表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

1.魔王の浮気

久しぶりに小説を書いたので、投稿しました

「あぁ・・んっ♡・・っ・・魔王様、激しいっ♡」


私は今・・何を見せられているの・・?


「くくくっ!リティア、お前は本当にイイ女だな

エルマとは大違いだ」


扉の隙間から見える薄暗い部屋の中で聞こえる情事の声

それは間違いなく、魔族を支配する魔王サランドの声であり・・


私の夫の声であった


「あぁん♡嬉しいわ魔王様♡けど、エルマ様の事は本当にほっといて良かったのかしら?」


この甘ったるい声にも聞き覚えがあった

毎日のように私に魔王様との関係を聞いてきていた

四天王の紅一点である『美魔のリティア』の声であった


「ふん!あんなつまらん女の事などどうでもいい!」


つまらない女・・

そう、魔王様は結婚当初からいつも私をそう言って罵ってきた

それでも魔族の未来のためと我慢して結婚生活を続けてきたのに・・


「俺はあの女の気味の悪い黒髪と黒い瞳が大嫌いだったんだ!」


ヒドイ・・この髪と瞳は母様から受け継いたものであり、私が大切にしている事を魔王様は知っているはずなのに・・


「本当ですわ、魔王様の高貴さを醸し出す金色の髪と瞳の隣にあの気味の悪い黒髪と黒目が目に映る度にとても気分が悪かったですわ」


そう言いながらリティアは魔王様の長い長髪の金髪を愛おしそうに撫であげていく


「けど、王妃様には特別な魔法が使えるからって、今は亡き先代の魔王様が婚約をお決めになさったのですよね?」


そう、私達の一族にしか使えない魔法を重要視した先代の魔王様によって、私が幼い時から魔王様の妻になる事が決まっていたのだ


「なにが特別な魔法だ!テレポートなど逃げるための魔法など魔王である私には必要ない!」

「なっ・・!」


私の存在価値すらも否定した魔王様のその言葉に私の胸は、ぽっかりと穴が空いたようになり、うまく呼吸ができなくなる


「テレポートなど飛行魔法と変わらんものを先代魔王は過大評価をして、あんな女を私の婚約者にしおったのだ!」


「飛行魔法と変わらない・・そんなわけがないでしょ・・」


テレポートは空間の歪みを作り、そこから目的の場所へと移動するものである

そのためテレポートの魔法は失敗すれば、土の中や遥か上空に移動してしまう、そうならないために私は幼い頃から厳しい修練を重ね、テレポート魔法を完全に操れるようになったというのに・・


それなのに夫である魔王様は何一つ理解していなかった


「無能な先代魔王のせいであんな気味の悪い女と結婚しなければいけなかったなんて・・ああっ、可哀想な魔王様・・!」

「リティアよ、お前だけだ!私を理解してくれるのは!」

「もちろんですわ魔王様、私は魔王様の1番の理解者ですわ」

「おおっ!愛しているぞ!リティア!」

「私も愛しておりますわ魔王様」


互いの愛を確かめるように熱い口づけを交わしている2人

それを私はどこか他人事のような気持ちで扉の隙間から冷めた瞳で眺めていた


しかし、他人事のように思えていたのも魔王様の次の言葉が飛び出すまでの僅かな間だけだった


「今しばらく待て、人族を滅ぼした時に正式にお前を妻にしようではないか」

「まあ!本当ですか!魔王様」


妻・・それは私と別れるという事・・

それならばもうそれで良いとこの時の私は思っていた


「ですが、王妃様はどうするのですか?追放にでもするのですか?」


追放・・それもいいかもしれない

どこか誰もいない土地で余生を過ごすのも悪くない

私は半端諦めにも近い気持ちになっていた


「いや、あの女は魔王軍の内部に詳し過ぎるからな」


そこで魔王様は言葉を切り、ニヤリと口元を歪めていく


「危険な目は潰しておかねばならんからな、あの女は処刑する」


なっ・・!処刑ですって・・!


「処刑ですか?」

「あいつの両親は病で死んでいるからな、唯一の親族である叔母もあいつを疎ましく思っているからな

処刑の話をすれば喜んで協力するだろうさ」


金に卑しく、私の両親が亡くなった時も遺産を自分に寄越せと喚き散らしていた叔母様が喜んで魔王に協力している姿が容易に想像出来た


「そうだな・・エルマには私に不貞を働いた罪で処刑にでもするとしよう」

「うふふっ、ならエルマ様は淫売として処刑されるのですね・・いい気味ですわ」


私を冤罪で処刑しようとしている二人

あまりに信じられない会話内容であった


(こんなものをこれ以上聞いていたら頭がおかしくなってしまう・・!)


私はおぼつかない足取りで魔王様の寝室をあとにし、

フラフラと自分の部屋へと戻っていく


「どうすれば・・訴えるにしても魔王様に逆らえる者など魔王城にいるわけがない」


魔族を支配する魔王に逆らえるのは他種族の者だけである

しかし、今や魔王はこの世界を支配する一歩手前の状況であり、他種族の多くは魔王様の門下に下っている


「私は・・このまま黙って処刑されるしかないの・・!」


その絶望感に私の体から力が抜け落ちていく


バサバサバサ


「あっ!」


力の抜けた私の手から書類が落ち、床で音を立てる


「そうだ・・私、この書類を魔王様に届けようと・・」


魔王様へ渡そうと持っていた資料に私は朧げに目を落としていく

そこに書かれていたのは・・


『勇者に関して』


勇者、それは魔王様に抵抗している他種族の一つ、人族の中に産まれた特異的な存在である

人族でありながら魔族を凌駕する魔力を有し、身体能力も高い

そのため勇者と呼ばれ、我ら魔族への反抗を繰り返していた


「この間も人族の国を攻め込む要であったトレントの森を管理していたブォガルが勇者に討伐された」


けど、魔王様や四天王などは人族である勇者を恐れる必要はないと軽視し続けていた

しかし、このまま手をこまねいていては勇者は魔王様への脅威に変わる


「その事を伝えようとしたら・・浮気現場を目撃した上に私を処刑するなんて話を聞く事になるなんてね・・」


私はなんの心配をしていたのだろう

笑って私の処刑の話をしている魔王様の顔を思い出した瞬間、私の中で抑えていたモノがプッツリと切れた音がする


「・・ううっ・・ううううっ・・ふざけないで、よ・・っ!」


ビリビリビリッ!


「なんで!なんで私が処刑されないといけないのよ!魔王様と魔族のために必死に頑張ってきたのよ!」


私は今まで溜まり溜まっていた鬱憤を晴らすかのように集めた勇者に関する資料を何度も破り捨てていく


「もう勇者なんて関係ない!私を裏切った魔王なんて殺されてしまえば良い!」


そう口に出した瞬間、熱く煮えたぎっていた私の頭の中に一つの考えが浮かぶ


「そうよ・・そう・・そうだわ!」


・・処刑から逃れる唯一の方法・・


「うふっ・・うふふふっ・・!」


その事を思い付いた私は心の底からの笑みを零していた



いつも脇道を考えてしまいプロット通りに話を完結させる事が出来てなかったので、今回は全6話で完成した話をそのまま投稿させていただきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ