第4話 片翼
天使に近づくと、一瞬にして光に囲まれた。
レイカ「なにこれ!?」
考える暇もなく、目を開けると目の前には何人か翼を生やした人達が居た。
レイカ「私と同じ、憑代にされた人達…?」
天使「ここは地球において、私達天使が拠点にしている、聖地リヴァーサルと呼んでいます。」
レイカ「もうこんな場所が出来てたの…」
聖地と呼ぶだけあってその景観はとても壮大で、昔テレビで見たような、大聖堂と呼ぶに相応しい建築が施されている。
ここがきっと私の人生でとても大切になる場所なんだろう。そう思っていると後ろから声が聞こえた。
??「レイカ!」
明るい声に後ろを見る。
そこには事件の事を教えてくれた友達のミカが居た私も嬉しくなり大声を出してしまう。
レイカ「ミカ!」
駆け寄りお互い抱きつく。
レイカ「ミカも天使にされたんだね」
ミカ「そうなのレイカちゃん、学校帰ってたら急に血だらけの天使が来てビックリしたよ~」
姿は少し変わったがいつものマイペースで明るい所は何も変わらず、私はとても安心する。
ミカ「他にも、私達みたいな目にあった人たちがいるんだよ!」
その言葉を聞き周囲を見渡す。確かに私やミカのように翼を生やした人が3人いる。
レイカ「赤、青、緑に...」
そして私はミカちゃんの翼がおかしい事に気がつく
レイカ「ミカちゃんの翼って…」
私の問いかけにミカは少し困ったような顔をしながら答える。
ミカ「そうなのレイカちゃん、見てこれ.....何で私だけ翼が金ピカなのよ!なんかちょっと下品じゃない!?」
普通とは違うその翼に心配したが、本人はそこまで気にしてはなさそうだ。
ミカ「それより、レイカちゃんこそ——」
ミカが私の翼について話そうとした瞬間、前方から大きな声が響く。
???「お前達が憑代に選ばれた者だな!」
その天使は4枚の翼を広げ、まるで威嚇するかのように、けたたましく話した。
ミカ「翼が4枚ある・・・」
見た事ない4枚の翼にミカやその他の人も釘付けになっている。
みんなが唖然とする中、四翼の天使が話し始める
四翼の天使「私の名前はアブディエル!今から天使となったお前達の補佐をすることになった!」
ミカ「あの天使さん、なんだっけアブ・・・アブ?」
レイカ「アブディエルね」
ミカ「そうそうそれ!あのアブディエルって天使さんはなんか良い天使さんっぽいよね!」
こんな状況でもいつもと変わらないミカの笑顔に私も笑みを浮かべる。
アブディエル「早速だか、まずは飛んでみせろ!天使となったお前たちなら、きっと飛べるはずだ!」
それを聞き、皆んなが飛び始める。
すごい、確かに飛んでいる。青、緑、緑に金色、4人の翼が目の前で大きく広く辺りを包むように動いている。
ミカ「レイカちゃん見て一!飛んでるよ!」
レイカ「すごい!めっちゃ飛んでる!でもミカちゃん...すっごい眩しいよ」
ミカちゃんの金色の翼に少し目をやられてしまう。
私も飛べるのかな、あまり期待はしないが、やってみる。
レイカ「……!!」
背中に力をこめる。
パサッパサッ・・・
少し翼が動くだけで、飛ばない。
やっぱり飛ぶことが出来なかった。
アブディエル「お前・・」
アブディエルが話しかけてくる
どうやら飛べない私を見て気になったらしい。
レイカ「これですよね...」
アブディエル「お前...翼が一つしかないのか」
そうだ、私は翼が一つしか無い、いわゆる片翼ってやつだろう。それでいて翼が黒色だ、天使なのに黒色ってどうなんだろう…
レイカ(こういうのは漫画だと最強なのに…)
現実離れした世界で現実の厳しさを感じるとは思わず少しガッカリしてしまう。
アブディエル「だが、片翼とはどういうことだ…?普通そんな事はありえない。まさか失敗か?」
アブディエルの言葉に大きな不安を抱きながら私は苦笑いしかできなかった。
4人の憑依が飛翔することに慣れてきた頃、近くで爆発音がした。
「何だ!?」「どうしたの!?」「おい何が起きた!」
辺りは一瞬にして騒がしくなり起きた事の重大さを感じとることができる。
アブディエル「落ち着け!いいか!お前たち憑依には天使の力が宿っている、そんな簡単に死ぬことはない!」
アブディエルの声に場は静まり、落ち着きを取り戻していく。
青色の翼を持つ少女「あれって…!!」
みんなが上を見上げると空から降ってくる無数の黒点が見えた、まるで大量の虫のようなそれでもそれが何なのか一瞬で分かった。
悪魔だ
数はどうだろうか、いつかのテレビで見たバンドのドームツアーの客数くらいだろうか、いやもっとあるかもしれない
アブディエル「逃げろ!!」
アブディエルの言葉と共に全員が一斉に飛び出す。
まだ力のない私たちには無理だ、そう本能で感じとるには十分の数と威圧感。
ミカ「レイカちゃん早く!!」
レイカ「先に行ってて!」
飛べない私を助けようとミカが寄ってくる。
だけどダメだ、このままではミカちゃんも死んでしまう。どうにかしなければ、そう考えているとアブディエルがやってきた。
アブディエル「レイカと言ったな!お前は私と来い!それと、金色のお前だけはとにかく逃げ切れ!」
ミカ「私だけが逃げる事なんてできないよ!」
アブディエル「頼む!お前は天使の...いや、この地球の希望になる存在だ。今死んでいい存在じゃないんだ!」
逃走を拒むミカにアブディエルが必死に説得している。私もミカが助かってこの先、他の人や天使の役に立つならここで死ぬのも悪くないと思ったりする。
(てか私は死んでもいいの?アブディエルさんひどくない?)
と思いつつも実際そうなんだろう。
レイカ「大丈夫だよミカ、私はそんな簡単には死なないよ。それにアブディエルさんも居るしきっと大丈夫
だよ」
苦し紛れの説得でどうにかミカを逃がそうとする。
ミカ「わかった…レイカ!死なないでね!」
なんとか逃げてくれた...
ふと横を見ると、アブディエルの表情は覚悟を決めた顔をしていた。
アブディエル「レイカ・・・・といったな、すまない私達はここで死ぬかもしれない。」
(やっぱり死ぬじゃん私の人生もう終わり!?) ....とは言えない。だから精一杯に返事をする
レイカ「はい」
アブディエル「取り乱しはしないのだな、中々に肝が座っているではないか」
レイカ「こんな翼でどうやって逃げるんですか... それに、大切なものを守れるなら、なんだっていいですよ、私の命なんてあげちゃいますよ」
アブディエルはその一言に少し目を見開きその後、また覚悟を決めるように悪魔を睨みつけた
アブディエル「お前も一応憑依だろ?せっかくだ、実戦で訓練といこうじゃないか」
レイカ「初訓練が実戦ってすごいですね」
アブディエル「そんな事でもやってのけないとこの先死ぬぞ?」
レイカ「もう死にそうですけどね...」
アブディエル「それもそうか!なら人生の花道飾るつもりで行け!」
レイカ「はい!」
迫り来る悪魔、とんでもない数だ、でもきっとこの状況でもなんとかなるだろう。ならないとマズイ。
援軍でも来てくれるのかな、ミカちゃんは逃げたかな。そんな少しの願いを胸に私は歩き出す___
レイカ「絶対に生き延びる・・・!」
強く握る私の拳には希望がある。