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前日譚 ジェニファー・ジェントル

「あなた、一体何者なの?こんなことをして許されると思ってるの?」


まだ高校生になりたてであろう若い女の子が部屋の中央の椅子に縛られていた

学校の教室ほどの広さであったが椅子以外には何も置いていない空間といったほうが正しいといったような場所であった

そして自分がこのようにした犯人と思しき男が目の前で立っていた


「名乗らなくても知っているはずだ。この世界の人間ならね。」


「あんたみたいな変態知らないわよ」


「まあそうだ、残念だ。お前は名前は何というんだい?」


「答えたら私を解放してくれる?」


「返答による」


「ジェニファー……それがあたしの名前」


「それはこの世界でお前が勝手に名乗っている名前だろう?どうみてもジェニファーっていう顔じゃない。本当はヒナとかいうんだろう?」


「……!なんで知ってんの?」


「お前のことは何でも知っている。もはやお前の記憶は私の記憶、一心同体なのだよ」


「何キモイこと言ってんのよこのストーカー!」


「お前は前世でたいして勉強をしていないな。ろくな記憶も情報もない」


「記憶って……あんたは私の何を知ってんのよ!」


「何って……だから全部だ」


男は微笑を浮かべた

女の子は顔を青ざめた


「噓を突かれたからなあ……お前を自由にするのはやっぱなしかなあ」


そう言いながら男は女の子の肩に手を置いた


「ちょっと、何触ってんのよこのブサメン!」


女の子は激しく暴れた

だが縄の締めが強く腕も足も動かない 椅子も固定されていてどれほど暴れようともびくともしない


だが男は明らかに同様を見せた それは「ブサメン」という言葉を聞いてからだ 

男は二、三歩後ろに引き下がった

後ろ側に体重をかけ、左足に重心が寄っていた


「ブサメンか……やはり。前の身体はもっと良かったんだけどなあ。私でも防ぎようのない事故で死んでしまったんだよ」


女の子はそれに取り合わず、次々と罵倒を浴びせた


「あんた前世でどんな悪いことをしたわけ?じゃなければそんなキモブタの顔面で生まれてくるわけないでしょ?あんたオタクだったでしょ?みりゃ分かるわよ。よくそんな顔面で生きていられるものね。私だったら自殺しちゃうわ」


「だからお前は自殺したのか?」


「!!!」


男にはもう罵声は効いていなかった


「ああ……だからこの身体は自ら命を絶ったのかもな」


男はまた女の子の前へと進んでいった

女の子は目に涙を浮かべていた


「いやいや、分かってるって。みなまでいうな。お前が自殺という選択肢を取らなければならなかったという理由は。全部知ってるっていっただろう?」


男は女の子の前に立ち塞がった

女の子は声にならない声で泣いていた


「お前をどう片付けてやろうか考えたんだ」


と言って右手を後ろに手をやった そして出してみるとその手には小さなナイフが握られていた


女の子は悲しみと恐怖で抵抗した

それでも身体は動かない


「やめて……やめて……」


次の瞬間、女の子の全身は自由になっていた

全ての縄が切られていた


そのことに気づくとすぐに男の方へ殴りにかかった

その拳は易々と受け止められた

男は後ろの方へ飛んだ


「慌てるな、まだこの身体を慣らすのには時間がかかっているんだ」


「あんたみたいなオタク野郎、あたしでも倒せるわ。私だってこの世界で魔法を少し習ったんだから」


「これが水を得た魚というやつだな」


もうさっきの恐怖も悲しみも消えていた


「あんたのその身体もキモイ顔面も焼き払ってあげる、火葬してあげるわ」


右腕を張って男の方へと向け左手で二の腕を抑えつけた


「お前にそれが使えるのか?」


「見せてあげるわ!Inferno(インフェルノ)!!


激しい業火が男を一瞬にして包みこんだ

魔法を放った自身まで火傷してしまうほどの火力だ

それを撃てなくなる寸前まで放った


煙で前が見えなかった

しばらくしてから晴れてきた


男はさっきいたところで両手を前に翳して平然と立っていた


「もう終わったか……」


「……なんで!」


辺りには煙とその臭いが漂っていた

だが煙は部屋に充満することなくどこかへ消えていった


「ただ消火しただけだ。それよりお前は次を撃つのに少し時間がかかりそうだな」


「はあっ……はあっ……くっ!」

女の子はかなり疲れている様子であった


「私はさっきお前の拳を受け止めるときも魔法を使ったぞ。いや使わざるをえなかった。だからまだ慣れていないと言っただろう」


「えっ!詠唱もなしに一体どうやって……?」


「それはお前が私が誰かを知っていれば分かるはずだ」


「知らない……わよ……」


「ああ、それは私も知っている」


男は息切れも全くせずに腰に手を当て余裕を見せていた


「そんなに疲れる理由は知っているだろう。お前にはセンスがないからそうやってスタミナを犠牲にして魔法を放つしかない。だが普段から運動をするものでもないからすぐこうして疲れてしまう。だが発音は完璧だった」


女の子はただ黙って体力の回復を待った 


「イン・ア・ガダダ・ヴィダ……というのを読めば恐らく分かってくれるだろう」


「インア?……何?……一体なんの話よ……」


疲れているところにいきなり訳の分からない単語を聞かされて余計に疲れた気がする


「だがもうそれを知る機会はない」


「くっ!……」


まだ全快ではないがまたさっきの魔法を放つ構えを取る


「それでなあ……さっきの続きだが、お前の片付け方を考えたんだ。それでだなあ、私はお前の望みを叶えてやることにした」


そう言うと目の前に人が倒れていた 一体なぜどのようにしてさっきまでいなかった人が現れたのか一切が謎であった


女の子はこの人の顔を見て誰であるか確かめていると思わず叫んだ


「お母さん!!」


それは女の子がまだ幼い頃に交通事故で亡くなってしまった母親であった


「お母さん……」


もう二度と会えないと思っていた人との再会に喜び、その場へ近づいていった

男のことも忘れてかけていた


だがその時、巨大なものが奥の壁、男が背にした壁を突き破って出てきた

それは巨大な蛇の頭であった


するとその蛇は母親目掛けて大口を開けて突っ込んだ


蛇は母親を飲み込もうとした


「お母さん!!」


すぐさま母親のほうへ飛び込んだ


蛇は二人を軽々と飲み込んだ




中は蛇の食道とは思えないまた謎の広い空間であった


女の子は先に飲まれて奥の方へ行ってしまった母親を探した

どれほど走っても、同じような風景の連続であった


奥の方に母親の姿を認めた


まださっきの魔法で疲れつつあった身体を奮い立たせて走った


すぐ近くまでくると飛びついていった


「お母さん……!!良かった……」


母親のほうも我が子を抱きしめた


「お母さん……さっきはごめんなさい。本当は私の”陽菜”って名前つけてくれたのお母さんなのに……こっちに来て名乗ってみたかったからジェニファーなんて言って……ごめんなさい……」


「母親はただ黙って抱きしめていた」


「また会えて嬉しい……嬉しいよ……お母さん……私、死ぬのは怖かったよ……」




あの部屋からは蛇の姿が消え、壁も元通りになっていた

ただ男が壁に寄りかかってずっと動かずに腕を組んでいた


そして


「ああ、いいなあ……」


とだけ呟いた

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