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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (1) / Pathetic Prelude〜  作者: 御子柴 流歌
1-3. スノーマジックファンタジー

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67/90

1-3-23. ショッピングのおつきあいに対する心構え

 鳴り止まないスタンディングオベーション。

 それも当然の、素晴らしい演奏。


 ――ブラボーの声が、真っ先に真横に座る佐々岡(ささおか)くんから飛び出してきたのには驚いたものの、それ以外は概ね文句の付けようが無かった。


 無論、ケチを付けようと思えばいくらでも付けられてしまうのが、人間の性質(サガ)

 良いところを探して参考にするのは当たり前として、それでもまだ足りていないと思えるような箇所を見つけて、その修正方法を考えた上で自分のモノにしたい。


 スゴかったね、で終わらせることはカンタンだ。

 誰にでも出来る。

 それを自分の糧にするために何をするべきか。

 今日ここに来ている目的のひとつは、それを見つけるためでもあった。


 ――とは言うものの、である。



「歌謡曲メドレーさー、あれ何曲くらいわかった? 私ほとんどわかんなかったんだけど」


「え、ウッソだぁ。私全部わかったけど」


「マジで!? あたし、1曲くらいだけど!」


「俺もそれくらいだぞ?」


「えー! 何でわかんないの!?」


「むしろ、アンタが何でそんなに知ってんのよ!」



 すぐ後ろでは先輩後輩入り交じって、もっと平易な感想の言い合いが展開されている。

 陽も完全に落ちてかなり冷え込んできて、雪も穏やかに降ってきてはいるが、その寒さも吹き飛ばされそうなくらいに熱い。



「ねえ、海江田(かいえだ)くんは?」


「え? あー、うん。一応全部知ってた」


「ほら! 知ってる人居たっしょ!?」


「いや、そこで瑞希(みずき)くんに聞くのはずるい!」


「待って、何でそこで『ずるい』になるの」



 不意に名前を呼ばれたので巻き込まれてみたが、その瞬間、何だかおかしな流れに飲まれそうになっていた。



「まー、ほら。何か、詳しそうだし」


「……雑だなぁ。別にいいけど」



 音楽は楽しんでこそ、とも思うわけで。


 別に小難しいことだけを語る必要なんかない。

 こうして聴いた人を楽しませることができていたということこそが、成功だ。

 スゴかったね、で終わらせることは何も悪いことじゃない。



「さてさて、みなさん。このあとはみなさんお待ちかねの忘年会ですよ、忘年会」



 不意に藤林(ふじばやし)香奈(かな)部長が目の前に現れて仁王立ちする。


 みなさんとは言うものの、一応は自由参加の体裁を取っている。

 今回はだいたい部員の半分よりやや少ないくらいの参加だ。

 ウチの場合は『全然問題無いから楽しんでいらっしゃーい』と、二つ返事で送り出されていた



「集合、何時だっけ?」


「7時!」


「……わりと時間あるんだよね」


「ということで、時間までは自由行動! 遅刻厳禁! 以上!!」



 今から1時間程度、というところだろうか。

 会場になっている焼き肉店は、ここから目と鼻の先と言っても問題無いくらいの距離の処にある。

 うまいことを時間を潰す方法は無いだろうか。

 隣を歩く佐々岡くんも思案顔なところを見ると、どうするか迷っているらしかった。



「俺たちはどうする?」


「うーん……」


「ミズキー。……と、佐々岡くーん」


「ん?」



 いつの間にか真横に来ていた神流(かんな)が声を掛けてくる。

 そのさらに横には瑛里華(エリー)早希(さき)和恵(かずえ)さんの姿。

 ――何だか、最初のレポート処理会を思い出すようなメンツだった。



「オマケ的扱いは隠そうともしてくれないのな?」


「まぁね」



 それすら否定しない。

 佐々岡くんは苦笑いを浮かべながらがっくりと肩を落とす。



「私たち、あそこらへん行くけど……」



 言いながら『あそこらへん』と指で示す。

 その先にあるのはわりと古くからあるファッションビルとか言われるタイプのビル。

 外見は古いが中はイマドキってヤツだ。



「……付いてきて」


「ん? あ、『付いてくる?』じゃないんだ」


「手持ち無沙汰なのかなーって思って提案してあげてるんですけど」



 如何せん正解であるだけに、これ以上の反論は出来なかった。



「どうしようかって考えてたのは事実だし、別にいいよ」


「そっちのオマケくんは?」


「……もうなんでもいいや」



 諦めた。



「ハイ、決まりー。じゃあ荷物持ちよろしくー」


「え?」「あ?」


「さー、行こー!」


「おー!」「いぇーい!」「ごーごー!」



 足を前に出せない。

 隣を見れば、無感情な眼差しが前を歩く4人に注がれている。



「なあ、海江田?」


「……どうした?」


「なんかさっき、ものすごく不穏なことを言われたような気がするんだけど」


「奇遇だね。実はボクもだ」



 ふたりで顔を見合わせて、ため息を吐いた。


 ――どうか穏便に終わりますように。










 荷物持ちとは言われたものの。



「持つ荷物が増えない件」


「むしろ、ひたすら待ち時間が長い件」



 佐々岡くんの台詞に言い返す。

 視線の先には、女子達の饗宴(きょうえん)

 楽しそうなのを見ているのは別にいいのだが、何もしていないのはさすがに時間の潰し方としては、よろしくない気がしてきた。

 ショッピングとはモノを買うのみに非ず。

 理解はしていたつもりだが、まだまだ甘かったらしい。



「ちょっとトイレ行ってくるわ」


「……戻ってくるんだよな?」


「……」



 佐々岡くんが無言で去っていく。

 覚悟をしておく必要があるかもしれない。


 チャラ系のキャラを演じることが多い割に、こういうところで今ひとつ圧しが足りない気がするのは気のせいでは無いだろう。



「あれ? ひとり居ない。……まぁいいや。みずきくーん!」


「……はいはい」



 しばらくして、和恵さんからお呼びがかかった。

 こっちこっち、と手招きされるので付いていくと、行き先はワゴンのようなショーケースにたくさんのアクセサリーが並んでいるショップだった。


 合計2回のパフェ会のあとから、ボクのことを名前で呼ぶようになった子が増えてきた気がする。

 曰く、『文字数の都合』ということだが、気に過ぎても仕方が無い。

 そもそも神流はかなり早くから名前呼びだったし、思い返せば里帆(りほ)先輩のパターンもあった。

 吹奏楽部にとっては今更という話だった。


 そういえば、他の3人は何処へ行ったのだろうか。

 気付かない間に別のフロアにでも行ったのかもしれない。



「なんでございましょうか」


「どれがいいかなぁ、って思いましてね」


「……ん?」



 差し出されたのは3つのノンホールピアス。

 余り派手ではないのが、和恵さんらしいチョイスのように思えた。

 ハンドメイドなのだろうけど、よくできているのに、お手頃価格。

 ここのファッションビルに入っているテナントやショップは、どこも基本的には高校生でも大丈夫なくらいの値段層だった。



「自分用? 誰か用?」


「神流と、エリーと、早希」


「……クリスマスプレゼント的な?」


「さすがみずきくん」


「何がさすがなのか、よくわかんないけど」


「それは、とくに気にしないで大丈夫だけど。あのね、さっき4人で『プレゼント交換しよう』って話になって」


「ああ、だから他の3人が居ないわけか」


「そ。そんなわけで、みんな別々のところで選ぼうってことになりました。……ってことで、はい」


「はい、と言われてもなぁ」



 つまり、この微細な差しかない3つのアクセサリーを、それぞれ3人に振り分けろ、という話なのだろう。


 ずいぶんと難問をくれたものだ。

 正解はあるのか微妙なところだ。

 仲良し女子同士で結論が出せないようなものを、どうして一介の男子高校生が導き出すことができようか。

 ――いや、できない。たぶん。きっと。



「えー? なんか、みずきくんってこういうの選ぶの得意そうだし」


「なんでさ」


「女子力高いし」


「本人にその自覚無いんですけどね、一切合切」



 パフェ会のときにそう言っていたのは和恵さんだったか。

 結局未だに真意は訊けていない。



「あとは……、いろんな子にプレゼントあげてそう」


「……ヒトを(おんな)(たら)しみたいに言わないでもらえるかな」


「あ、何か言い方間違えた()()


「かも、じゃないと思うんだよね」


 その言い回しだと、完全にプレイボーイというかパリピというか、とっかえひっかえするような系統の人間になってしまう。



「クリスマス会とか、誕生日会とかに呼ばれたりして、そういうときのプレゼント選びが得意そうだなぁ、ってそういうイメージがあってね」


「ああ、そういうこと……。そんなことも、ないんだけどなぁ」


「あれ? そうなんだ」


「うん」



 ぼんやりと返事をしながら何となく思い返してみて、――少しだけ胸が痛くなった。


 今でもはっきりと思い出せるのは、聖歌の笑顔だった。


ここまでお読みいただきましてありがとうございます。


感傷に浸るのもいいけどさ。

女子力高い系男子と女々しい系男子は違うんだよ、瑞希。

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