表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
教祖転生≠The story of a lie≠  作者: 新月 望


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/100

第八十二話『混血』

 日の教団に生まれて二千年。俺は太陽の女神と人間の間に生を受けた。髪の色は灰色で、性別は男。この小さな世界では、それだけでも最悪だと言うのに。俺は女神と犯罪者の間に産まれてしまった。


 女神(はは)は俺を認めなかった。忌まわしき男を思い出させると。俺の灰色の髪は、この教団では忌み嫌われている。だが、俺が死ぬ事は無かった。半神の俺の寿命は途方もなく長く、神の十字架とでも呼ぶのか、自殺を行おうにもそれすら叶わない。そして不幸な事に俺は他者に殺される事すら出来なかった。


 女神(はは)の髪色を受け継がなかった失敗作の俺は、これまた不幸な事に異常な程頑丈に作られてしまった。女神(はは)が差し向けた赤髪の戦乙女(ヴァルキュリア)ですら俺に傷一つ付ける事が出来なかった。無抵抗で殺されたいのは山々だったが、神としての性質がそれを許さなかった。俺は自ら無抵抗に死を選ぶ事は出来ない。つまり俺には戦わないという選択肢は与えられなかった。


 父は違えど、数十人にも及ぶ姉達(ヴァルキュリア)を俺は殺したのだ。あれは確か五歳のことだった。


 女神(はは)は産まれたばかりの俺の髪色を見て、俺が失敗作だと悟った。しかし、まだ父を愛していたのか、はたまた別の理由かは分からないが、産まれたばかりの俺をその場で殺す事はしなかった。


 父について俺が知っていることは、異世界渡航者(ボトルネック)と呼ばれる人種だったという事だけだ。異世界渡航者(ボトルネック)とは文字通り、異世界から来た人間だという。そしてその父は、俺が五歳を迎える年に教団を裏切り元の世界へと帰ったらしい。そしてそれに激昂した女神(はは)が俺に姉達(ヴァルキュリア)を差し向けたという流れだ。


 この教団内で命を授かった全ての生物には神令と呼ばれる呪いが与えられる。それは太陽の女神が下す絶対の命令だが、その呪いですら、俺の命を奪う事は出来なかった。自殺を命令されようとも、俺にはそれが出来ないし、無抵抗でいる事も出来ない。どうやら死ね、という神令よりも、半神として宿った神の掟の方が優先されるらしい。


 ならばと女神(はは)を殺そうと試みたこともあったが、それは神令によって阻まれてしまう。


 長い長い冷戦だ。


 女神(はは)には俺を殺すだけの力が無いが、俺にも女神(はは)を殺す手段が無いのだ。


 いつからか全てが面倒になった俺は、自ら牢に入った。思考を止め、運ばれた食事だけを口にすることを選んだ。


 何百年と天井を見つめながら無意味に時間を消費していた俺にも最近楽しみが出来た。


 それは一人の男の物語だ。新聞で見るそれは、実に痛快で、俺に出来ないことをやってのける。


 そしてそいつは遂に俺の目の前に現れて死んだ。


 鮮やかな自殺。だがそれは未遂で終わる。


 いや、正確に言えば一度死んで、すぐに蘇ったと言うべきか。


 俺はこの現象を知っている。撒き散らした血は蒸発し、首の傷が完全に塞がっていく、そして数分後には意識も戻るだろう。


 こいつももしや、俺と同じ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ