表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼっちが学年二代美少女に憧れた結果  作者: 豚太郎
中編 俺と優し過ぎる彼女と球技大会
32/66

第28話 デート?

 俺は店の奥の方の席に案内された。水瀬は入り口の近くの椅子に座って雑誌を読んでいる。

 店内には俺の他にも数人の客が入っていて、客と美容師は親しげに話をしていている。

 来るか、来るか……!? と俺が間合いを見計らっていると、チャラ男改め店長が遂に話しかけて来た。


「つーわけで、今日はシクヨロ。店長っす。今日はどんな感じでキメてく?」


「えっと、あんまり良く分かんなくて。お任せって出来ます?」


「モチ、出来るっしょ。じゃ、そんな感じでやりまっしょい!」


 言って、店長は早速切り始めた。

 前の机には雑誌が置かれていたが、俺は特に興味も湧かなかったのでぼんやりと目の前の鏡を見ている。


「二宮君って言ったっけ?」


「あ、はい」


「未来っちって、学校ではどんな感じなワケ?」


 店長は水瀬の話を振って来た。なるほど、まずは共通の知り合いの話で軽いジャブ。これが美容師の会話テクか。


「そうですね、水瀬は人気者ですよ。明るくて、まぁ、可愛いし」


 改めて考えると、水瀬には欠点らしい欠点もない。完璧美少女と言っても過言ではないだろう。


「ほんとに、なんで俺なんかと一緒にいるのかって感じっすよ」


 いくら相談を受けたからと言って、ここまでしてくれる義理はないはずだ。

 俺が苦笑しながら少し本音を零すと、いつのまにか髪を切る手が止まっていた。 鏡越しに店長の顔を窺うと、今までうんうんと笑顔で相槌を打っていた彼は、真剣な顔をして言った。



「それはダメっしょ」



 え、と俺が聞き返すより早く、店長は続けた。


「俺なんかって君は言うけど、そうやって自分を卑下すると、君と一緒にいる未来っちも貶めていることになるっしょ」


「……ですけど、彼女にはもっと立派な奴が……」


「だから、そうじゃねぇだろ」


 俺がなおも反論しようとすると、それを遮るように店長は言った。

 先程までの砕けた陽気な声でなく、低い荒っぽい声で彼は言う。


「逃げてんじゃねぇぞ。あの子はお前を認めてんだろ。じゃあお前が、あの子に相応しい良い男にならずにどうすんだよ」


 言われて、俺は水瀬の方を見た。

 彼女は俺を認めてくれているのだろうか、それは俺には分からない。

 けれど、こうして今日俺を連れ回している時点で、俺のこれからに期待してくれているのだろう。

 俺は鏡越しに店長の顔を真っ直ぐ見つめた。


「すいません。注文変更してもらって良いですか?」


 何だよ、と店長が聞き返してくる。


「水瀬の隣に居れるくらいの男にして下さい」


 店長は呆れた様子でもう一度同じように、何だよ、と呟いた。


「それなら最初からそう言えってんだ。お前、顔の造り自体は整ってるからな。仕上がってから腰抜かすなよ?」






 それから1時間ほどして、店長が水瀬を呼んだ。


「未来っち〜、こんな感じでどうっしょ?」


「結構掛かったねー、ってあれ、二宮君は?」


 水瀬は何故か店長の横で椅子に座っている俺に気付かず、きょろきょろと辺りを見回した。

 店長が笑いながら言う。


「ここっにいるっしょー、ここ」


「おい水瀬、何の冗談だ」


 え、と固まった水瀬がぎぎぎ、と首をこちらに向ける。


「んん? その声は二宮君だけど、それがこのクールな感じのイケメンから聞こえるのは何で?」


「え、クールって、遠回しに楽しい時でも盛り上がれないオタクだって非難してるの?」


「その卑屈な感じはどう考えても二宮君……! え! 店長これやばいでしょ! 整形した!?」


 店長は苦笑いで言った。


「いや、オレっちの力も勿論あるんだけど、実際ここまで上手くいくとは思わなかったっしょ……」


 そんな上手くいってるのか、これ。俺は鏡を見た。

 髪は確かに今まで邪魔くさかった前髪が整えられて、店長は良い仕事をしてくれたと思うが、顔付き自体はいつも見慣れた自分そのものだ。


「自分じゃ良く分かんねぇな……」


「え!? じゃ、じゃあ飛鳥ちゃんに見てもらおうよ!」


 水瀬はそう言って俺の肩に手を置き、顔を近づけてスマホのシャッターを切った。

 彼女の髪からふわっとシャンプーの良い匂いがした。

 そして水瀬はぱっと俺から離れ、スマホをいじった。飛鳥に送信したようだ。するとすぐに返信が来た。


「何々〜、『良い感じの髪型ね』……え!? これだけ!?」


 水瀬は驚いているみたいだが、まぁ飛鳥ならそんなもんだろう。あいつが髪型を変えても、俺もそれくらいの反応しかしたことないし。


「ほら、水瀬のリアクションがオーバーなんだよ」


「絶対そんなことないと思うんだけどなぁ……」


 水瀬は未だ釈然としないようでうんうん唸っていたが、俺は会計の為に席を立った。


「え、これだけで良いんですか?」


「うん良いよ良いよ〜。未来っちの紹介だからね。未来っちにはお世話になってるから。WIN-WINってやつ?」


 水瀬はこの店でたまにカットのモデルなんかをしているらしい。


「ありがとうございます……口調、いつもそっちなんですか?」


 俺が気になったことを聞くと、店長は慌てたように周囲を見た。会計の近くに俺以外の客はおらず、水瀬も店の扉の近くでスマホを見ている。


「お前な、察しろよ。ここはお洒落な美容室だぜ? 陽気な兄ちゃんじゃないと客が逃げちまうだろうが」


 普通、自分の店をお洒落って言うか? と俺は思ったが、確かにお洒落ではあるので黙って聞く。


「まぁ、普段はあんなこと言わねぇし、客が何言ってても話合わせるくらいはやるんだが。さっきも言ったが、未来ちゃんには世話になってんだ。あの子が良い子なのも知ってる。だから、ちょっと余計な説教をしちまった」


「いえ、身に染みる話でした」


 そうか? と店長は首の後ろに片手をやりながら言った。


「なんにせよ、お前は見た目は相当見違えたはずだ。後は、お前が未来ちゃんの彼氏として相応しい行動をするだけだな」


 どうやら店長は俺のことを水瀬の彼氏だと思っているみたいだ。実際は偽なのだが、彼氏の部分を友達に置き換えれば、この人の言うことは最もだ。

 俺は店長にまた来ます、と言って頭を下げて、水瀬と一緒に店を出た。

 店長はありがとうございましたー! ウェーイ! と言いつつ、店の外まで見送ってくれた。






 その後も水瀬に連れられ服屋と靴屋を見て回り、それぞれの店で水瀬おすすめの品をいくつか見繕って貰って購入した。そのまま身に付けたので、家を出てから昼までですっかり俺は様変わりしたと言える。

 

 さて、と昼飯に入った喫茶店で水瀬は言った。


「取り敢えず一区切りついたね。これから何処か行きたい所ある?」


「やっぱり家じゃないか?」


「流れるように帰ろうとしないで。それに、今日の目的は二宮君のイメチェンだけじゃないんだよ」


「そうなのか?」


 朝はそれしか言っていなかったと思ったが。


「そうなの。本来の目的はねー……」


 水瀬が言いかけている所に店員がデザートのパフェを届けに来たので、話を中断した。

 俺は注文していないので、水瀬が頼んだみたいだ。


「あ、ありがとうございます! うわー、美味しそー!」


 目をキラキラさせる水瀬に店員はにっこり笑った。


「あ、写真撮って貰って良いですか?」


 そう言ってスマホを店員に渡して、向かいに座っていた水瀬は俺の隣に椅子を移動させて座った。

 彼女のさらさらした髪が俺の肩にかかって、心臓に悪い。


「じゃあ撮りますねー、あはは、彼氏さん顔硬いですよー」


 そういえば、服屋や靴屋でも水瀬の彼氏だと思われていた。俺では水瀬と釣り合っていないと思うのだが、美女と野獣とかそんな扱いなんだろうか。いや、見栄張りました、野獣を名乗るほどのガタイもないです。すいません。

 俺がそんなことを考えて現実逃避していたが、水瀬に机の下で小突かれたので、努力して笑顔を作った。


 なんとか写真を撮ることに成功し、店員が去っていったので俺は脱力し、ずるずると背もたれにもたれかかった。


「あ、姿勢」


 ささっと元の席に戻った水瀬が言う。


「へーへー」


言われて俺は背筋を伸ばした。


「よし! それで、話は戻るけど」


「あ、今日の目的の話だよな」


「そう。今のとかが目的なんだよね」


「今の?」


 写真を撮って貰ったことか? 俺は水瀬の事情を考えて納得した。


「あ、証拠写真か」


「そういうこと。こういう感じで仲をアピールしていくんだよ」


「周到だな」


「そうでもないよ? 皆上げてるし」


 そう言ってスマホをひらひらと振る水瀬。


「マジか」


 皆上げてんのか。俺全然知らないんだけど。俺って皆の中に含まれてないの? 


「でも、一回上げたら続けないと、別れたのかとか勝手に推測されちゃうんだよね。だから定期的に付き合ってもらうことになるかも、ごめんね!」

 

 水瀬は申し訳なさそうな顔をしている。

 俺は頭を掻こうとして、さっき整えて貰ったことを思い出して、やめた。


「まぁいいよ。暇だし」






 喫茶店を出て、水瀬の提案でカラオケにやって来た。


「あー、カラオケって確かにリア充行ってそうな雰囲気あるわ」


「全然普通に行くと思うけど……え、待って、もしかしてカラオケ来たことない?」


「おう」


 自慢じゃないが、一度もない。本当に自慢じゃねぇ。


「ええー、そんな人居るんだ……いつも友達と遊びに行く時とかどうしてるの?」


「ナニヲイッテルンダ? ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ」


「人の心を失う程の衝撃!? ごめんね!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ