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第3話 水晶の涙が爆笑する

私は一体これから何をすればいいのだろうか?

 ライルは街道に立ち、少し困惑していた。

 娯楽活動がほとんどない彼は、図書館以外の場所へ行くことを想像したことがなかった。

屋台で二つの饅頭を買い、一つは食べながら考え込んでいた。

「あなたたちはどれくらいで四十五層にたどり着けるの?」

 ライルが振り返ると、やや赤みがかった髪の少女がいた。

 グラデーションの薄青色のドレスの上に軽やかな薄絹をまとい、瓜子顔が非常に魅力的な少女。

 水晶の涙冒険団の冒険者兼団長、ベリス。

 彼女も神話冒険団の地位を争っている。

 シアの思う最大の敵である。

 ライルが市場で店を開き、今日ダンジョンで手に入れたものを売っているとき、彼女をよく見かける。

 毎回彼女は警戒心の強い顔つきをしているが、今日は自ら彼と話しかけてくることになるとは予想外だった。

「わからない」

 ライルは頭を振った。

 ベリスは眉をひそめた。「それも言えないのか?」

「本当にわからないんだ。」

 ライルは苦笑した。「私はもう月下満開を脱退したから」

 ベリスは驚いた。「本当に?」

 ライルはうなずいた。

 シアはきっと、今日のライルがどうして突然こんなに大きな行動に出たのかについて考えているだろう。

 ベリスの心中は少し動揺していた。

 公にも私にも。

 競争相手として、彼女はこのチームをしっかり研究していた。

 毎日ダンジョンで命を落とす人がどれだけいるのか、誰にもわからない。

 しかし、月下満開の攻略進度が水晶の涙より遅れているのは事実だ。

 それでも、月下満開はこれまで一度も失敗していない。

 これは非常に恐ろしい数字だ。

 なぜならそれは、彼らが毎回ダンジョンに入るたびに、少なからず戦利品を得ていることを意味するからだ。

「追い出されたように見えるな。チッ……」

 ライルは苦笑した。「あまり誉められたものではないから、それ以上言わないでくれ」

ベリスは少し考え込んでから、「一杯飲みに行かないか、時間はあるか?」と言った。

 ライルは迷った。

「心配するな、お前の家のシア殿下は、この時間に外出しないだろう」

 ベリスは皮肉な笑みを浮かべた。

 ……

 ……

 ベリスは大きなジョッキにビールを一杯注ぎ、ふたつの大きなグラスを取り出した。

 ライルは酒を口にするのが久しぶりだった。

 三人のお嬢様は彼に酒を飲ませなかった。

 家に男がいると危険だから、おまけに酒臭さも不快だと言って……

 はは……

 ベリスは一気に大半を飲み干し、椅子に快適に寄りかかった。「一つずっと聞きたかった ことがある。四十三層の水晶の長廊だが、あの密集した何万匹もの溶岩トカゲをどうやってあんなに早く通り抜けたんだ?」

 ライルは考えた。「溶岩トカゲは赤いベリーに夢中になる。歩きながら水晶の長廊の悬崖下に投げると、煮たてた団子のように次々と崖下へ飛び込むんだ」

 ふたりは顔を見合わせた。

 ベリスの顔には明らかに驚愕と信じがたい表情が浮かんでいた。

 そして、複雑な感情も混じっていた。

 ライルは気まずそうに「図書館に三日間こもって考え出したんだ。シアはこのことで激怒して、進度が遅れたって言ってた」と苦笑した。

 ベリスの美しい目が少しずつ大きく開かれ、少し可愛らしく見えた。「図書館って?」

「図書館の冒険者手記だよ。第十三層の第六冊の第十五ページに載ってる」

「溶岩トカゲが水晶の長廊を離れ、四十三層の東側の森で赤いベリーを夢中で食べている姿を見た人がいるんだ。そのとき彼らはまったく周囲を気にしない……」

 ベリスは彼の話を遮った。「手記?本当にあんな細かい冒険者の記録や遺書を読む人がいるのか?」

ライルはしばらく沈黙していた。「もうすぐ全部読み終えるところだよ」

 ダンジョンを攻略するのに、攻略本を探さないのか?怪物の生態を研究しないのか?

 ライルは疑問に思った。「これって学者のやることじゃないのか?」

 ベリスは口元を引きつらせた。「お前がそう思うからこそ、シアはお前を大切に思わないんだ。我々の学者は、ただ後ろに隠れて溶岩トカゲの弱点を教えるだけだ。どこを火で焼き、どこを斬るかを伝えるだけ」

「そんなことは全然知らないな」

 ライルは感慨深くビールを一口飲み、一呼吸おいた。「学院の教材に載っていることだから、見たくても見れない」

「でも私たちの戦術は一匹ずつ倒すことだ。それがあの優秀な生徒の言う、確実で安全な方法だ」

「それに問題があるのか?」

「十五日もかかったんだ。今でもトカゲを見ると気持ちが悪くて、自分の目をくり抜きたくなるよ」

「……」

 ベリスは素早く酒を飲み干し、微酔状態で顔が紅潮していた。「これが学院の優秀な生徒か。ライル、お前が夢の中でも欲しいと思ったことがあるよ。お前は本当に私が見た中で一番想像力豊かな学者だ」

 ライルは少し戸惑った。

 実際に他の学者がどうしているのかよくわからない。

 みんな自分の考えや方法を隠している。

 彼も学校に通ったことがない。

 ただ自分で考えるしかなかった。

 まさか彼らは力ずくで進んでいたのか?

 自分だけが試行錯誤していたのか?

「ライル、実はお前を水晶の涙冒険団に招待したいと思っている」

 ベリスは肘で顎を支え、美しい紅い瞳には明らかな欲望が見えていた。

「私?」

 ライルは疑問を抱いた。「お前たちは新しい学者が来たんじゃなかったのか?シアからその人は優秀な生徒だと聞いたよ」

「何が優秀な生徒だ。あんなのは満足しないジャッカルだ」

ベリスは顔をしかめた。「毎回ダンジョンの利益の四割を渡さなければならないし、女員たちをいつも困らせているんだ。たかが二年勉強しただけで、何がそんなに偉いんだ?」

ライルはため息をついて杯を握った。「学歴は重要だよ。見たくても見れない本がたくさんある。」

ベリスは真剣な顔で言った。「月下満開を研究した。正直言って、シアよりもお前のことが良くわかる気がする。お前の考えや計画、本当に想像力豊かだ。」

「ありがとう、でも怖いんだ。」

ライルは頭を振った。「もう休みたい。」

「まさかお前がシアのことを本当に好きだなんて?」

ライルは笑った。「お前もそう思うのか?」

確かにシアは可愛いけれど。

そういう風に考えると、彼女が後悔し絶望する顔が見たいな……

ライルは顔色を変え、考え方が少しおかしいことに気づいて、自分の頬を軽く叩いた。

「みんなそう思ってるんだ。」

ベリスは少し酔いが回ってきたのか、目が虚ろになっていた。「実は、お前の顔は本当にいいよ。今は敵ではないから気づいたけど、実際お前のことがちょっと好きかもな。ほんとに、あの三人のお嬢様はお前に甘やかされ過ぎだ。」

「そんな話をしても意味がないよ。もう辞めたんだし。」

ライルは頭を振った。

冒険は剣と魔法だけではない。

だからライルは当然、その背後のすべての暗い部分と重さを引き受けた。

もちろんこれについて話したことはない。

今も話す必要はない。

ベリスは彼とグラスを合わせた。「価値がないな。」

学者として、後方支援をしながら召使いのように働く。

市場で材料や魔石を売り、食事をする時間がなければ饅頭をかじり。

帰る時には三人のお嬢様にきれいなケーキを持ち帰り、大量の金貨を彼女たちの手に渡し、彼女たちに美しい服や装備を買わせる。

彼がやったことは十分すぎるほどだ。

こんな学者がいたら、夢の中でも口元が歪むくらい笑うだろうな?

もっとも、ライルが月下満開を辞めたのは、喜ぶべきことでもある。

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