犬のようでちょっと可愛い


「いやいや!今はそんな話をしている時ではないでしょう!アクアドラゴンがこっちに向かって来てるってどうすればいいんですか!」


私と勇者のやり取りに抗議するように魔法使いサヤが両手をバタバタとさせる

その姿も可愛いわね


「安心してください、こちらに向かって来ているアクアドラゴンですか、その気配は黒の湖で留まっています

きっとアクアドラゴンが得意とする水辺で勇者を待ち受けているのでしょう」

「待ち伏せだと!なんて卑劣な手を思いつく野郎だ!」


武道家さん、その卑怯な手を思いついた野郎はあなたの目の前にいますよ


「ですが、これはチャンスでもあります

アクアドラゴンがこちらに向かって来ないのならば、その間にアクアドラゴン対策の準備が進められますからね」

「おおっ!それは確かに!」

「それで女神セリア様、我々はどのような準備をすれば良いのですか?」


戦士ラリーの問いかけに私は頷き、言葉を続けていく


「アクアドラゴンの最大の弱点は雷です」

「雷が弱点・・魔法使い、雷魔法は覚えているよな」

「確かに雷魔法も覚えてますけど・・ごめんなさい、私の雷魔法はそんな強力ではないんです」


自分の不甲斐なさに涙目になっている幼い魔法使いの目元を優しく拭う


「安心してください、ここから近くにある雲突の塔には『雷の杖』と呼ばれるマジックアイテムが保管されています

その杖をもちいれば雷魔法の威力が数倍に跳ね上がります」

「その杖を使えば、私の雷魔法でも十分な威力になるんですね」

「そうです、雷の杖さえ手に入れば、たとえアクアドラゴンが得意とする水辺でも楽に倒せるはずです」


「ありがとうございます女神セリア様!私、雷の杖できっとアクアドラゴンを倒してみせます!」


涙目だった魔法使いの顔が花開いたような笑みへと変わる


「ええ、期待してますよ・・それと雲突の塔を管理している魔族が襲ってくる可能性があります」

「管理している魔族ですか?」

「はい、金に卑しい悪しき魔族です

人族のためにも確実に滅ぼさねばならない魔族ですね」

「それほど卑しい魔族が・・分かりました!絶対にその魔族もこの勇者クロスが滅ぼしてみせます!」


タイミングを見計らって叔母様に両親の遺産を渡すと言えば、きっと金に卑しい叔母様はすぐさま両親の遺残が残されている雲突の塔へと赴くはず・・


「勇者、絶対にあの卑しい魔族を殺して下さいね」

「はい!それで女神様、その魔族はなんという魔族なのですか?」

「その魔族の名は・・・・」


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