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『異世界綺譚』 林檎が嫌いだったら魔法はなかった   作者: 竜彦
1 異世界転生と結婚
5/24

劣情を右手に

僕にとってはあの甘いキス以外の記憶がほとんどない結婚式のあと、新妻には秘密でルイゼと話をすることになった


新郎新婦が教会を後にして会がお開きになった後教会の外、僕は今まで味わうことがなかっただろう結婚後の余韻に浸っていた

アリサのほうはただもう恍惚というか幸福に包まれた顔をしていた


「これから私たちどうしましょう?村に残りましょうか。子どもの数はどうしましょう?」


子ども……か……


それには色々考えなければならないことがある

育児だとか金銭のことではない……僕にとってこの世界で生まれた子どもがどんな存在になるかということ、それだけじゃない出産するまでの手順だ


結婚してから出産……というところまでいくには必要不可欠なプロセスというのがある……


アリサという美少女と一つになることができるのは僕にとって思ってもみなかった幸運だ

果たして僕はそんなことをしていいのか

僕にそんな資格があるだろうか……


そんなことを考えているときやって来たのはアリサの姉、ルイゼだ

ルイゼは僕たち二人の元へ来た


「おめでとう、お二人さん」

と言った


祝福の言葉を述べに来たのだろうか、僕は「ありがとう」とだけ返した

だがアリサの方は何だかよそよそしいというか、明らかに心から喜びを感じているのではないという風に「ありがとう……ございます……お姉さま……」

と言った


僕にはその理由が分からなかったがその様子に気づかなかいふりをした聞かないことにした


そしてルイゼは僕に握手の手を差し出した

触れた手から燃え上がったような気分がした

そのとき目の前に迫った彼女、振り返った彼女が放つ名称の分からない香水のかぐわしい匂い、宙を舞うサラサラの髪……


彼女の手に何かが握られていることに気がついた

手を離した後、僕はそれを握っていた


そして次にアリサの方へ向かい、姉妹の熱い抱擁を交わした


「私、明日にはもうここを発つから」


と言い残して去っていった


アリサは涙を流していた

それはやはり別れへの悲しみだろうか?


僕は手の感触から渡された物が紙切れであると気づいた


泣いている彼女に覆うように抱きついて、僕はその紙がばれないように広げて読んだ 妻へ秘密を隠しているようでいい気がするものではない


そこには鉛筆の綺麗な字でこうあった


「今夜、私の部屋に来てくれないかしら?あなたと話したいことがあるの。あの子には秘密でね。お食事が終わったらすぐに私のところへ、よろしくね」


日本語ではなかった なのになぜか僕にはそれが日本語であるかのように読めた


しかしルイゼが僕に何の用だろう?


姉も妹と負けず劣らずの、また別格の妖艶な容姿をしていた。

妹とは対照的なロングヘアー、そして姉妹そろって美人だ

妹が小動物的な愛くるしいかわいさであるとすれば、姉のほうは知的で大人びたお姉さんといった感じだ


それというのも、彼女はこっちの世界の女子大学に通っていて、僕と同じく卒業した後にこの村に戻ってきていた


だが一体妹にまで黙ってまでしなければならない話とはなんだろうか?


僕たちが誓いの口づけを終えた後、退場するまで彼女は僕ばかりをみていたようだった

その手は新たな夫婦の誕生を祝う大音声をあげていながら、目だけは笑っていなかった


僕はこのとき僕の正体が見破られているのではないかと、内心冷や汗をかいていた


まさか歩き方とかキスの仕方とかでばれた、ということはないだろうな、多分…


もしばれていたとしても、僕は甘んじて処罰を受け入れよう、結婚詐欺として


ジュリアンがどんな話し方をするのかよく知らない <僕>という一人称でも、言葉にするときは英語みたいにみんなアイになるから直す必要もないだろう

でも僕にはジュリアンとしての記憶がある、というかほとんどそれしかない


選択肢さえ間違わなければ大丈夫だろうと高を括った


選択式の試験と同じだ どこかに正解が紛れている

落ち着いていけば、例えノー勉で対策しなくたって…


いや、もしかしたらクソゲーの可能性だってある

一回間違えただけでドボンになるかも


僕は前者であることへの望みをかけて、一度二人は着換えにそれぞれの自宅の部屋へ戻ることにした


夕方には宴会がある その後にルイゼと会うというわけだ


そう考えたらある懸念が生じた


結婚式があった当日の夜に妻以外の女性と会っていいものだろうか、と

いや、だってもう二度と訪れることのない初めての夜だぞ?


それを義姉と共に過ごしていたと知られたらあらゆる誤解が生じかねないことになる


そんなことを考えながら着替えていたが、すぐさま邪念を振り払った


ルイゼだってそのことを考慮していないはずがない。ここは彼女を信じることにしよう

あとは話の内容が何であるかということだけだ


…そういえばまた思い出したことがある


彼女は実は既に結婚していた 相手は遠く離れた町の商人の男だ おそらく学生生活の中で出会ったのだろう 今は夫とその町に住んでいて、今回は式のために一時的に帰省してきた、というわけだ


夫はこの時期は忙しいのだろう。詳しいことはしらないけれど、この時期は商人にとっては正念場だろうからね


だって今は秋、商いの時期…いやそうすると秋・が・な・い・だから秋以外にやるのが正しいのか…あれ?

それはそうとしても、みんな日本語を使っているわけじゃないから関係ないからいいか


いや待てよ

変なことを考えていたが、別の疑問が生じた


ルイゼとジュリアーノは幼馴染で同い年

二人とも大学(呼び方が正しいかはわからないが取り敢えずこういっておく)を卒業していて教養がある


もしこの二人が結婚していたらスーパーカップルになっていたのではないか?


しかし彼女が先に結婚したということはジュリアンに何か甲斐性ない点があって、それで遠い町の商人より劣って見えてしまったのではないだろうか


だとしたらジュリアンは何をしてるんだ


彼がそう決めたということなら僕も当事者ではないし、とやかくいう資格もないがやっぱり何か決めてとなることがあったのだろう

あの告白のとき遠くから彼女が見守っていたのは……


でもまあ……前世の僕であれば選択肢すら与えられることはないだろうということは確かだ


ともかく僕も今夜彼女と合わなければならなかった

僕にも彼女から知りたいことがある


そして着替えた服装は中世の平民が着るぼろ布みたいな、やっぱり異世界らしいやつだ

なんだけど今のところ異世界らしい魔法もまだ知らない

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