第44話 旅行出発
「荷物の確認はした?」
「おう。多分大丈夫だ」
一応もう一度だけ確認する。
その後リュックを背負い、飛鳥と連れ立ってアパートを出る。
外に出ると、雲一つない良い天気。
まだ朝だと言うのに気温も相当に高く、昼の暑さを予感させる。
飛鳥がアパートの部屋の扉にガチャリと鍵を掛けた。
「それじゃ、行きましょうか」
彼女の言葉に頷き、俺達は歩き出す。
桐谷にも言ったが、今日はいつものメンバーで一泊二日の旅行に行くのだ。
「まさか、行先が俺達の地元とはな」
「まぁここら辺で海と言えばあそこが一番有名でしょうし」
「俺は小学校の遠足以来かな」
「そうね。私も」
そんなことを話しながらまだ人のまばらな道を歩いて行くと、駅の改札前広場に到着する。
この学校近くの駅が今回の待ち合わせ場所だ。
人は少なく、知り合いの姿はすぐに見つかった。
もう来ているのは……姫野と橘、それに小田か。確か俺達二人以外は電車通学だった筈だ。
待ち合わせのまだ十五分前なのに、律義なことである。
「あ、飛鳥ちゃん達だ~、お~い」
手を振る姫野に飛鳥はおはよう、と返す。
「未来はまだ?」
「うん、まだ来てないよ~」
俺も彼らに手を軽く上げて挨拶した。
「うっす」
「おはようでござる」
「よう。無事起きれたな」
「当たり前だろ」
橘の言葉に俺はそう返したが、しかし確かに四月の俺ならまず起きることのできなかった時間だろう。
「……例の物はちゃんと持ってきたでござるか?」
「あぁ? ったりめぇよ」
俺は謎の江戸っ子口調で担いできたリュックを指さした。
「俺の育てた最強のポケモンでお前を倒す」
「ヌッフッフ、今晩お主の泣き顔を見るのが楽しみで仕方ないでござる……」
「抜かせ。……つかお前ら来るの早いな」
「まぁ運動部の癖でござるな。大会の朝とかこれくらいの時間でござるし」
「そういうこと。あれ? 運動部? そう言えば俺と同じ部活の奴がもう一人いなかったっけ?」
「ぐっ、うるせーな」
そんなことを言っているうちにまた電車が来たみたいだ。
降りてくる人の中に知り合いの姿を見つける。
あれは柊と……古賀か。
二人は何やら言い合いながら歩いてくる。
俺達に気づくと柊は手をうぇいと上げた。
「いやわりぃわりぃ。もう少し早く着く予定だったんだが……途中でこいつが迷子になってるの見つけてよ」
彼はそう言ってはやれやれと肩を竦めたが、古賀はつんとすました顔をしている。
「別にあなたがいなくても大丈夫でしたけど」
「嘘つけ。お前俺が止めなかったら反対方向の電車乗ろうとしてたじゃねぇか」
「あ、あれは……あなたを試したんですよ。道が分かっているかどうか」
「ほーう? なら俺はもう助けてやらねぇからな」
「結構です。一人で来れますもん」
まぁまぁ、と橘が間に入った。
「まだ時間になってないし、全然問題ないよ」
「そう言ってくれると助かるが……。つか、今何人いる? あと誰だ来てないの?」
柊に言われて、俺は辺りを見渡した。
今回の参加者はいつもの八人。
来てないのは……
「水瀬さんか。そろそろ時間になるけど……」
と、橘が右腕の腕時計に目を落とした時、
「……お待たせー!」
ホームの方から、パタパタと駆けてくる女の子がいた。
俺達のところまでたどり着き、ギリギリセーフと水瀬未来が息を吐く。
「珍し~ね、未来ちゃんがぎりぎりなんて」
「ごめんごめん、ちょっと手間取っちゃって」
えへへ、と笑いながら飛鳥の隣に移動する未来。
「よし、これで全員揃ったね。それじゃ行こうか」
橘の声で、俺達は改札を抜けホームへとぞろぞろと歩き出す。
「柊君お菓子持ってきたー?」
「あったりめぇよ! てやんでぃ! 電車のお供はこいつで決まりさぁ!」
「何で謎の江戸っ子口調なの!?」
「二宮氏の口調が移ったのではござらぬか?」
小田がそう言って未来の視線が俺の方を向き、俺と目が合う。すると、
「……っ」
何故か、パッと目を逸らされた。
「……そうなんだー! あ、そういえば飛鳥ちゃん!……」
そのまま飛鳥達と話し始める彼女。
「……?」
球技大会の打ち上げ以降、未来にたまにこういう態度を取られることがある。
なんか俺やらかしたっけなぁと記憶を探るが、特に思いあたらない。
何となくだが、別に嫌われているような感じでもないと思うし。
皆と一緒に電車に乗り込みつつ、俺は首を捻った。
こうやって友達と遊びに行けるようになって、俺のコミュ力も少しは成長したかと思えば。まだまだだなぁ、俺。
ブクマありがとうございます。感想もくれてもええんやで。




