表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼっちが学年二代美少女に憧れた結果  作者: 豚太郎
前編 クズと中間テストと学年二大美少女
23/66

第21話 かんぱーーーーい!!

 受付で部屋を教えてもらい、二人で廊下を歩いていくと。


「あ! おーい、こっちこっち!」


 部屋の前でスマホを見ていた水瀬がこちらに気付き、顔をパッと明るくして手をぶんぶんと振りながら近付いて来た。


「2人ともようやく御到着か! ……ん、飛鳥ちゃん何か顔赤くない? 何かあったの……ってやめて、髪の毛掴まないでー!」


 何故か焦った顔をした飛鳥にアホ毛を掴まれ、あうあうと抵抗する水瀬だったが。

 なんとか身を捩って逃げ出すと、髪をささっと手櫛で整えてからにやりと笑った。


「……ごほん! さて、では2人をパーティへとお連れしましょう。主催はこの私、水瀬未来! ぷれぜんてぃっどばい水瀬!」


 彼女の背後、扉の向こうからは男女の騒ぎ声が聞こえる。

 既に随分、盛り上がっているみたいだ。


「あー、やっぱ俺はいいよ、誘ってもらってなんだけど。わざわざ参加して空気凍らせることもない」


 俺が言うと、水瀬はうーんと首を傾げた。


「そんなことないよって私が言っても、信じてくれなさそうだしなぁ。……じゃあ、本当にそうなるか試してみよっか?」


 そう言って。

 彼女はにやりと笑って、扉を開けた――。
















「みんなーー! 2人とも来たよーー!」


「あ。前川さん来てくれたんだ……」


「やば、まって私めっちゃうれしいんだけど」


 やや暗い室内から飛んでくる、飛鳥の到着を喜ぶ女子の声。

 これは想定通りだ。飛鳥が若干驚いたようにぽかんとしているのが不可解だったが。

 

 しかし。

 続いて聞こえて来た声に、俺は耳を疑った。



「二宮氏も、よければこっちに来るでござる!」


「二宮最近めっちゃ頑張ってたよな! こっち来いよ、ドリンク好きなだけ飲ましてやる!」


「お前それさっき調合失敗した奴じゃねぇか。おい二宮ー、今のは冗談だから早く座れよー」



 …………。

 ………………え。


 呆然としながら、俺は飛鳥と手近な席に座った。

 あっという間に飲み物が隣から渡ってくる。


「あ、ごめんコーラで良かった? ダメだったらとりあえず乾杯だけして? 後で私が飲んどくからさー?」


「あ、ああ…………コーラで、いい」


 正面に座った女の子が親しげに話しかけて来て、驚きに声が詰まる。


「よっしゃ、私二宮っちは絶対コーラだと思ったんだよね!」


「――ん、んんっ!」


 彼女が笑って親指を立てて来ていて、反応に一瞬迷ったが。

 その時、俺の後に続いて端っこの席に座った水瀬の咳払いに注目が集まる。


「さて、お集まりのみなみなさま、乾杯の準備はよろしいでしょうかー!?」


 おっけー! だの、はやく始めろよーだの様々な野次が飛び交う。

 正面の彼女も、いえー! と楽しげにグラスを持ち上げていた。


「よっし、じゃあ、行くよーー!?」


 少し迷ったが俺も、目の前に注がれたコーラのグラスを手にとって。


「中間テストお疲れ様でした!! せーのっ、かんぱーーーーい!!」


 皆と一緒に上に掲げ、呟いた。


「「「かんぱーーい!!」」」

















「二宮っちさー、今回めっちゃ頑張ってたよね」


 さっきコーラを渡してくれた女の子が話しかけてきた。

 確か名前は、山﨑。

 ギャルっぽい見た目をした少女で、それが原因というわけじゃないが、今まで話したことはなかったと思う。

 というかだいたいの奴は話したことない。


「二宮っちって、最近までぶっちゃけ勉強とか全然してなかったっしょ?」


 俺が頷くと、あは、と笑って山﨑は続けた。


「私もさ、あんまり勉強してる方じゃなくって、友達と遊んでたりした方が楽しーし?」


 彼女は巻いた金髪を指先でいじりながら言う。


「でも、最近の二宮っちを見てて思ったんだ。私もがんばろって。……だから、ありがと」


 そんなことを言った彼女が、俺が驚いて何も言えないでいるうちに、ぐいっと体をこちらに寄せてきた。……陽キャには普通の距離感なんだろうが、初心者にはちょっと厳しいです。


「ね、よかったらちょっと話さない? 私、二宮っちに興味あるな」


「あ、ああ。もちろんいいよ。えっと……」


 と、俺が答えかけたそのとき。

 室内に大音量で音楽が流れ始めた。

 最近流行りのアイドルソングみたいだ。

 見ると、タッチパネルを操作したらしき飛鳥が水瀬にマイクを渡していた。


「おっ! この曲選ぶとは、早速私をご指名かな!? 飛鳥ちゃん!」


「……そうね、一曲いってもらえるかしら?」


「おっけ! じゃあ僭越ながらこの水瀬未来、歌います!」


 そしてノリノリで歌い始める水瀬。

 誰かが音量デカすぎ! と叫ぶ。

 女子が何人か水瀬と一緒に踊り始めた。

 そのうちの一人が、山﨑に声を掛ける。


「めいー! 踊らないのー!? この曲好きっしょー!?」


「……残念。ちょっと行ってくるね」


 友達に呼ばれた山﨑はまた今度、と笑って俺の隣から離れて行った。


 















 カラオケを歌い始めたことで、席を自由に移動する雰囲気が出来た。

 水瀬と飛鳥は少し離れたところで二人で話しているみたいだ。

 1人残された俺がちびりちびりとコーラを飲んでいると、橘と、それと見覚えのある(クラスメイトだから当たり前か)二人の男子を連れて俺のところにやって来た。


「二宮! 今日は来てくれてありがとう」

 

 橘は相変わらず爽やかだったが、いつもより少しはしゃいでいる感じがする。こいつもテストが終わって浮かれているのかもしれない。


「おう、まぁ誘われたからな」


「え? じゃあ今までも誘ってたら来てくれてたのか?」


 そう問われて、言葉に詰まる。


「あー、いや、それはないな。今日は飛鳥に逃げ道を塞がれたから来ただけだ」


「ははっ、そっか。そりゃしょうがない」


 橘と話していると、何故か他の2人は驚いた顔をしていた。

 俺が怪訝な顔をして2人を見ていることに気付いた橘が、くっくっと笑った。


「ほら、だから言っただろ。二宮も普通に話せるって」

 

 え、どういうこと? 


「いやいや、二宮氏は教師がいくら怒鳴っても、何度呼び出されても、翌日には平気な顔で遅刻してくる男でござるよ?」


「まともな神経してたらそんなことできねぇよな。あ、いや良い意味でな?」


 そんなことを言う二人。


「おい、ちょっと待て、これはどういうことだ」


 堪え切れず橘に尋ねると、橘は未だに笑いながら答えた。


「そのまんまだよ、皆はお前に興味がなかった訳じゃないってことだ」


 …………。

 じゃあ。

 壁を作っていたのは、俺の方だったってことか。


 改めて、ここに集まっている奴らを見渡す。

 ……こうやってクラスメイトたちの顔をちゃんと見たのは、高校になって初めてかもしれない。


「……なんか色々勘違いがあったみたいだけど、俺は二宮誠。どこにでもいる普通のゲーム好きだよ。これからよろしく」


 多分、どこにでもある自己紹介。

 だけど俺にとっては少しだけ違った感慨を感じながらそう言って、軽く頭を下げる。

 すると2人は一瞬顔を見合わせた後、ぷっと笑って口々に話しかけて来た。


「俺は柊。お前最近マジで熱かったよな! 俺も勉強頑張ろうかと思ったぜ」

 

「拙者は小田と申す。趣味はゲームと漫画とアニメとラノベと……」

 



















 結局。

 それから打ち上げはあっという間に終わった。


「じゃ、またねー!」


 水瀬と飛鳥が、店の前で手を振って友達に別れを告げている。

 俺も橘達に軽く手を挙げて挨拶した。


「それじゃ、行こっか」


 水瀬のその声に頷き、3人で歩きだす。

 

 少し歩いた後、水瀬がスマホを取り出し時刻を確認しつつ言った。


「ね、まだちょっと時間早いし、どこか寄ってかない? さっきは結局3人であんまり話せなかったじゃん!」


 俺と飛鳥は顔を見合わせたが、2人とも特に用事もなかったので了承する。




















 俺達が選んだのは、見覚えのある洒落たカフェ。

 そこは2週間前のあの日、俺と水瀬と2人で行った場所だった。


 今度は然程躊躇せずに店に入ると、あの時と同じ店員が席に案内してくれた。

 ……あれから俺は、どれだけ変われただろうか。

 注文をした後、正面に座った水瀬がにこにこと話しかけてくる。


「ね! 二宮君! 打ち上げ、楽しかったでしょ!?」


「……おう。楽しかった」


 彼女の質問に、今は不思議と素直に答えられた。

 そんな俺を見て、水瀬の隣に座った飛鳥が穏やかに微笑む。


「良かったわね。橘君達とも仲良くなれたみたいだし」


「……そうだな」


 少し照れくさくなって彼女達から視線を外し、店員が注文を運んでくるのを待つ振りをした。







 注文が届いてから、暫く経って。

 今は女子が二人で話していて、俺はそれに適当な相槌を入れながら聞いていた。

 そうしながらこっそりと、改めて目の前の女の子達を見る。

 この長くて短かった二週間。

 彼女らには、本当に世話になった。

 

 すると。

 2人は俺が見ていたことに気付いたみたいだ。


「やだ、飛鳥さん。二宮君ったらあんなにこっちを見つめちゃって、照れますわ」


「本当にね。でもしょうがないわね、目の前にこんなに可愛い女の子が2人もいるんだもの」


 おどけてくすくすと笑う2人に向けて、出来るだけ真摯に言った。



「あのさ、今まで本当にありがとう」



「二人の俺はちょっとはまともな生活が出来そうだ。今日の打ち上げでクラスの奴らともやっていけそうな気がした。……水瀬、助けた礼としてはこれで十分だ。これからはもうこうやって俺に構わなくていい。今までありがとな」


 ずっと言うべきだと思っていた言葉を伝えて、肩の荷が下りたように感じた。


 おそらく。

 かつてこの場所で話していた彼女の『助けてくれたお礼』というのは、『俺の社会復帰を手助けすること』で間違いないだろう。

 俺に面と向かっては言い辛いから、秘密だと言ったのもそれで説明がつく気がする。


「「…………」」


 だけど、何故か。

 最初は嬉しそうに聞いてくれていたように見えた2人だったが、途中から悲しそうな顔をし始めていた。


「……なんで。そんなこと、言うの?」


 顔を俯かせた水瀬が、感情の読めない声で呟く。


「え? そんなことって?」


 訳が分からず聞き返すと、彼女は悲しそうに目を伏せ、それきり何も言わずにそっと隣の飛鳥に抱きついた。

 俺の幼馴染はそんな水瀬をよしよしと慰めながら、こちらに向かって代わりに言った。


「『もう俺に構わなくていい』ってところ。……貴方、私達が同情で貴方と一緒にいるとでも思っていたの?」


 水瀬は飛鳥の胸に顔を押しつけたままぼそりと言った。


「……始まりは、確かにそうだったけど。でも今はもう私は二宮君とは友達だと思ってたから、一緒にいただけなのに。二宮君は、そんな風に思ってたんだ」


「…………ッ!?」


 彼女の呟きを聞いて、俺はぶん殴られたような衝撃を受けた。

 そうだ。

 俺と彼女は、友達だったはずなのに。

 俺はまた、肝心なところで臆病になって、あんな言い方をしたんだ。

 そうしていれば自分は傷つかずに済むから。

 けれどそれでは、彼女の気持ちを踏みにじっているも同然だ。

 罰が悪くなって、ガシガシと頭を掻く。


「……あー、ごめん。違うんだ。さっきのは頼むから、聞かなかったことにしてくれ。……その、俺もお前のこと、友達だと思ってるから。……つまり、だな。……これからも、よろしく」


 なんとか、搾り出すように紡いだ俺の言葉を聞いて。

 水瀬はやはり飛鳥に体を預けたままだったが。

 少しして、ちらと俺の方を見てうん、と頷いてくれた。

 

















 それからは、なんとも言えない空気がテーブルに漂っていたが。

 暫くして、そうだ! と水瀬が鞄をごそごそと漁り、何かを取り出した。


「……これは?」


 唐突な行動に訳が分からず尋ねると、彼女はふふんと胸を張った。


「ストラップだよ! 勉強会お疲れ様記念ってことで、皆でお揃いのやつ付けようよ!」


 水瀬の手には3つ同じストラップが握られていた。


「これは……」

 

 思わず、同じ言葉を繰り返してしまった。

 ストラップを揃いで付ける気恥ずかしさはあるが、それはこの際良いとしておこう。

 問題は、ストラップのデザインにある。


 めちゃくちゃダサくないか、これ?


 俺の感性がおかしいのかと飛鳥の方を見ると、やはり顔を若干引きつらせているのが分かって安心した。いや何も安心は出来ないけど。

 視線で素早く会話を交わす。


(これでいいのかよ……)


(しょうがないじゃない、あんな顔されちゃ……)

 

 飛鳥の視線を追って、その隣を見ると。



 水瀬がいかにも嬉しそうな顔でお揃いお揃い〜と口ずさみながら、早速ストラップの一つを鞄に付けようとしていた。



 …………。


(……やむを得ない、な)


(ええ、やむを得ないわね)


 俺達はどちらからともなく笑い出しながら、ストラップを付けるために、それぞれの鞄を手に取った。



<クズと中間テストと学年二大美少女 了>

・現在のステータス(10段階)


 勉強:4 運動:6 コミュ力:4 体力:4 見た目:3


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ