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ライブ配信をリアタイで視聴してみた

 ひとまず込み上げてくるイライラをグッと堪えて情報収集をし、精算してネカフェを出る。

 暫く歩いて人通りの少ない土手でイライラを一気に発散させた。


「アレがダンジョン配信!? ふざけんなよっ! 最初から最後までボソボソ喋って聞き取れやしねぇし、ダンジョンの入口前をウロウロして帰ってるだけじゃねぇかっ! これじゃあただの不審者配信だっつーの! こんなもん観て誰がウチのダンジョンに来たいって思うんだよっ!」


 溜まっていたものを吐き出して少しスッキリ。でも、その後にネカフェを出た時からずっと握り締めてクシャクシャになったレシートを開いて清算額を見て悲しさがやってくる。


「はぁ……全部観なきゃよかった。ちょっと調べるつもりが3時間。千円って……俺の1週間分の食費が……くっ!」


 開いたレシートをまた握り締め、悲しみを飲み込んでトボトボとダンジョンに帰った。



 帰宅後、買ってきた鶏肉を切り分けて夕飯に使う分以外は冷凍保存して夕飯を作り、ちゃぶ台と布団しかない質素な部屋で食事をとる。

 今日のおかずは鶏むね肉と野菜の味噌炒め。

 鮮度のある肉や葉野菜は基本的には仕送り日から数日しか口に出来ないからご馳走だ。


「うん、美味い! でも……はぁ……千円か」


 安くて美味い物を口にしても失った千円が頭をよぎる。

 それもそのはず。

 陰キャップchは挨拶コメントしかなかったが、他のチャンネルのコメントは盛り上がっていた。その中にはダンジョンに行ってみたいなどのコメントが多数。

 実際にそのダンジョンにリスナーが行っているのかは知らないが、1割でも訪れていたらそこのダンジョンマスターはウハウハだろう。

 あんな配信を観たおかげでこっちの貧相さが余計に悲しさを掻き立てる。

 でも、人気がある配信を観て得るものはあった。

 チャチャッと食事と入浴を済ませて布団に寝転がって計画を立てる。


 俺が考えた計画とは。

 ダンジョン配信が人気コンテンツならばそれに乗っかろう計画。

 配信を上手く使って俺のダンジョンの人気を上げればいいのだ。

 しかし、俺のダンジョンを配信しているのは1人だけ。あの陰キャ女子をどうやって扱うかが鍵となる。

 いきなり直接会うのはどうかと思う。

 ここは俺が陰キャップchの固定リスナーになって、まずはダンジョンに入るところから促してみるとするか。


「はぁ……貯金足りるかなぁ……」


 固定リスナーともなればハイテク機器を持っていない俺はライブ配信がある日に毎回ネカフェに行かなければならない。

 陰キャップchの配信時間は短かったけど、コメントを打ってくれるリスナーがいれば配信時間が長くなる可能性だってある。

 時間と回数が重なれば重なる程、雀の涙程しかない貯金が無くなっていくわけだ。

 貯金が底を尽きる前に何とかしたいと思いを巡らせながら眠りについた。



 5日後の午後に俺はネカフェのパソコンでアカウントを作って陰キャップchのライブ配信予約枠で待機していた。

 ライブ配信開始時間まで後5分だというのに待機場所には俺1人。なんとも物悲しい雰囲気だ。

 この物悲しい待機場所を彼女が観ているなら配信へのモチベーションに関わる可能性が高いと思う。

 なるべく彼女のモチベーションを落とさないようにしてあげないとまたボソボソ喋ってダンジョンの入口前をウロウロして帰るだけの配信になりかねない。

 とりあえず幾つかコメントを打って様子を見よう。


〈リアタイ初見です〉

〈楽しみにしてます〉

〈ワクワク〉


 他のチャンネルでのコメントを参考にしてみたがこれでいいのかはよくわからない。

 陰キャップchは毎回コメントしてくれる固定リスナーが居ない上に主である彼女がボソボソ喋っているだけだからお決まりの挨拶や始まる寸前の待機コメントが定まっていないからやり難い。

 兎に角、やり難くても見よう見まねでコメントをしていこう。

 そうこうしている内に開始時間になりライブ配信が始まった。


「…………あ…………ど…………して…………です」


 始まったのはいいがいつも通り帽子を深く被っていて顔がよく見えない上にボソボソ喋っていて何を言っているのかさっぱりわからない。

 画面に写っていない右手側をチラチラ見ているような素振りからそちらの方で接続やコメントを確認しているかもしれない。


〈なんて?〉


 とりあえず聞き直しのコメントを打つと、


「…………ど…………して…………です」


 右手側をまたチラと見て最初と同じように喋った。やはり右手側で接続やコメントを確認しているようだ。

 それにしても何を言っているのかわからん。


「……今日……ダンジョン……配信……たい……ます」


 モジモジしながらボソボソと喋る彼女は自分に向いていたカメラを1度ダンジョンの入口に向けて、また自分の方へ戻すと何やらゴソゴソとやってカメラを固定した感じだった。

 固定されたような画角にはダンジョンの入口前と彼女の全身が映る。

 この感じから察するに彼女は完全に1人で配信をやっているみたいだ。

 カメラ固定から数分が経過しても彼女はこれまでの配信と同じく入口前をウロウロするだけ。

 このままではまたウロウロして配信が終わりかねない。


〈ダンジョンに入らないの?〉


 ひとまず軽いジャブ的なコメントを打ってみると、


「…………たい…………けど…………まだ……が」


 右手に持っている端末でコメントを見てまたボソボソと喋った。

 これでは埒が明かない。少し強めに促してみるか。


〈はよ入れ〉


 少し焦って強めのコメントを打ったのは失敗だった。

 彼女はそのコメントを確認してすぐ、あからさまにしょんぼりしてカメラに寄ってきて、


「…………もうすぐ……だから…………バイバイ」


 何かを告げて配信を終了した。

 これは明らかに俺のコメントミス。強めのコメントが彼女のやる気を削ぎ落としてしまったようだ。

 ネカフェの料金は5百円くらいで済んだがブロックされたのではないかという不安を植え付けられた。

 しかし、まだブロックされたと決まったわけじゃないから次のライブ配信の日時の確認と高評価をポチッて俺はダンジョンへ帰った。

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