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ぼっちが学年二代美少女に憧れた結果  作者: 豚太郎
前編 クズと中間テストと学年二大美少女
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第15話 職員室で

 翌日。今日は金曜日だ。


 今日行ったら休みだ! いけるいける俺ならできる!  ファイト! 私! と自分を励まして朝から登校した。


 授業は相変わらず眠い。理解できない話を延々聞くのはもはや修行に近い。

 俺が修行僧として徳を積んでいるうちに放課後になった。


 荷物を持って図書室に行くと、既に二人は席に座って勉強していた。やだ、私の意識、低すぎ……? 


「ごめんなさい、1つお願いがあるのだけど」


 俺が飛鳥の隣に座ると、飛鳥が珍しく俺に頼みごとをしてきた。 


「担任に頼まれたプリントを提出するのを忘れていたの。悪いけれど、代わりに出してきて貰っても良いかしら」


 見ると、飛鳥は水瀬に教えている最中みたいだった。

 水瀬はちょっと慌てていた。


「えー!? そんなの全然そっち優先してくれればいいよ!?」


「あーいいよ、まだ始めてないし。ちょっくら行ってくる」


 水瀬は飛鳥越しに俺に申し訳無さそうに両手を合わせていが、俺は気にしなくていいと手を振って、プリントを持って職員室に向かった。















 職員室に入ることは、普段の俺にとっては負け犬の烙印に等しい。遅刻がばれて手続きをする時にしか来ることがないからだ。

 しかし今に限っては違う。俺は堂々と扉を開けた。


「失礼します! 2年B組、二宮誠! 我が担任にプリントを届けに参上仕った!」


 俺がノリノリで口上を述べていると、周りの教師が迷惑そうに見てきたので、普通に入ることにした。


 担任の机まで行くと、担任は椅子にだるそうに座ってPCを見ていた。そして俺に気づいてもPCから目を離さない。


「あー、前川に頼んでたやつか。さんきゅー」


 そう言ってプリントを受け取りつつも、かちかちと右手はマウスを操作している。


 先生の仕事って大変なんだなぁと思いつつちらっと画面を見た。

 艦○れだった。


「あんた職員室で何やってんだよ!」


「おいおい、職員室で大声出すなよ。モラルがないぞ」


「あなたにだけは言われたくないです!」


「心外だな。いつだって私は若者を導いているだけだよ」


「うわ! 曖昧なこと言って誤魔化す気だ!」


「しかし、最後に道を選ぶのは君達だ。私に出来るのは、ほんの少し背中を押してあげることだけ。もどかしいと思うときもあるが、君達を見守るのが仕事だと思っている」


「なんか良い話風に昇華された!」


 プリントを渡して図書室に戻ろうとすると、担任は気怠げに頭をがしがしと掻いた。


「……あー、お前、最近どうした。授業寝なくなったじゃないか」


 担任にそう言われ俺は先生の方に体を向け直した。


「はい、これからは真面目にやろうかと思いまして」


「みたいだな。まじウケる」


「え? 今の話にウケる要素あった?」


「そんなことはいい。それより、ひとつ聞いていいか? 何故急にやる気になった? 私の話は聞こうとしなかったのに」


 担任の言葉に俺はうっと返答に詰まる。


「いや……それは本当に申し訳ないと思ってます……」


 思えば、この人は最初から俺を気にかけてくれていた。

 担任はめんどくさそうに手をひらひらと振る。


「あー、べつにいいんだそれは。もう済んだことだ。それで何なんだ、やる気になったきっかけは?」


 担任にそう問われて、俺はこれまでのことを思い返した。

 


 ――そして、気づいた。


 

 ああ、と俺は小さくため息をこぼす。


「別に……何でもないっすよ。ただの気まぐれです」


 素っ気無く返したつもりだったが、担任は何故か表情を緩めた。


「まぁ……お前はそんな奴だよな」


 それから、ふっと真剣な顔に戻って言う。



「私に出来るのは、ほんの少し背中を押してあげることだけ。もどかしいと思うときもあるが、君達を見守るのが仕事だと思っている。……まぁなんかあったら言えよ」



 ……全く、この人には勝てる気がしない。

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