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第75話 美しい領主

ついに夜が来た。

火炎神殿の火もゆっくりと消えていく。

三人は夜闇に乗じて出発した。

エミリアは聖光を失ったが、レベルや属性はまだ維持されており、指揮官としても当然戦場に立つことになる。

以前に44層に入った経験とライルの手記や資料の調査に基づき、

エミリアは全ての火炎従者を完璧に回避するルートを計画した。

ただし前提条件がある……

「フロー、絶対に砲撃はしないで。」

エミリアは小声で注意した。「ライルの手記には、44層を攻略する際に絶対に砲撃をしないようにと強調されている。」

フローの顔色が変わった。「ここまで来たのに砲撃をさせないの?」

「他の魔法を使ってもいいけど、今は夜で、奥義魔法を使うと谷の中の火炎従者を驚かせて、私達は包囲されてしまうわ。」

「それなら従者を全て倒せばいいじゃないか?」

「一度に多すぎるとシアが耐えられないし、君の魔力も足りないわ。」

シアは暗闇で見失った小さな怪物を無音で壁に釘付けにして、銀の剣を引き戻したが反論はしなかった。

彼女もまた44層のすべての怪物に一度に立ち向かう自信はなかった。

今回の目的がただの通過であったとしても、44層の強さは猪人とは比べものにならない。

「領主にさえ砲撃できないなら、私はイシュガルドに来る意味は何?」

「普通の魔法を使ってもいいけど、奥術系の墜落星光は使わないで、騒ぎが大きすぎるから。」

エミリアの直感が告げていた、

今ここでフローにしっかりと説明しなければ、未知の領主を見たらきっと我慢できないに違いない。

砲撃癖とはそういうものだ。

だからライルは44層で停滞し、それ以上進まなかったのかもしれない。

彼もまた不安を感じたのだろう。

奥術系以外では、フローの他の魔法は得意とは言えない。

最強の火力が制限されるなら、確かに慎重を期さなければならない。

一段の階段の上、火炎神殿の最深部の祭壇、

壁や床は設計建造されたかのように、材質は石でも土でもない深紅色の炎の紋様が刻まれていた。

月光の照らす中、月下満開三人は炎の結晶甲冑を纏った怪物と対峙していた。

火炎領主、

エミリアは深呼吸をして知っていた、これこそが真の試練だ。

「シア、まずはそれを抑えて、この場所に突進させないで。」

「わかった。」

金色の長い髪が乱れ飛び、銀色の細剣が一閃する。

彼女は数回の斬撃を続けて繰り出し、突進して来ようとする領主を牽制した。

シアは攻撃に長けた剣術士であり、毎回の斬撃が炎の結晶に深い傷跡を刻む。

各斬撃は少女の華奢な体格に見合わない異常な力を発揮し、華麗な剣術はまるで舞踊のようだった。

「フロー、少し後ろに下がって、シアに束縛の術と氷凌の術を使って、この戦いの成敗は君次第だ、急いで。」

フロー。「......」

雪月花と炎の結晶がぶつかり合う硬い音が祭壇に響いた。

フローも指を伸ばした。

氷、火、雷、様々な攻撃魔法が雨のように降り注いだ。

その瞬間、

領主は突然怒りのような咆哮を発し、口から火炎球を噴き出した。

シアは大きな動作で回避し、無意識に雪月花を前に構えて噴きつけられた火炎を弾き返した。

銀剣に焼け焦げた部分を見て、シアは非常に心を痛めた。

「こんな攻撃があるって先に教えといてよ!」

「入る前にちゃんと教えたでしょう!」

「戦闘の時に開始動作を見て教えてよ!」

「私……それが来た来た、早く抑えて!」

「ちっ……」

「フロー、君も止まらないで!」

「......」

エミリアにはそんな戦闘感覚はなかった、

以前彼女は後方で支援するヒーラーであり、ライルが指示するままに動いていた。

絶対に皆の後ろに避難して、自分を守る!

でも今は、

味方を指揮し、怪物の動作と技術を予測し、

どう見ても無理だ!

場に応じた判断は無正解がないと言うが、それこそライルが教えられないものだった。エミリアが来る前に多くの状況を計算しておいたとしても、

実戦では仲間の状態やミス、あるいは未知の事態も考慮しなければならない。

快適な領域に長い間いたエミリアが、外に出てからようやく理解した。

ライルの仕事は想像以上に難しい。

精神を高度に集中し、全てに注意を払わなければならない。

シアの位置、角度、次のフローの魔法の方向や位置を素早く分析し、

領主の次のスキルに目を光らせ、即座に警告を発する必要がある。

それも、牧師がいない中で。

シアは再び剣を構えて前進し、

エミリアの指揮はとても未熟で、多くの場合彼女の声がワンテンポ遅れ、シアにとって非常に苦しい思いをさせた。

反応する時間が少なすぎて、多くの場合エミリアが声を発すると同時に、領主の攻撃が顔面に届いていた。

ライルの予測的な指揮には到底及ばない。

端的に言えば、彼女とフローはほぼ個別に戦っているようなものだ。

フローの魔法が彼女に当たらないのは、フローの技量が優れているからだ。

だが辛うじてシアの動きと敏捷性はトップクラスであり、今のところ怪我をしていない。

それなら……まだ希望はある!

しかし、一方でフルスロットルで魔法を撃ち続けていた爆破狂人は、しばらくして不機嫌になった。

こんな見栄えのしない粗雑な魔法を使うこと自体、彼女にとって耐え難い。

奥術系の魔法を愛し、爆破を好むフローにとって、他の系統の魔法には全く興味がない。

そのため完全に魔力の浪費である。

この領主、彼女の前でこれだけ生き延びるなんて!

そして最も重要なのは……この領主があまりにも美しすぎる!

全身が不規則な炎の結晶で覆われ、シアの雪月花と衝突する時、澄んだ音を立てる!

もし……その美しい炎の結晶をすべて粉々に爆破して、空中に飛ばせるなら……

ゴクリ……

そのシーンを想像するだけで、フローは既に絶頂に達する寸前だった。

エミリアが戦況に集中している時、フローの深い黒色の瞳が徐々に輝き始めた。

シアは落ち着いた呼吸で数歩後退し、手を剣柄に乗せた。「エミリア、次はどうする?」

エミリアは少し考えた。「初回だから、速攻を求めず、けがをせずに安定を図ることが最優先よ。しっかりと抑えて、敵意を引き付ければいい。」

二人が話している瞬間、

濃密な深青色の光がフローの指先から瞬間的に噴き出した。

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