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ぼっちが学年二代美少女に憧れた結果  作者: 豚太郎
後編 俺と面倒臭い彼女と必然の決別
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第45話 ナンパ




 夏を感じさせる匂いと、どこか懐かしい潮騒。





「――――じゃあ、いくよ?」



 かぁかぁと鳴くうみねこ。




「……せーのっ」




 電車に揺られること二時間余り、その後駅から歩くこと暫く。





「「「「「う! み! だー!」」」」」






 俺達は今、海に来ていた。











「……いやー。やっぱ海来たらこれだよね!」


 満足げに頷いている未来。

 砂浜には人がたくさんいる。

 叫んだ五人のお陰で、随分注目を集めているのが分かった。


「君ら羞恥心とかないの?」


 俺が言うと、柊は肩を竦める。


「そんなもん捨てちまえよ。旅の恥は搔き捨てだろ」


「思いっきり地元なんだよなぁ……」


 俺は辺りを見渡した。ないとは思うが、昔の知り合いがいたら面倒だな。


「いいね~海、久しぶりだな~」


 姫野は手をおでこにあてて砂浜を眺めている。


「結構人がいるでござるなー」


「まぁ夏休みだし」


「それより、早く泳ごうよ!」


「そうね。じゃあ着替えて砂浜集合でいいかしら」


 飛鳥の提案に皆が了解、と返す。


「ところで、今のうちに一応確認しておきたいのですが……やっぱり皆さん泳げるのですか?」


 恐る恐るといった様子で尋ねる古賀。


「あれ、もしかして泳げないんすか古賀さーーーん?」


「なんですか。そんなに偉いですか泳げることが」


 柊が煽ると彼女はぷいと横を向いて更衣室までとっと歩き出した。


「わりぃわりぃ。ちょ、機嫌直してくれって」


 それを追いかけて行く柊を尻目に、俺達六人はのんびりと歩いて行く。











「あっつ」


 水着に着替え裸足で外に出ると、日差しで熱くなった砂が足裏を焼く。


「女子は……まだ来ていないか」


「傘立てとこうぜ」


 柊の言葉に俺達はパラソルを立て荷物をそこに移動させた。


 柊は浮き輪を膨らませていた。俺が見ているのに気づくと柊は仏頂面をした。


「これ、古賀の荷物にあった」


 俺は思わず苦笑した。















「まぁ皆来るまで待つか」


 パラソルやシートなんかの設置も終わり、俺達はシートの上に腰を下ろした。


「後で遠泳競争しようぜ」


「お、いいな。負けた奴なんか奢りで」


「ふっ……五中の飛び魚と呼ばれたこの小田和也、そこらのチャラ男には遅れは取らぬ」


 正面にはキラキラと光る海。



 男四人で並んで座ってそんなことを話していると、横から声が掛けられた。


「ねぇねぇ君達。どこから来たのー?」


 そちらを見ると、笑顔で手を振っている女性達。

 俺は彼女達に見覚えはなく、3人を見ても首を横に振っている。

 知り合いじゃないのか。



 となると……ナンパか? 



 ……俺は我が生涯初の出来事に対する動揺を隠しながら彼女達を観察する。

 ふ、ふーむ。年は俺達と同じくらいか、少し上かな。

「えっと……」


「俺らは隣の県から来た。つか君らめっちゃ可愛いじゃん! ここ詳しいの?」


 小田が突然話しかけられ何と答えようか戸惑っていると、柊がそのうちの一人に話しかけ、あっという間に話を弾ませ始めた。


「そう、実はここ地元! ……って言ってもそんなに詳しくないけど。今日は遊びに来ただけだし」


「あ、そうなんだ。じゃあなんかここら辺でおすすめの観光スポットとかある?」


「えー!? ここら辺何にもない田舎だよー!?」


 いつのまにか物凄く自然に橘ともう一人の女の子が会話に混じっている。

 そして俺同様取り残されたかのように見えた小田だったが、


「わ~すっごい筋肉~。私好みかも~」


「……」


 甘い声を出した女の子にぺたぺたと身体を触られてあばばばばばばと思考停止している。





「……」

 

 俺は一人空を仰いだ。

 ……こいつらと一緒にいるんだから、ナンパを想定しておくべきだったか。

 いつも通りの爽やかさで周囲にキラキラした粒子を存分にまき散らしている橘や、既に何やら盛り上がっているザ・遊び人と言った風体の柊は言うまでもなく。

 海に入る為に眼鏡を外し意外なほど整った顔を晒した小田も、高い身長と部活で引き締まった身体と合わせて、まるで寡黙なイケメンのようだ。多分緊張して話せていないだけだが。


 そんなことを考えていると、そう言えば彼女らも四人いたはず、と思い出す。

 するとまさに一人残っていたその女の子と目が合った。

 大方同じようなことを考えていたのだろう、自然にお互い苦笑いした。


「私は君みたいな子の方が話しやすいかな。なんか気が楽」


 その四人目の女の子はそう言うと、くすりと笑った。

 彼女らの中では少し大人しめな雰囲気の人だ。

 よく見ると年も俺と同じくらいに見える。


「変わった趣味してんな。もしかしてゲテモノ好き?」


「え、そんなことないと思うけど。……なんとなく同類の匂いがするっていうか」


 そう言うと彼女は一歩距離を詰めてきた。


「わ、凄い。細いけど君も筋肉ついてる」


 俺は感心したように目を見開く彼女から視線を外した。


「……まぁ、これくらいは」


 最近走り込みの他にも筋トレをやらされたせいで筋肉は嫌でもついた。


「私、さやかって言うの」


 そう言って微笑む目の前の少女。

 ……え、こういう時って下の名前しか言わないの?

 それじゃ呼べないから教えてもらった意味ないんだが。

 とは言え、これはこちらも名乗る流れだろう。


「……あー、俺の名前は、」




「――何、してるの?」




 氷点下の声がした。


 思わずびくりと背中が震える。

 振り返ると、そこに立っていたのは俺の幼馴染。

 睨むような目をした彼女は水着の上からラッシュガードを着て、腕を組んでいた。


 さやかと名乗った少女は一瞬驚いたような顔をしたが、その後こてんと首を傾げた。


「……お友達? もしかして彼女さん?」


「それ、貴方に答える必要ある?」


 飛鳥の冷ややかな言葉を受けて、しかし少女は穏やかに笑っている。


「ごめんね、邪魔しちゃったみたいで」


 そして他の三人に声を掛けた。


「みんな、そろそろ行こうか。私達も早めに準備しないと場所取られちゃう」


 えー、と声は上がったが、それでもどうやら彼女の提案に乗るようだ。

 名残惜しそうにまたね~、と手を振る。俺達も口々に別れを告げる中、


「じゃあね……二宮君」

 

 そう言った彼女の声が頭に残った。


 違和感。


 しかしその正体を探ることは、大声でまた! と手を振る柊の声に中断させられた。






















 彼女らがいなくなると、飛鳥は腕を組んだままこちらに振り返った。

 何やら先ほどから虫の居所が悪そうな彼女。


「どうしたんだ?」


「別に……。貴方がナンパまがいの女にでれでれしていようと、全然怒っていませんけど?」


 あ、これ怒ってるやつだ。

 俺達の様子を横で見ていた柊がとりなすように言った。


「まぁまぁ、こういう出会いもあるだろ?」


「……そうね、勿論それを否定するつもりはないわ。別に貴方達が誰と仲よくしようと咎めるつもりはない。ただ……」


 彼女はそこで言葉を区切り、俺の方をちらりと見た。


「そこの男は別よ。間抜け面をした貴方に寄ってくる女なんて碌なものじゃない。どうせ詐欺にでも騙されるのがオチよ」


 わざわざ説明するのも煩わしい、と言わんばかりの早口で言う彼女。



「……その言い方はねぇんじゃねぇか?」



 やや低めのトーンでそう言った柊に、飛鳥は僅かに驚いた表情をした。

 しかし彼女は言葉を取り消す様子はない。

 二人に挟まれた俺は口を開きかけたが、丁度そこに女子三人が遅れてやって来た。


「おー、準備してくれたんだね」


「お待たせ~ありがとう~」


「ありがとうございます。……あれ、私の浮き輪が……」


 口々に感謝を述べる三人。


「……」


 途端姦しくなった空気に、柊は毒気を抜かれたように肩を竦めた。


「わり、ちょっと頭冷やしてくるわ」


 彼はそんなことを言って、海とは反対方向に歩いて行った。


 俺は慌てて彼を追っていこうとしたが、


「二宮」


 橘に呼び止められた。

 そちらを振り返ると、小田がピッと何かを放ってきた。

 パシリと受け止め確認する。五百円玉だ。 


「これで柊と飲み物を買って来てくれ」


 俺は了解、と彼らに背を向けて歩き出した。

 ブックマークありがとうございます。高まりました。ちなみに今回の飛鳥の行動にはちゃんと理由があります。

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