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社会問題エッセイ

「10万円のうまい棒」から「価値」とは何か? を考える

作者: 中将

◇「名前だけ」で10万円



筆者:

 本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。


 今回は即完売(それどころか抽選になった)と言われている「10万円のうまい棒」から「モノの価値」について個人的な意見を述べてこうと思います。



質問者:

 まずその「10万円のうまい棒」と言うのはどれだけ特別な味なんですか? 「げんだいびじゅつ味」だそうですけど……。



筆者:

 「うまい棒」を製造している「やおきん」社が普通に売っているスタンダードな「うまい棒」だそうです。



質問者:

 え……つまり「名前だけ」と言う事なんですか? 一体何でそんなに価値があるのでしょうか? パッケージのデザインが特別とかなんですか?



筆者:

 確かに普通のパッケージでは無いですが、線画を書いたものだけで書こうと思えばだれでも書けそうな感じでもあります。


 このうまい棒を作った松山氏は読売新聞の3月の記事では、

「好きな味に自分の個性を重ねるなど誰もが知る共通言語となったうまい棒の物語を、化石のように閉じ込めたい」


 とこの作品の狙いを語っています(つまり事実上食べることも出来ない)。


 ヤフートップにも乗った集英社オンラインの3月30日の記事では


『現在の対価を説明するなら「パッケージが凄いのか」というと、僕はサインも書いていないし、印刷も銀色にすれば発売当初の10円以下の価値になる(現在は1本15円)。とにかく「10円以下に見せること」がテーマでした。』


 とまで語っています。



◇「ストーリー性」に価値を感じる人がいる



質問者:

 むしろ価値を極限まで下げてまで何をしたいのでしょうか……。



筆者:

 先ほどの記事からまた引用しますと、


『要は僕が作品を介して伝えたいメッセージというのは、美術の価値は物自体にあるのではなくて、1歩ずつ歩んでいくストーリーにあるということなんです。

人々が紡ぎ出すストーリーに価値があるんですね。つまり周りが作るものなんです。』


『ある番組で「10万円のうまい棒」がテーブルに置かれていたんですが、出演者の皆さんが誰1人触らなかったんですよ。ただの1本のうまい棒でも「欲しい人がたくさんいる10万円のうまい棒」となると、とたんに美術作品に見えるものなんですね。


 情報の刷り込みによって価値が生まれてくるんです。


 本当に物自体には価値がないんですよ、ストーリーに価値があるわけで。みんなが知っているものに全く違う見方を提案するのが作品のおもしろいところです。』


 と話されています。


 つまり「ストーリー性」が「10円の価値」を「10万円」に飛躍させているわけです。



質問者:

 えぇ……でもやっぱりちょっと信じられません。



筆者:

 でも皆さん10円が10万円ほどの差はありませんけど実を言いますと「毎年その情報を見聞きしている」と思うんです。


 毎年年始にあるじゃないですか「マグロ初競りがあり○○万円で落札」とね。

 2025年は276キロを2億700万円(史上2番目の高値、過去最高は2019年 3億3360万円)で落札した方がいるそうですが、その方も「初めて釣ったマグロだから」それだけの金額を払っているわけです。

 


※ちなみにマグロは1キロ1万円ほどが大体の相場だそうなので、単に寿司業者などに卸すだけならば276万円ほどの価値しか本来はありません。



質問者:

 確かにあれほどの金額の価値は無いだろうなって毎年思えるような価格で競り落とされていますよね……。



筆者:

 ただそれも「酔狂な人がいるな」ぐらいな感じだと思うので、

 もうちょっと分かりやすいと思える例を出そうと思います。


 皆さんは「エラーコイン」と言うのを聞いたことは無いですか?


 50円玉で穴の開いていないコインだったり穴がズレてしまったコインのことを指します。

 日本の貨幣製造技術、検査技術はトップレベルであることからかなり稀な存在としてあるのです。


 そう言ったことからコレクターからは穴のズレた5円玉は5万円、穴無し50円玉は20万円などで取引されたりしています(保管状況や年代にもよるようですが)。



質問者:

 確かに、普通に使ってしまえば5円や50円のモノが「価値を感じるコレクター」であれば5万や50万に感じるというのは何となく分かる気がします……。



筆者:

 一般的には穴無し50円より50万円の方が欲しいと思うのですが、

 中には変わった価値観の方がいらっしゃるという事です。


 もっと言うのであれば「文化財」となっているものも現在は全く使えないものですが、「歴史的価値」という「ストーリー」があるからこそ博物館に展示されているわけです。


 社会科見学や修学旅行などで博物館が「ダルい」と思われたのだとしたらそれは非常に現代的で合理的な考え方をされているのだと思いますね。ある種誇っていいでしょう。


 僕はちなみに歴史的価値を感じつつも「今じゃほとんど何の役にも立たないな」と2面的に見てましたけど(笑)。


 先ほどの集英社オンラインの記事で松山氏は、


『何がいいとか何が崇高だとかっていうのは、みんなが作った物語を信じるか信じないかだけの話なので「むしろ一緒に物語を作りませんか?」と思っています。その方がおもしろいじゃないですか。


 実は皆さんも文化に乗っている、つまり文化創造の当事者になっているということ。その気づきを得てもらえたら嬉しいですね。』


 と語られています。



◇「他人には大したことが無くても自分にとって良い」と言う状態が望ましい



質問者:

 「10万円のうまい棒」と「ストーリーに価値を感じる」と言う事については何となく分かったのですが、筆者さんはこれについて何が言いたいんですか?



筆者:

 まず一つ申し上げたいのは先ほどは「大したことないモノに対して他人が与えた価値」を「それに同意して高い価値を支払った」というまさしく「市場の原理」を上手く活用したビジネスだと思うんです。


 松山氏や「やおきん」に不祥事やスキャンダルが無い限りこの「10万円のうまい棒」の価値は下がらないのではないかと思います。

 むしろヤフートップにまで上がったことから「価値」を感じる方が増えていって値段が10万円よりも上がることすらあり得ます。


 ただ、一般的には超有名インフルエンサーや既存大型ブランドでも無ければ「大したことが無いモノ」に「大きな価値」を吹き込むことは難しいと思います。



質問者:

 ですよね~。



筆者:

 松山氏のやっていることは既存のブランド産業やかなり悪い方向に行けば詐欺などを「極端で分かりやすく可視化してくれた」状況だと思います。


 それを乗り越えるためには、「他人が低価値と思って(若しくは無料状態)いながら自分が価値を感じるモノ」を集めることだと思います。


 例えば思い出の品とか安いけど使いやすい文房具やパソコン周辺機器ですとか、

 そう言った実用的で価値があるモノに囲まれることです。


 今や政治の失敗が続きお金を稼ぐ(手元に残す)ことは日本で困難になりつつありますからね。



質問者:

 なるほど……。増税は無くても電気代が上がったり物価が上がったりと実際に自由に使えるお金は限られていますから色々な「思考的な工夫」が大事と言う事ですか……。



筆者:

 ちなみに僕は最近は断捨離をしているので思い出の品もスキャンしてデジタル保存をして、現物を捨てる活動をしています。


 ですので、最近大切にしていることは「健康」であったり「情報を精査する能力」などの無形のモノに価値を感じています。


 どちらも「これでいいのか?」と日々試行錯誤している状況ではあるんですけどね……。



◇「価値の創造者」になれるのは「なろう」の魅力



質問者:

 確かにどちらもあっているのか間違っているのか検討するのが難しそうではありますね……。


 松山さんの言葉で気になったこととして最後にある「文化の創造の当事者になる」と言うところだったんですけど、それについてはどうなんですか?



筆者:

 そうですね。僕もそこが気になりました。


 考えてみたらまさしくこの「なろう」などの小説投稿プラットフォームはその最たるものだと思いますよ。


 無名の個人のアイディアが作品として数多く羅列され、読まれている方の評価の累積によって価値が創造されて、アニメ化までされている作品があるわけです。



質問者:

 確かにそれは凄いことですよね。

ただ、なんだか似たような作品がアニメ化されて「なろう系作品」と呼ばれていることは残念な気がしますけど……。



筆者:

 それもそう言ったことに「価値を感じる」読者層が一定のパイを占め続けているというある種の社会的現象の一つですからね。


 自分の感覚として作品に賛同できるか、好みであるかは別として、一定の理解をしなければ時代に取り残されるのか評価されずに終わるだけなのかなと思いますね。


 ただ、多くの人に価値を感じることが必ずしも「良い作品」であったり「人生を変える作品」であったりするとは限らないです。


 僕が果たして「良い作品」や「人生を変える作品」を創造できるのかかなり怪しいとは思うのですが、

 このような社会的な分析や政治経済について書いていこうと思いますのでどうぞご覧ください。

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