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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (1) / Pathetic Prelude〜  作者: 御子柴 流歌
1-3. スノーマジックファンタジー

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1-3-17. 星宮に降る雪、とは

 間もなくしてやってきた歌織(かおり)と、ギリギリ間に合った佐々岡(ささおか)くんを合わせたところで、今日のメンバーは勢揃いだった。


 佐々岡くんは事前に「遅れるかも」と連絡をくれていたものの、できる限りがんばって間に合わせようというのがよくわかる息の切れっぷり。

 そんな心意気を自ら誇るべく胸を張ろうとしていたようだが、残念なことに女子陣は、いっしょについてきた彼の弟くんに夢中だった。

 さめざめと泣く真似をする彼の肩をとりあえず撫でておいたが、そうしている間のボクの視線も彼女たちと同じ方向に向けていたことはナイショだ。

 なにせ初対面だし。


 早希(さき)瑛里華(エリー)は今回やむなく不参加となってしまったが、神流(かんな)曰く「次の機会はもう考えてある」とのことだった。



「さーて」


「来週のサザ……」


「ハイ、遅刻ギリギリだった人は、余計なこと言わないで着いてくるっ!」



 渾身のボケすらも潰された佐々岡くんだった。

 踏んだり蹴ったりである。

 一応遅刻ギリギリであって、遅刻はしていなかったのに。


 彼は現実に打ちひしがれるように、よろよろとボクの方へ近付いてきた。



「ごめん、海江田(かいえだ)。しばらく俺の面倒を見てくれ……」


「どこまで見りゃいいんだ、メシの支度くらいまでか?」


「できれば、夜の」



 肩にもたれかかられる直前で一気に身体を離す。

 支えにする予定だったモノが無くなった佐々岡くんは、華麗にタップダンスを踏んだ。



「冗談なのにー」


「冗談飛ばせる体力有るなら問題ないでしょ」


「……いや、まぁそうだけども」



 日頃から運動部顔負けの体力作りや筋トレをすることもある吹奏楽部員が、そもそもその程度のダッシュで体力を根こそぎ無くすはずがないわけで。

 実際佐々岡くんも、先ほどよりはかなり呼吸も落ち着いていた。



「それにしても、誠也(せいや)のヤツ……。一発でモテやがってあの野郎」


「あ、弟くん?」


「性格的には俺と大差ないんだけどなぁ。ああいうときだけウマいこと立ち回りやがるんだ」



 ――見た目も含めて、結構お兄さんと似た感じがするけどなぁ、とは言わないでおく。

 そこまで言ってしまうと、佐々岡くんがパフェにありつく前に再起不能になってしまいかねなかった。











「あ、ここなの?」


「うん」



 隣を歩く佐々岡くんに軽く答えつつ、右に曲がる。このビルの7階が最終目的地だった。


 知らない間に集団の先頭を歩いて道案内役になるのはいつものことだった。

 もはや慣れ親しんだ位置でもある。

 今回は一応神流もその役回りではあったが、基本的にしゃべり倒しているのでそこまで役には立っていなかった。


 地上に出ること無く入れるところというのは、やっぱり便利だった。

 休日と言うことでビルの中も人の姿は多かった。

 雪も寒さも凌げるというのは、雪国においては最大の強みだと思う。



「海江田、よく知ってるな」


「まぁ、事前に調べてあったっていうのもあるけど……」


「前に来たことあるモンねー」



 話を聞いてはいないと思っていたが、そんなことはなかった。

 神流がボクらの前にずいっと顔を出しながら言い、そのまま前にやってくる。

 少しばかり挑戦的な顔が気になった。



「まぁ、そうな」


「……お前、いつのまに」


「先々月くらいだったっけ?」


「たしか、うん。それくらいの時期だったはず」


「ふたりで?」


「まさか」


「あのときはエリーと、雪絵(ゆきえ)先輩と、春紅(はるか)先輩」


「で、海江田と」


「うん」


「……ンの野郎」



 ドスの利いた声とともに、佐々岡くんの視線から発せられている冷気のようなものが強くなる。

 これはやばい。

 いつぞやのように、血の涙を流しそうな様子になってきた。



「キレイどころだらけじゃねーかよ」


「あら、うれしい」


「……神流を除いて」


「除くな!」


「痛ぇっ!!」



 わざとらしくくねくねとしていたのをぴたりと止めた神流の、キレイなチョップが佐々岡くんの脳天に突き刺さった。


 気持ちはわからないではない。

 黙っていればイイのに、とは思う。

 もちろん、コレを口に出したら、今の佐々岡くんとは比べものにならないダメージを受けるだろうから、言わない。

 沈黙は金だ。

 ――とはいえ、これがある意味では、神流の良さだったりもするわけだが。




 エスカレータに乗り、いろいろと話しつつゆっくりと上階を目指す。

 地下から上がるとなればそれなりに時間はかかるが、話していればあっという間だ。

 途中の階で、何度か寄り道をしたいような顔を見せていたのが何人か居た。

 残念だけど、予定の時間はもう間もなくだ。

 寄ってもらうならばその後だ。


 エスカレータを降りた真正面にその店はある。

 地元企業である、乳製品を扱っている会社の直営店。

 それゆえ、クリーム類の味にはかなりの定評があった。

 もちろん、国内外から来る観光客にも人気のお店。

 今日もしっかりと賑わっていた。



「いらっしゃいませ」


「グループで予約をしていた高島(たかしま)です」


「はい、少々お待ちくださいませ」



 熟れた感じで店員さんに照会をしてもらっていると思ったら、いきなりこちらを振り向いた神流は、佐々岡くんに対してものすごく人の悪い笑みを浮かべた。



「……ん? なんだよ」


「佐々岡くーん? こちらをご覧くださいませー?」



 言いながら神流は、店の入り口に大きく構えるショーケースの中を指差した。



「あ、マジだ」


「ほら、だから言ったっしょ? 冬のパフェは有る、って」


「そうか、クリスマス系のデザインか……。盲点だったなー」



 小さなブッシュ・ド・ノエルをベースの素材にしたパフェの見本を見ながら、佐々岡くんがうなる。

 イチゴとミントでクリスマスカラーも演出されていて、これでもかと言わんばかりに冬のデザインだった。

 ――美味しそうだ。



「鍋料理なんじゃねーの、とか言ってたのはどなたでしたっけー?」



 煽る、煽る。

 とても生き生きとした表情で、佐々岡くんを煽り倒している。



「どうも、申し訳ございませんでしたぁ」


「ってことで、割り勘の時に私の分500円くらい肩代わりしてね」


「はぁ!?」


「あらら? どうして文句がお有りなのですか?」


「それとコレとは話が別だろー!」


「うん。……まぁ、ウソだから安心して?」


「はぁ!!?」



 おかしな方向に盛り上がりそうになったところで、さきほどの店員さんが戻ってきた。

 席のスタンバイまでしたところで呼んでくれたらしい。

 今のタイミングも含めて、デキる人だ。



「ありがとうございまーすっ」


 数秒前のテンションを一気に隠して、外行きの顔になる神流。

 変わり身の早さがすさまじい。

 電話の応対などでは、しっかりとピッチを上げて話せるタイプであることは知っていた。

 ある意味『おとなの嗜み』のようなものだ。


 店員さんについていくと、店内の奥の方、個室のようなブースのようなスペースに案内される。

 これが『グループでの来店にもばっちり対応』という触れ込みのスペースなのだろう。

 円形テーブルを取り囲むような、同じく円形のカスタードクリームを思わせるような色合いのソファ。

 テーブルの真ん中には、大きなパフェ用の器の脚が納まるような凹みがあった。


 そのままの流れで椅子に座っていく。

 ボクの左隣には神流、右隣には聖歌(せいか)が座った。

 男子はそれぞれ対面になった方がいいということで、パフェを挟んで向かい合わせになるような場所に佐々岡くんが座ることになった。


 メニュー表を全員に配布して、店員さんは一度下がっていった。



「さっきの冬パフェの話だけどさ」


「うん」



 一通り席に着いたところで、先ほど言おうとしていたことを言ってみる。



「他にも、『あったかい』冬のパフェっていうのもあるんだよ」


「え、うそ!?」


「え、そんなのあった?」


「いや、神流はびっくりしないでよ」



 一応、幹事でしょ。



「んー、まぁ、ほら。今回は特大サイズの目当てじゃん? それしか見えてないっていうかさ」


「……わからないではないけどもさ。まぁ、いいわ。ほら、これとか」


「あ、ホントだ」「へー、知らなかったぁ」



 冷たいバニラアイスが焼きリンゴやリンゴの赤ワイン煮が添えられているものとか、フォンダンショコラがベースになっているのとか。

 フォンダンショコラのモノは、あったかいチョコレートソースをあとからかけてもらって食べるタイプのものだ。


 メニュー表をふたりに見せていると、他の子たちも興味津々に顔を寄せてきた。

 なかなかイイ食いつきで、情報の提供者としては嬉しい。



「っていうか、ミズキ。アンタなんて知ってんの?」


「さっき、ここに来る前にホームページ見てたから」


「何だ、カンペか」


「事前調査と言って欲しいな。……まぁ、いいや。とりあえず、アレ頼むんだろ?」


「ええ、もちろん! すみませーん!!」



 おなかから出ているのがよくわかる、これでもかと言わんばかりに良く通る声は、かなり遠くの方に居た店員さんを呼び寄せるのに充分すぎた。



「はい」


「この『ネージュ・エトワール』の、XXXLを!」


「かしこまりました。……がんばってくださいねー」


「……ん?」



 満面の笑みで去って行く店員さんの台詞。


 ――というか、その前に、コイツ。『スリーエックスエル』とか言わなかったか?


 猛然と突進してくるような、嫌な予感。


 その予感が正しかったことは、数分後に証明された。厭と言うほど。




ここまでお読みいただきましてありがとうございます。


次回、『クロスロード・カンタータ』。

「対決! ネージュ・エトワール」。

乞うご期待!







……というのは、半分くらい冗談で。

とりあえず、胸焼けしないように気をつけてくださいね。

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