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ぼっちが学年二代美少女に憧れた結果  作者: 豚太郎
後編 俺と面倒臭い彼女と必然の決別
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第48話 夜、男子部屋

 夜。


 海水浴場から幾らか離れた場所に建てられた、いくつかの木製のコテージ、うち一つの室内。

 敷かれた布団の上に真剣な表情で座った男が、静かに口を開いた。


「さて、お前ら……楽しい楽しい恋バナの時間だぜ。……って聞けよ!」


 布団の上の柊は両手で二つの枕を投げつけてきた。

 それは狙い違わず彼に背を向けて座る俺と小田の頭部に命中する。

 ぼすっと軽い衝撃。


「ったく何すんだよ」


 俺は渋々テレビ画面から視線を外し、コントローラーを持ったまま背後の柊に振り返った。

 並んで座る小田に至っては画面を見たままだ。


「隙ありでござるよ!」


「はぁ!? やり方が汚いぞお前!」


「黙るでござる~、勝つことが全てなのでござる~」


「やっと終わったか! お前らの勝負、レベル高過ぎなんだよ……」


 もとは四人で対戦していたのだが、序盤に速攻で負けてしまった柊は暇を持て余していたようだ。俺と小田は顔を見合わせ、この辺にしておこうとコントローラーを置いた。


「おーす。飲み物と、適当なお菓子買って来たよ」


 丁度そのタイミングで、柊以上の速さで脱落し、最下位の罰ゲームとして飲み物を買いに行っていた橘が戻ってきた。


「サンキュー」


「あれ、もうゲーム終わったんだ」


「ああ。だから今から恋バナしようぜって」


 柊の言葉を再度耳にしてしまった俺達はその場にドサリと崩れ落ちた。


「おいおい。余り恥ずかしい言葉を使うなよ……俺のメンタルが耐えられない」


「はずいでござる。その言葉を聞くだけでもう無理」


 俺と小田は羞恥心の限界を突破して布団の上で悶えている。

 そんな俺達の限界ムーブをスルーして、リア充二人は会話を続ける。


「確かにこんな状況中々ないし、そんな話をするのも悪くないね」


「おお、流石橘、分かってるじゃねぇか」


 ここはひとつひとつが小さな家のようになっていて、中々いい雰囲気の場所だ。女子勢めっちゃ写真撮ってたし。

 今は夕食のバーベキューと風呂は済ませ、部屋に並べて敷いた布団の上でゲームをしていたところだった。ちなみに男女で一つずつコテージを借りているので、飛鳥達はここにはいない。










 他の2人は平然と、俺と小田はなんとなくそわそわしながら、輪になって座る。柊が部屋のテレビのチャンネルを回し、適当なバラエティー番組で止める。テレビから聞こえる笑い声が、皆の口を滑らせる丁度いいBGMになる。


「それで、誰から話す? まずは無難に小田からいっとくか?」


「ええ!? 1番手はいやでござるな。柊氏からにするでござる!」


「そうだね、言い出しっぺだしそれが良い」


 小田が柊を指名し、橘もそれに乗っかった。


「あぁ? ……ちっ、しょうがねぇな」


 柊が肯定すると、おお、と小田と橘が色めき立った。

 俺は輪の中央に置いたコンビニ袋からポテトチップスを取り出し、バリバリと包装を破って各自で食べられるように置いた。柊がまずサンキュ、と言って一つ摘まんだ。


「つっても、聞きたいことあるか? 俺の仲良い女子ってだいたい他校だぞ」


 小田もグミの袋を開けながら首を傾げた。


「それ前も聞いたでござるが、彼女ではないのでござる?」


「おう。告白とかもしてねぇし、されてねぇ」


「へぇ……向こうは本気なのかい?」


「いや、向こうも遊びのつもりだと思うぜ。多分お互い、他校の方が気が楽なんだよ」


「えぇ、やば……最近の高校生ってそんな感じなのか……」


 俺が思わず心中を口に出すと、柊が手をひらひらと左右に振った。


「いや? 普通に付き合ったりしてる方が多いと思うぞ。まぁ、人それぞれってことだな」


「ふむ、柊氏は誰かに告白して付き合って……みたいなのは求めてない感じでござるか?」


「んー、まぁそれも悪くはねぇとは思うが……めんどくせぇ」


 誰も言わないので、俺は彼に気になっていたことを聞くことにした。


「というか、お前は古賀とはどうなんだ?」


 柊はポテチに伸ばしていた手をピタリと止めた。


「? なんでここであいつの名前が出てくるんだ?」


 心底不思議そうな顔で彼は尋ねてきて、こちらも逆に困惑する。


「いや、だって最近仲良いじゃんお前ら」


 この旅行中にも、二人でいるところをよく見かけた気がする。

 橘と小田もうんうんと頷いている。


「……あー、いや。特に考えたことなかったな。というか、あいつをそんな風な目で見たことなかったっつうか」


 柊は風呂上りで少し湿った髪をつまんだ。


「俺さ、弟と妹いるんだよ。だからそれと同じ感覚で面倒みちまってたな……」


 確かに言われてみれば、柊のあれは兄ムーブだったかもしれない。


「傍から見てるとカップルが痴話喧嘩してるようにも見えたでござるが。……まぁまずは柊氏はこの辺にしとくでござるか」


「そうだね。まだまだ夜は長い、二周目に期待ということで、次は誰にしようか」


 それにしても、橘も意外と乗り気である。


「小田じゃね?」


「それだ」


 俺が言うと、橘がパチンと指を鳴らして同意した。

 小田がそんな俺達を見て苦笑する。


「えぇ……まぁ良いでござるが。特に話すことはないでござるよ? ご存知の通り、拙者オタクでござるし」


「いや、別にオタクは関係ねぇだろ。趣味が同じ奴ならむしろモテるだろうし」


「まぁ、それはそうかもしれないでござるが……。一般受けは悪いのでござらんか?」


 パリパリとポテチをつまみながら言う小田のその態度に、橘はピンと来るものがあったようだ。


「もしかして。誰か気になってる奴がいるのか?」


「……あー、それは」


「えっ、マジ?」


「おいおいおいおい! 全く気付かなかったぜ! 誰だよ!? もしかしてあの四人の中か!?」


 黙ってこくりと頷いた小田に、否が応でも場が盛り上がり始める。

 まじかまじかまじか!! と布団の上で謎の踊りを始める柊。

 シッ、静かに! 今は大事な話をしているんだ! とそれを注意する橘。

 にやにやと笑う二人と神妙な顔をした小田。


 一方の俺は内心の動揺がばれないように必死だった。

 俺の脳裏には二人の女の子の顔が浮かんでいた。


 もし、小田が、彼女達のどちらかを好きだと言ったら、俺はその時――どうする?


 今まで考えたこともなかった思考が頭を覆い、俺はそんな自分自身に愕然とした。


「……これは、その、誰にも言わないで欲しいでござるが」


「……!」


 コクコクコクコク! と俺達三人が首を縦に振るのを見て、小田は意を決したようにぼそりと呟いた。



「その。……ひ、姫野氏のこと、割といいかなーって」



「「「…………」」」


「……なんか、もとから拙者ああいう女の子が凄くタイプで」


「「「…………!!」」」


「きっかけはよく分からないけど、はっきり自覚したのはこの前の球技大会で、バスケの試合の後にすごかったねって声かけてもらって、それで……」


 皆まで言うな、とばかりに無言でガシッと小田の肩を掴んだ柊。

 橘はその隣でうんうんと頷いている。

 俺もどっと肩の力が抜けて笑ってしまった。


「なんでござるか! そのお主らの反応は!」


「いやいやいや。いいと思うぜ、姫野。性格も良いし、可愛いし」


「え。その言い方、もしかして柊氏も……?」


「あ、いや全然その気はねぇよ? 安心してくれ」


 小田はその言葉に安心したようにほっと息を吐いた。


「それは……正直ありがたいでござる。拙者では勝ち目がないでござるから」


 柊は不思議そうな顔をした。


「あぁ? んなことねぇだろ」

 

 俺も柊に同意した。

 整った顔立ちにすらりとした体型。部活に打ち込んでいるところも好感度高い人は多いだろう。それに性格も良いし。敢えて欠点を探すなら少し話すのが苦手で、自己肯定感が低めな気がすることくらいだろうか。


「でも、そうは言ってもあいつ競争率高そうだぜ。俺何人かあいつのこと好きな奴知ってるし」


 柊の言葉に小田が絶望的な表情をした。

 それからはどうしたら他の奴らより上手くいくか、という話になった。

 早速小田がはいっと手を挙げる。 


「拙者のアピールポイントは、誠実で一途なところでござる!」


「それ自分で言っちゃうんだね……」


「モテない男はだいたいそうだろ」


「えっ」


 柊がさらりと闇の深そうなことを言って、小田は手を挙げた姿勢のまま固まった。


 ブクマあざす。毎回書くのも無粋かなと思うので今回までにしておきますが、いつも励みにしてます。ありがとうございます。

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