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福は内っつったら鬼が来た

作者: 亡目霊

節分ということで。(昨日だよ)

 日本という国には、2月初旬に豆を撒くというイベントがある。豆を撒く時は「鬼は外、福は内」という掛け声をあげる。これの意味は、福を自分の家にいれ、鬼のような悪いものを外に出す的な意味である。私は1人でも複数人でも必ずやることにしている。理由は、特にない。強いて言うならばこういうイベント事が楽しいからである。と言うわけで今年も節分がやってきた。去年は家族とやったのだが、今年はみんな忙しいから1人でやることにした。時刻は朝の7時。豆まきは朝にやるに限る。本当は夜にやるものなのだが、逆張りっちゅうもんだ。

「鬼はー外ー。福はー内ー。」

そう言いながら自分の家に豆を撒き、ベランダにも豆を撒く。この豆を回収するのがこれまた面倒なのだ。

「そんなこと言わないでさぁ。僕も入れてよぉ」

後ろからいきなり声をかけられ、ビックリする。私はこう言うのに弱いのに。というかどっから入ってきたんだ?

「だ、誰!?」

「誰って、見てわかんない?鬼だよ鬼。角生えてんじゃん。」

確かに言われてみれば、鬼と名乗った男の額には一本の角が生えている。服は虎柄のパンツ一丁、というわけではなく、よくアニメとか漫画で見るような和服を着ている。目は猫のような目で、綺麗な赤色をしている。髪はツンツンに立っていて、これもまた綺麗な赤色をしている。いかにも赤鬼って感じだ。

「信じたくないんだけど。これドッキリ?普通に不法侵入で逮捕だけど。」

「ドッキリじゃないよ。」

唯一の現実逃避がバッサリ切られた。じゃあほんとに鬼ってこと?今年は厄年になりそうだ。なんてったってうちに鬼呼んじゃったんだもん。

「本当に鬼なら出てってくんない?鬼がいると色々と困るんだけど。鬼じゃなくても大分困るけど。」

そう言うと鬼はちょっと不貞腐れた顔で、

「冷たいなぁ。人間は。でも君は怖がらないんだね。」

と言った。こいつの目は節穴だ。

「はぁ?怖いよ。だって存在しか知らない得体の知れないモノが自分の家に居るんだよ?普通に恐怖だよ。」

それを聞くと鬼はそう言うことじゃないと言いたげに首を振った。

「違う違う。そういう恐怖じゃなくて、その、なんだ?『恐れ』じゃなくて『怖しい』の方の怖いだよ。君が僕に殺されそうで怖いとかそういうの。」

なるほど。確かに、一切ないというわけでは無かったが、ほとんどそういうのを感じていなかった。そういう恐怖よりも驚きの方が勝ったからかも知れない。

「そう。で?あなたはなんのためにここにきたの?」

そう聞くと鬼は嬉しそうに目を輝かせながらこう答えた。

「うん!それはもちろん人間と触れ合うためさ!だからさ、人間。僕とデートしない?」

「は?」

こいつは何を言ってるのだろう?いきなり人の家に来てデートをしようだって?なんだそのストーカーとナンパを足して割らずにそのままぶち撒けたような物言いは?

「ちょっと何言ってるかわかんないな。」

「分かれよ。」

サンドウィッチマンのノリは今はいいんだよ!と叫びたい気分だったがそれよりもやるべきことがあるからやめた。

「デートって言っても何するわけ?そもそもあなたは私の名前すら知らないでしょ?それに私もあなたの名前を知らない。」

「僕の名前は鬼影赤弥おにかげせきや。悪い鬼じゃないよっ!で、君の名は?」

私がキョトンとしてると、赤弥は呆れたように言った。

「ねぇ?僕名乗ったよ?次はそっちの番じゃないかな?」

これは驚いた。こいつ、本気で私とデートする気だ。冗談じゃない。初デートが鬼となんて、この世に1人もいないだろ。だが、そう言われたらしょうがない。私も名乗らないと失礼というものだ。

「わ、私は福田恋ふくたれんっていうわ。えーと、よろしく?」

「よろしく!」

そういうと赤弥は差し出してもない私の手をギュッと握り、上下に振った。

「じゃあ、デートしてくれる?」

何故そうなる。こいつは話しかけられただけで、話しかけてきた子が自分のことを好きだと勘違いする男子なのか?いや、絶対そうだ。じゃなきゃこんな思考にならん。

「しない。」

「なんで!?」

「当たり前でしょ。私たちは今出会ったばかりで名前しか知らない。そんな人と、鬼か。鬼とデートなんてすると思う?」

それを聞いた鬼はシュンとしてしまった。少し目が潤んでいる。あとついでに上目遣いだ。こいつ、美形なせいで可愛く見えちゃうじゃん。私より身長20cmぐらい高いくせに。

「…わかったよ。わかったからそんな顔で私を見ないで。あと泣くな。おい泣くなって。」

「これは嬉し涙だよ。」

そういうと着物の裾で涙を拭い、目を輝かせながら言った。

「じゃあ行こう!」

「ちょちょちょ待て待て。」

「何?」

キョトンとした顔でこちらを見つめる。自分、人間ですけど?みたいな顔だ。ちょっと腹立つ。

「アンタ鬼でしょ。角とか、着物とか。どうにかなさい。」

「あ、そっか!ごめんごめん。ちょっち待ってね」

赤弥はスッと目を閉じ、スーッと息を吸い、ハァーと息を吐く。そしたら、なんかいつの間にか角が消え、着物だった服がセンスのいい服に様変わりしていた。それを見て呆気に取られている私を他所に、赤弥は私を急かす。

「早く!行こう!」

「ちょ、待って!私も着替えるから!……覗かないでよ?」

「覗かないよ。」

男(鬼)と出歩くなんて何年ぶりだろう?そもそも男と2人きりで出歩いたことすらないんだが。一応私のできる限りのオシャレして行ったるか。

「…どう?」

「うん!かわいい!僕の住んでるところだったらモテモテだね。」

鬼にモテてもしょうがないと思いつつ、玄関に行き、靴を履く。スニーカーに合うコーデにして良かったと心の底から思う。だってヒール入んなかったんだもん。そうして家を出た私達はまずは大きな駅に行くことにした。鬼は駅に行ったことがないらしいからね。存在だけは知ってたらしいが、自分の目で見れて幸せそうだった。

「次は何する?」

ワクワクさせながら赤弥は言うが、実際のところそんなん決まってる訳がなかろうて。確か人間のことが知りたいんだっけ?じゃあ人間の食う飯を食わせてやろう!

そこで私達が行ったのは駅からちょっと歩いた先にある喫茶店である。時刻はまだ8時半であり、客の数も少ないが、朝食にはピッタリだ。

「あなたが食べる物、私が選ぶけど、いい?」

「うん!何書いてあるかわかんない!」

だろうな。呼び鈴のボタンを押し、店員を呼ぶ。

「ご注文は?」

「えーと、この朝食Aセット二つと、ココア1つと、カフェラテ1つお願いします。」

「かしこまりました。ごゆっくり。」

そういうと店員は去って行った。いつもなら私はこう言う時即座にスマホを開き、映画を見始めるのだが、残念ながら今日は人がいる。何か会話をしたい。

「で、あなたは結局何者なの?」

「鬼だけど。」

「そう言うことじゃなくて」

赤弥はキョトンとしている。質問の意図がわかってないようだ。

「あなたがどういう理由でここにきたのか詳しく知りたいってこと。」

「そう言うことか。でも詳しく言うまでもないよ。憧れてたんだ。こういうの。君たちは鬼のことを地獄で罪人に罰を執行するヤツだと思ってるかもだけど、実は違くてさ。そういうのは全部閻魔様がやってくれるからね。で、僕らは何をやってるのかというと、君たち人間の未来と過去を見て、その時その時で、ピンチやらチャンスやらをあげていくことをやってるんだ。それをやっていくうちに、君たち人間の人生の中で、デートっていうのが出てきてやりたくなっちゃった。」

「ふ〜ん」

「興味ないでしょ?」

笑いながら赤弥言う。

「そんなことないけど。だって鬼がそんなことしてたなんて知らなかったもん。」

そう言うと赤弥はまたもや笑い、こちらをまっすぐ見ながら言った。

「そりゃね。そもそも鬼がいるなんて本当に思ってる人なんていないでしょ?」

「確かに。」

そういうと2人して笑った。すると会話の区切りがついたところで頼んでいたものが来た。グッドたいみんぐにも程がある。ナイスだ店員さん!

「これどう食べるの?」

「そのままかぶりつくんだ。喉詰まらせるなよ?」

赤弥はそう聞くと口を大きく開けて朝食のパンにかぶりついた。美味しかったのかそのままガツガツと食べていき、その姿が可愛くて私はつい笑ってしまった。

「そんなに美味しかったか。よかった。」

「これすっごい美味しい!」

そして赤弥が食べるのを見ながら私も食べ進めていき、3分も経つ頃には2人とも食べきっていた。そのあと赤弥がココアを飲んだ時も幸せそうな顔で飲み干していた。すると私の飲んでいたものが気になったのだろう。少し分けて欲しいと言うから、苦いぞとは言ったが、いいと言い、ちょっとだけ飲んだ。すると予想通り赤弥は「苦っ!」と言い、すぐさま水を飲んでしまった。

「だから言ったじゃないの。苦いよって」

「だって君が平気そうに飲んでるんだもん。美味しいと思うじゃん」

涙目になりながら言う。まぁ初めてはこんなもんだろう。私も初めては苦くて友達に飲んでもらったからな。今となっては美味しいと感じられるようになったけど。

「で、次はどこいく?」

さてどこ行こう。昼までは時間がある。ならば、

「映画館行こうか。」

「えいがかん?あー、あのでっかいやつか!」

「そうそう。なんか見にいくか!」

「見にいこー!」

本当に元気なやつだ。映画館はさほど遠くない。歩いて7分くらいだ。その間に色々と聞かれたから答えていたが、本当に他愛もない会話だった。何をしているのだとか、好きなものはなんだとか、今までやってきたことだとかだ。赤弥は非常に聞き上手な性格だった。話していてあれほど楽しかったのは数ヶ月ぶりだ。

そうこうしているうちに映画館に着いた。見たい映画はお互いに無かったが、赤弥が気になると言ったものを見ることにした。それは恋愛映画だった。私はあまり興味が無かったが赤弥のためだ。一緒にみよう。

〜2時間とかそこら辺後〜

「思ったよりもいい映画だったな。」

「ね!途中難しくて言ってることわかんなかったけど。」

まぁそりゃそうだ。まだ赤弥はここに来て数時間しか経ってない。いくら人の人生を見ていても、話していることについての深い意味なんて知るまい。

映画館を出ると、案外いい時間だった。もう昼だ。何か食べよう。

「マック寄るか。」

「マック!憧れてたんだよなぁ!」

流石大きな駅。マックがものすごい近くにある。と言うか目の前にある。昼時だから混んではいたが席が空いてて良かった。ここでの赤弥の反応は朝食の時とほぼ変わらなかったが、炭酸に驚いていたのは可愛かった。

昼食を食べ終わり、食休みをしていた時、赤弥はふとこんなことを聞いてきた。

「そういえばさ。なんで君は僕を怖がらなかったの?」

「怖さよりも驚きが勝ったからかな。あとは人肌が恋しくて誰でもいいからいるのが嬉しかったからかな。最近人と関わるのが上手くいってなくてさ。そんな時に君がきてくれて、なんか助かったよ。ありがと。」

そう聞くと赤弥は照れくさそうに頭を掻いて言った。

「へへへ。なんか照れくさいなぁ。どういたしまして。それに、デート良いよって言ってくれてありがとう。」

そう言われてこっちまで照れ臭くなってしまい、2人してニヤけてた。そんなこんなで映画の感想とかを話しているうちに時刻は2時になっていた。さて、次はどこ行こうか。

「リクエストいい?」

「良いけど。どこ行きたいの?」

「海!」

おっと予想外。海はここからアホほど遠い。なんと電車で2時間だ。まぁ聞いてやらんでもない。

「オッケー。ちょっと遠いけど我慢しろよ?あ、良いこと思いついた。電車乗ってる間、私の好きなアニメ見る?」

「見たい!」

「オッケー。」

そこから2時間電車に乗り、海へ行った。赤弥はアニメを見るのが初めてだったが、アニメの素晴らしさに感動していた。

やっと海へ着いた。もう4時半だ。この季節のこの時間となればもう日が暮れ始めて、海に夕暮れが反射し、オレンジ色になる頃だ。ここもそうなっていた。

「めっちゃ綺麗だ!」

目を輝かせはしゃいでいる赤弥にケガをしないように呼びかける。

「おーい。怪我すんなよー!」

「はーい!ていうか君もこっちきなよ!ほら早く!」

赤弥が片方の手でこちらを仰ぎながら、もう片方の腕を振りながら言う。情報量が多いやつだ。

「わかったよ。」

私自身も海に来たのは数年ぶりだったためかなんと1時間半も遊んでしまった。もうとっくに日も暮れていたが、街灯が明るかったため難なく遊べてしまった。

「帰るか。疲れたでしょ。」

「うん。ありがとう。もう一個だけリクエスト言って良い?」

「うん。」

「ありがとう。じゃあ、君の家のベランダでちょっとお話ししよ。」

不思議なリクエストだったが、了承した。そして私たちが家に帰る頃には8時半になっていた。

「ベランダ行こうか。」

「うん。」

「で、お話って?」

「実はさ、僕、節分の日終わると君とバイバイなんだ。」

そう赤弥は悲しそうに言う。俯いている顔からは涙は出てはいないが、あからさまに落ち込んでいる。

「そう…なのか。いい…友達に…あれ?」

私の頬から一筋の涙がこぼれ落ちる。それを見ていた赤弥は落ち着いた顔で言った。

「そんなに泣かないでよ。悲しくなっちゃうじゃん。でも楽しかったよ!本当に。」

赤弥は泣いてはいない。笑っている。さっきまであんなに落ち込んでいたのに、私を慰めるために泣かないようにしてくれている。

「うっ…ひぐっ…もう…あんたがあんなに楽しそうに…してくれるから…」

「うん。」

「私…あなたのこと好きになっちゃったじゃない…」

それを聞いた赤弥は少し驚いたがすぐに笑い、

「ありがとう。僕も好きだよ。もちろん、君と同じように。でもね、お別れは笑ってしたいな。だから、他愛もない会話でバイバイしよ?ね?」

「…うん…」

そう言われてもまだ私の涙は止まらない。次々と私の目から涙がこぼれ落ちる。ずっと一緒にいたい。離れたくない。そう思ってしまう。

赤弥は私といて楽しかったと言ってくれた。でももう会えないかもとも言った。だけど絶対に忘れないと言ってくれた。

そして時刻は11時58分。お別れの時間だ。この時にはもう涙は出ていなかった。笑ってさよならをすると決めたから。

「じゃあね。会えて本当に嬉しかった!大好き!」

「うん!じゃあ、最後に私からリクエスト。」

「え?うん。」

「絶対に来年もやるから!そん時は絶対に会いに来て!で!その時からはずっと一緒にいて!」

それを聞いた赤弥の目から涙がこぼれ落ちる。

「もう…泣かないって決めたのに…わかった!何がなんでもそのリクエスト叶えてあげるから!待ってて!」

そう言うと赤弥は消えていった。残ったのは私の記憶と思い出。そして待つと決めた思いだけだった。


〜1年後〜

 「節分かぁ。やっぱ豆まきは朝に限るな。鬼は〜…うち〜。福も〜うち〜」

…………

「ま、来ないよね。」

…………

「…………」

「まったく、君はなんてこと言うんだい?他のやつが来たらどうするつもりだったの?」

聞き覚えのある声だ。1年前に聞いた声。私の好きな人、いや鬼の声。

「おかえり。」

「ただいま。」

純愛こそ正義

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