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ぼっちが学年二代美少女に憧れた結果  作者: 豚太郎
中編 俺と優し過ぎる彼女と球技大会
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第24話 意外な提案

 放課後になると、生徒の多くは部活に行く。

 柊は部活はないが、彼女と遊びに行くと言ってさっさと帰ってしまった。


 特にすることがない俺も家に帰り、録り貯めたアニメを見ていた。小田が勧めて来たそれは中々面白く、明日感想を言い合うのが楽しみだ。


 スマホがピロンと鳴る。見ると橘から例の定食屋の詳細が来ていた。この辺りにあるみたいだし、早速今日行ってみようか。

 部活中の飛鳥に連絡を入れると、丁度休憩中だったのかすぐに既読が付き、暫くして了承の返事が来た。

 部活が終わったらそのまま行くと来たので、飛鳥に地図を送り向こうで合流することにした。


 部活の終了時刻まで待って家を出ると、辺りはもうすっかり暗くなっていた。

 夏に入る前のひんやりとした風に心地良さを感じながら、俺はスマホで道を確認しつつ、定食屋まで歩いていた。

 すると飛鳥から連絡があった。


『未来も一緒で良いかしら?』


 彼女らしい簡潔な文だ。

 俺は特に断る理由もなかったので了承した。


 目的地に到着した。2人はまだ来ていないようだ。

 店の前でしばらく待つ。外から見ると店の雰囲気は落ち着いていて、しかし活気が無いわけではなく店内からはなんとも良い匂いが流れてきていた。


 俺がぼーっと立っていると、水瀬と飛鳥がやって来た。

 俺はおう、と片手を挙げて挨拶する。


「こんばんは」


「こんばんは。ごめんね、急に来て大丈夫だった? 言ってくれれば帰るからね」


 ……飛鳥はいつも通りだが、水瀬の様子が明らかにおかしい。

 部活終わりで多少の疲れはあるとはいえ、ここまで疲れ切った表情を見せるのはただ事ではないだろう。

 俺は飛鳥に視線で問うと、彼女は軽く頷いた。


「とりあえず中に入りましょう。話はその後で」





 店内にはカウンターが十隻ほどと、テーブル席が五つ見えた。二階もあるようなので、意外と席は多そうだ。

 入るとすぐに、人の良さそうなおばさんがテーブル席まで案内してくれた。

 メニューはどれも美味しそうだったが、俺はもう何を頼むかは決めていた。

 2人も決めるのを待っておばさんを呼ぶ。


「焼肉定食一つ」


 少し食い気味になってしまったが、おばさんは特に気を悪くした様子もなく注文を復唱した。


「私は秋刀魚定食で。未来は?」


「あ、えっと……私も同じので」


 おばさんが注文を取り終え、お冷やを置いて去っていくと、テーブルには沈黙が降りた。水瀬は注文したきり、黙って飛鳥の隣で俯いている。

 俺は飛鳥の方を見て言った。

 

「それで、水瀬はどうしたんだ?」


「昼休みの、貴方も見たでしょう。あれのせいよ」


「……何があったんだ?」


 俺が言うと、水瀬は俯いたまま呟くように言った。


「……私、水沢君に告白されたの。好きです、付き合ってくださいって」


 水瀬の口から直接そう聞かされて、俺は知らず息を呑んだ。予想していたはずなのに。


「だけど、断った」


「……そうか」


 水瀬の言葉を聞いて、何故かほっとしている自分に気づく。いや別に、俺は水瀬のこと好きでもなんでも無いけどね。しかし、では何故彼女は落ち込んでいるのか。


 俺のそんな考えが顔に出ていたのか、水瀬は俺の方を見て、寂しそうに笑った。


「結構辛いんだよ? そういうことされると、もうただの友達じゃいられなくなるから」


 ……なるほど。俺は自分がこれまで恋愛に縁の無い人生だったからか、告白を考えたことは無かったし、まして告白される側の気持ちなど考えてもみなかった。

 しかし確かに、自分に好意を持ってる人を傷つけるのは辛いものだろう。水瀬は特に、人に気を遣う性格だから尚更だ。

 

「しかも、その男は諦めた様子もなかったらしいし。困ったものよね」


 飛鳥はそう言ってふんと腕を組んだ。


「最近そういうことが多くて……。私、何か間違ってるのかな。ちゃんと線は引いていると思ってたんだけど」


 そう言う彼女は、余りにも脆く弱っているように見えた。

 もしかしたら以前から悩んでいたのかもしれない。

 そういえば、と俺は彼女を助けた日を思い出す。今から思えば、元気の無かったあの時も同じ状況だったのかもしれない。










 丁度おばさんが食事を運んできて、沈んでいた空気も少し和らいだ。


 俺の頼んだ焼肉定食は、写真通り量もあり美味しそうだ。秋刀魚の方も味噌汁や副菜が充実していて、身体に良さそうな感じがする。


 いただきます、と三人で手を合わせて食べ始める。一口食べて、肉の旨味が口に広がり思わず顔が綻ぶ。


 一方飛鳥は味噌汁を口にして、何故か顔を強張らせていた。が、食べるのをやめることはなかったので不味いということではないだろう。


 美味しい食事というのはそれだけで元気が出るものだ。食べ終わる頃には、水瀬も少し普段の調子が戻ってきていた。





 食後のお茶が運ばれてきて、それを啜りながら俺は考えた。

 水瀬とは友達だ。彼女が困っていることがあるなら力になりたい。



 まず、誰とでも分け隔てなく優しい水瀬のような女子がモテる、ということは間違いはない。


 しかし彼女はその気のない男子と二人でどこかへ出かけるだとか、そういうことはしないのだと飛鳥が以前に言っていた。

 

 彼女は先ほどちゃんと一線は引いていた、と言っていたし、おそらくこれまではそれで問題なかったのだろう。


 だから問題があるとすれば、それは彼女の最近の変化にあるのかもしれない。


 彼女には以前から少し、異性との距離感が近いと思うことが多かった。


 それは高校生としては年不相応だけど、多分少し前までは、もっと彼女の容姿は幼かったのではないか。それで以前は男子も彼女と気軽に接することが出来ていたのだろう。

 だが高校に入り、そして二年生になった彼女が依然と同様親し気な態度で話しかけてくれば、どうなるか。


 ……勘違いしてしまう困ったさんが大量発生するのもやむを得ないのではなかろうか。

 俺は自分もそうならないように改めて気を引き締めた。俺と彼女はただの友達。……あれ、ただの友達って響き、まるで友達が当たり前にいるかのような発言よな。俺も成長したもんだ。




 閑話休題。


 では彼女の言動を今変えてもらえば、それで問題は解決するだろうか。

 そうではない気がする。

 今までのイメージってものがあるし、それになにより。


 彼女に俺からそれを言いたくなかった。

 俺も彼女の優しさに救われた一人なのだから。

 礼と言って彼女が焼いてくれた世話のお陰で、俺は今こうしてここにいられている部分はあった。 

 

 だから、そうではない方向で。


 俺はその後、一つ案が浮かんだので水瀬に言ってみる。


「告白が無くなればいいんだよな……彼氏が出来た、とか言っとけばいいんじゃないか?」


 水瀬はうーんと唸った。


「でも、詳しく聞かれたらすぐバレそう……写真見せてとか言われたら」


 確かに。水瀬に彼氏が出来たなんて言ったら、どんな相手か気になる奴は多いだろう。


「何か良い案ないか?」


 俺は飛鳥を見る。水瀬も縋るような瞳を向けた。

 飛鳥は少しの間考える素振りを見せたが、しばらくして言った。


「一つ思いついたわ。これが上手くいけば、未来は告白されることが無くなるでしょう」


「ほんと? どんなの?」


 水瀬は飛鳥の方に身体を向けた。


「そこの男が言ってたのと同じ。彼氏がいるって言えば良いのよ」


「おい、それは今却下されたぞ」


「相手が居ればいいのでしょう? 貴方が未来の恋人役をやるのよ」


「え?」


 俺は予想外の発言に口元に湯呑みを運びかけていた手を止めた。

 冗談だろ、と思ったが水瀬は真剣に受け取ったようだ。


「……それなら確かに告白はなくなるかも知れないけど。でも、二宮君に悪いよ」


「この男には仮とはいえ未来の彼氏役なんて、望外の幸運でしょう。好きな相手もいないのでしょうし」


 いやいるかもしれないじゃん。いないから何も言わないけど。


「いや、俺だと流石に不味く無いか? 嘘を疑われそうな気がするんだが」


 最近までほぼ毎日遅刻して週休3日を宣言していた奴と、クラスのアイドル水瀬未来だぞ。


「そうかしら。最近貴方達教室でもよく話しているし、不自然ではないと思うわよ」


 飛鳥の言葉で、俺は昼休みに柊に言われたことを思い出した。

 意外とそんなものなのだろうか、あっでも、柊はその後否定してたわ。

 

「でも……そんな迷惑は掛けられないよ……」


 なおも躊躇いを見せる水瀬。

 ここで俺が迷惑じゃないと言っても、きっと彼女は納得しないのだろう。


 だったら、と俺は口を開く。


「あー、せっかくの高校生活、彼女作ってイチャイチャしてぇ~」


 飛鳥は突然の俺の挙動を見て一瞬心底馬鹿にしたような視線を向けたが、一応頷いた。


「そうね、貴方には到底有り得ないことでしょうけど」


 いざ人から言われると少しクるものがあったが、飛鳥に意図は伝わったようだ。


「げっへっへ……お嬢ちゃん、俺の彼女になってくれるかい? なぁに、ちょっと手を繋いでくれるだけでいい」


 俺は出来るだけ悪そうにニヤリと笑った。いつもの水瀬の笑い方みたいに、馬鹿っぽくなってないといいが。しかし、これで『水瀬と付き合う』ことは俺の希望になった。そんな俺の意図が伝わったのか、

 

「……ありがとう。それじゃあお願いしていい?」


 水瀬は湯呑みを両手で包み、少し困ったような顔をしながらも頷いてくれた。














「…………手を繋ぐだけ……想像以上にピュアね……」


 うるせぇわ。こちとら彼女なんて出来たことないんだぞ。お前が一番よく知ってんだろ!

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