表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
教祖転生≠The story of a lie≠  作者: 新月 望


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/100

第四十七話『二度目の会議』

 僕にとってはおそらく、二度目の神誅会議が始まった。


 円卓を囲むのは四柱の神々。


 月の女神ルーナ。

 愛と美の女神ウェヌス。

 農耕の神サートゥルヌス。

 太陽の女神ソール。


 記憶の断片が正しければ、謎の男にナイフを投げつけられたのが、太陽の女神だったはず。


 しかし、迂闊に口を開くわけにはいかない……。


 敵を見極める事が重要になると、二度も警告を受けているのだ。あの鴉を信じるわけではないが、慎重にならねばならないのも事実だ。


 そんな僕の思考を遮ったのは、太陽の女神の言葉だった。


「久しぶりの同窓会だってのによー、揃いも揃ってしけたツラしやがって」


 真紅に染まったその髪は、太陽というよりも、戦場に咲く血の色を連想させた。


「何が同窓会よ、よく言うわね。ご丁寧に娘達まで連れて来て。戦争でもやる気?」


 ウェヌス様が刺のある口調で語る。


 やはり、このやりとりにも既視感がある。


 しかし、そんな焼き増しのシナリオは早々に改変されることとなった。


「二人とも、くだらない言い争いは無しだ。もう敵はすぐそこに迫っている」


 農耕の神が落ち着いた声音で二人の女神を仲裁した。


「あ? どういう事だよ」


 太陽の女神が声を荒げて言った。


「この会議は二回目だ」


「なるほど、時を戻したのね」


 男神の言葉をウェヌス様が補足した。


 その言葉から分かるように、やはり、前回の会議の記憶を持っているのは、農耕の神と僕だけのようだ……。


「この前の時間軸では、この円卓に賊が侵入した。そしてそのまま、ソールへと傷を負わせたのだ」


「おいおい、冗談だろ? 太陽を司るこの俺が人間相手に遅れをとったと?」


「あら残念、そんな面白い記憶が無くなっているなんて」


 ウェヌス様が嘲笑混じりに言った。


「消し炭になりてーのか? この淫乱女神が」


 炎のような真っ赤な双眸がウェヌス様を睨みつける。


「やめて、明日の夜は満月。長引けばみんな殺してしまうから……」

 

 月の女神のその一言で、二人の女神は沈黙した。


 なんだかこの言葉にも既視感を覚える。


 僅かに生まれた沈黙を埋めるように、男神が再び口を開く。


「今はあまり時間が無い。それに相手はメルクリウスの水銀を所持している」


「ちっ、あの野郎が裏切ったってわけか?」


 苛立ちを隠そうともしない太陽の女神。


「いや、現段階では判断出来ない」


 農耕の神は、あくまでも冷静に言葉を選ぶ。


「そもそも、その侵入者ってのは誰なんだ?」


「アルマ・ピェージェ、白翼の光の代表代理を務める男だ」


「まさか、そいつ一人でか!?」


 男神とは対照的に感情を前面に押し出す太陽の女神。


「少なくとも、前回の襲撃時は円卓の上に彼一人が土足で現れた」


「それはまた、奇妙な状況ね。戦力を隠しているのかしら? いずれにせよ、何かしらの意図を感じるわね」


 ウェヌス様が訝しげな顔で言った。


「そんな事よりも、なんで今になって教えた。もう少し早くても良かっただろーが!」


 真紅の髪を揺らしながら、太陽の女神は激昂した。


「時間の遡行はデリケートな問題だ。世界への負担は最小限に抑える必要がある」


 感情的な言葉に対し、あくまでも理論的に答える男神。


「もうすでに侵入されている危険性は無いのかしら?」


「あぁ、神誅会議の習わしに背く事になったが、私の信徒を五十名程警備に回している」


「今は非常事態、仕方のないこと……」


 月の女神が小さく呟く。


「だがよぅ、警備を固めたら、獲物が侵入してこれねーだろうが。俺には記憶がねーが、やられた分はやり返さないとなぁ?」


 好戦的なその言葉はとても女神が発したものだとは思えない。


 しかし仮にも女神の言葉。


 その言葉が運命を動かしたのだろうか、皮肉にもその願いは叶う事となる。


「報告します! 侵入者あり!!」


 勢い良く開かれた扉とともに、額に汗を浮かべた男が叫んだ。


「侵入者の詳細は?」


 伝令の勢いとは対照的に、冷静に情報を聞き出そうとする男神。


「そ、それが、巨大な要塞が……」


 酷く動揺した様子で要領の得ない報告だ。


 巨大な要塞? そんなものが襲ってきたというのか?


「二年前と同じ……」


 月の女神は深刻な面持ちで呟いた。


「だったらこれは、俺だけのリベンジマッチじゃねーってわけだ!」


 痺れを切らした太陽の女神が叫んだ。


「ソールの言う通り、これは我々神々の意趣返しとも言える。この戦いを亡き友へ捧げよう」


 男神の発したその言葉の直接、ウェヌス様が横目で僕の瞳を覗き込んだ。


 その瞳の中に憂いの色を感じたのは、僕の思い過ごしなのだろうか……。


 僕の記憶は不完全だ。ピースの欠けたパズルはその全貌を晒さない。


 それでも時は進んでいく。


 一度戻った時の流れは、新たな未来を作り出す。


 神が戻した運命を、動かすのは『人』か『神』

か……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ