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ぼっちが学年二代美少女に憧れた結果  作者: 豚太郎
後編 俺と面倒臭い彼女と必然の決別
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第50話 友達in幼馴染の家

 翌日。

 俺と飛鳥の地元であるここで、観光地と呼べるのは本当に海くらいだ。

 正直この県で最も栄えている駅前でも、俺達の高校の近くの方がよっぽど人がいる。

 何が言いたいかというと、せっかく旅行に来たのに遊ぶ場所もないのである。

 となると、おのずと選択肢は限られる。


「この角を左よ」


 先導する飛鳥に続いて皆ぞろぞろ歩く。


「どんなところなんだろ、楽しみだなー!」


 頭の後ろで手を組んで歩きながら、にひひっとこちらに笑いかけてくる未来。


「お、おう」


 不味い、昨夜おかしな話をしたせいか、彼女のことを変に意識してしまう。

 あいつらはどうだろうか、とさり気なく周りの様子を伺った。

 姫野は飛鳥の傍でへー! と興味深そうに辺りを見渡していて、その隣で小田と橘が話をしている。

 ……古賀と柊が何やら言い合いをしているのも含めて、皆いつも通りのように見える。

 俺のことはともかく、小田の姫野への感情を俺がばらしてしまわないように気をつけなければならない。ふう、と息を吐いて気を引き締めた。







 この辺りはいわゆる住宅街で、田舎故にアパートよりも一軒家の姿が目立つ。

 古い建物ばかりというわけでもないが、年季の入った瓦葺きの昔ながらの家も多い。


 飛鳥がそのうちの一つの前で足を止めた。


「着いたわよ。ここが私の家」


 周りの家より一際大きく、けれど落ち着いた雰囲気がある。広い庭には松なんかが植えてあって、風情がある、と言えばいいのだろうか。家というより、屋敷という形容が相応しいような建物。


「「「「「「おおー!」」」」」」


 旅行の計画を建てる段階で、せっかくだし飛鳥の家に行ってみたい、という意見が出た。結局当日特に他に行きたい場所がなければ行くということになり、今に至るという訳だ。

 六人分の歓声が上がり、飛鳥はその反応に戸惑ったようにこちらにちらと視線をよこしたので、俺は肩を竦める。俺も初めて見たのはまだ幼稚園児だったが、幼心に驚いたものだ。


「広いねー! 庭だけで私の家くらいありそう!」


「あれはおじいちゃんの趣味だから……」


「へぇ~、あ、凄い! 池まである!」


「鯉を飼ってるの。お昼頃にご飯あげるから、やってみる?」


 やるやる! と手を挙げる三人を見て、口元を綻ばせる飛鳥。


「しかし、本当に広いね。最初聞いたときは七人も押しかけて大丈夫かと思ったけど……これなら心配なさそうだ」


「ここら辺はこういう家が多いのでござるね。これ、どこからどこまでが前川氏のお宅でござるか?」


「そこに塀があるでしょう? そこから向こうは隣の家よ」


「へぇ。にしては随分と塀が低いな。結構仲良くしてるってことか」


「……ぁ。……えぇ、まぁ」


 俺の方を伺う飛鳥に、俺はやはり肩を竦めて答えた。


「あー……そこ、俺の家な」


 へぇ、という空気が流れる。幼馴染だということは既に言ってあるので、まぁそれほど驚くようなことでもないだろう。約一名、異なった反応を見せている奴もいるが。

 飛鳥の家の鯉を見ていたはずの女子三人も、納得したような表情で並んで建つ俺と飛鳥の家を見ていた。


「二宮の家は結構新しいんだな」


「ちょっと待つでござるよ!? 幼馴染で隣の家ってマジでござる!?」


「おう、って言っても引っ越してきたのは俺が幼稚園の頃だから……もう十年以上前か」


「綺麗な家だね~どっちの家も素敵だ~」


「聞くでござるよ!!」


 自らの太ももをパァン! と叩く小田。


「えっ、何ですかこの人……」


 比較的絡みの少ない古賀だけが軽く引いているが、他の奴らにとってはこいつの奇行は今に始まったことではないので、特に気にする素振りは見せない。

 ちなみに姫野も普段通りにこにこと笑っている。


「お主らには分からぬでござるか!? この幼馴染☆de☆家が隣という奇跡が!? 何も感じないでござるか!?」


 小田の魂の籠もった叫びに、静かに声が重なる。


「……分かるよ、その気持ち」


「はっ! その声は……!?」


 小田がやたらと芝居かかった仕草で、声の主の方を振り向いた。

 水瀬は深く被っていた麦わら帽子のつばを右手でくいっと押し上げ、にやりと笑う。……本人はハードボイルドっぽくしているつもりかもしれないが、正直普通に可愛いだけである。


「幼馴染……家が隣……それは全人類の追い求めた夢……」


「水瀬氏……! お主、分かっているな! わかっているでござるな!!」


 スッと小田が手のひらを向けると、そこに彼女がさっと自分の手を掲げ、パァンと小気味いい音が鳴る。未来は最近小田と俺のおすすめアニメを見ているせいか、何かしら通じるものがあったみたいだ。


「貴方達が何を盛り上がっているのか分からないけれど……別に大したものじゃないわよ、幼馴染なんて」


「そうなんですか?」


「えぇ。私たちの場合は特に、ただ家が隣なだけだから。あなた達はお隣さんとそんなに仲が良いのかしら?」


 親のウマが合ったのだろうか。双方の親が共働きだった為、昔から子供だけで夜までどっちかの家に一緒にいることも多かった。だからただのお隣さんとはちょっと違うんじゃないか、と思わなくもない。

 しかし貴方は黙っていて、とばかりに飛鳥がきつい視線を飛ばしてくるので、ここは口を挟まないでおく。


「う~ん……道で会ったら挨拶くらいはするけど~」


「そういうこと。必然的に学校は小中一緒だったから、話す機会は多かったけれど、それだけの話よ」


「まぁそうは言っても、隣の家でござろう!? ある程度の付き合いは避けられないはず!」


 素っ気無い飛鳥の態度に、なおも食い下がろうとする小田。

 彼の言葉に飛鳥はそうね、と軽く頷く。


「確かにそれはそう。だからこそ気を遣って大変なのよ。子供同士が険悪になったら、家族にまで影響が行くかもしれないもの」


「うわぁ、なんかリアル……」


 飛鳥の言葉に小田はとうとうがっくりと膝をついた。


「あぁ……じゃあお互いの部屋をこっそり行き来したりとかも幻想なのでござるか……世知辛いでござるなぁ……」


「…………え、ええ。そうね」


 …………。

 飛鳥は絶対に何も言わないで! とこちらにアイコンタクトを飛ばしている。


「よ、よーし! それじゃ、飛鳥ちゃんの家にお邪魔しますか!」


 水瀬の号令に気を取り直して、俺達が目の前の和風な邸宅に入ることにした。


 その時、俺の家の扉がガチャリと開いた。

 そこから出て来たのは――。



「…………お兄ちゃん?」



 ぽかんとした表情の、ジーンズにTシャツというラフな格好をした女の子。

 後ろで纏められた髪が太陽に反射して光った。去年の年末から、大分伸びたかもしれない。

 片手にアイスキャンディーを持っているから、大方家の前のポストから郵便物を取り出しにでも来たのだろう。


「……おい、あれってもしかして」


 唖然とした皆の視線が集まっているのが分かった。

 あー、と俺は妹に向かって軽く手を挙げる。


「……久しぶり、紗月」


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