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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (1) / Pathetic Prelude〜  作者: 御子柴 流歌
1-3. スノーマジックファンタジー

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47/90

1-3-3. 意外なニューフェイス



 翌日。

 1年7組の教室。


「おはよー」

「……おはよ」

「あ、またティッシュ置いてる。だいぶ良くなった?」

「何とかね」


 いつもより少し早めにやってきた神流(かんな)が、笑いながらこっちに近付いてくる。


 鼻風邪の症状はいくらか良くなってきた。

 いつもより早めに寝たのが効果的だったらしい。

 やはり体調不良のいちばんの薬は早寝なのだ。


 昨日のうちに諸々の準備はできている。

 神流が見たがっている日本史・世界史のノートも、テスト範囲分は一揃いさせた。

 薄めのバインダーにそれぞれの章ごとに分けてもみた。

 ぱっと見の分量が少なく見えた方が、精神的な負担を軽くすることができると思う。


 ボックスティッシュの残り枚数がかなり減ってきていたのも、昨日の帰りに薬局で調達済みだ。

 今度は3箱セットになっているものにしている。

 しばらくは保つはずだ。


「おはよー」

「あ、亜紀子(あきこ)ちゃんもおはー」

「おはよ」


 仲條(なかじょう)さんは荷物を教卓の上に置きながらやってきた。


「どこ行ってたの? そんなの持って」

「先生に玄関先で捕まっちゃって、教室行く前にこれ持って行ってくれー、って頼まれちゃって」

「……自分で持ってくれば良いのに」

「まあまあ」


 ブーたれる神流を宥める仲條さん。


「風邪は大丈夫?」

「んー、そこそこって感じかな。月曜日に比べたらだいぶマシだよ」

「あの日と比べるのは、ちょっと……」

「正直言って、アンタ休めよ、って言いたかったわよ」

「あ、神流ちゃんもそう思ってた?」

「そりゃ思うわよ。あんな鼻水垂らしまくってる姿見たら、……ねえ?」

「……そこまでひどくなくない?」


 いたたまれなくなって思わず苦情めいた物言いをしたが、想像していた以上に怪訝な顔をふたりから同時に向けられてしまう。


「そこまでひどくなくなかったから、言ってるんだけど?」

「うん。よくその体調で学校に来て、授業受けて、帰れたね、って思うくらいだったよ?」

「マジで……?」

「マジで」「うん」


 たたみかけるように、同時に肯定される。


「ま、まぁ、ほら。おかげさまでだいぶ良くなったからさ。……ね? あの……、だから許してください。あ! ほら神流、ノート持ってきたから、ノート!」

「あ、ホント? じゃあ、放課後見せてね」

「……放課後?」


 無事に話題逸らしに成功した。

 斜めになりかけていた機嫌が元通りになる神流に対して、きょとんとした顔をして訊いてくる仲條さん。

 バインダーをカバンから取り出しながら言葉を続ける。


「ああ、勉強会まだ続いてるんだよ。今日は歴史系がメインだから、教材として提供できるように持ってきた」

「吹奏楽部マジメだねー」

「でしょでしょ? もっと褒めて、もっと褒めて」

「すぐ調子に乗らない」

「あぃだっ」


 昨日の借りを返すような感じで、軽くチョップを当ててやった。




     ◯




 風邪薬の影響かいつもより強めの睡魔に襲われつつも、何とか無事に放課後を迎えることができた。

 眠くなりにくいとかいう触れ込みだったはずだが、それでも眠くなるというのは根本的に睡眠時間が足りていないのかもしれない。

 盛大にあくびをしなかっただけ、まだマシだったかもしれない。


 ホームルーム終了直後に階段を降りて、購買で眠気覚まし用のミントタブレットを買う。

 いつもはあまり選ばない、清涼感がいちばん強いヤツだ。

 いっそのことエナジードリンクか栄養ドリンクか、その類いのモノを買うために一旦外に出ようかとも思ったが、それはやめておく。


 玄関前の混雑をくぐり抜けながら、今度は階段を上がり音楽室へと向かう。

 4階まで戻ったところで、歌織(かおり)と神流が丁度音楽室へと行くところだった。


「あれ? どこ行ってたの?」

「購買でコレ買ってたんだよ」


 未開封のミントのケースをしゃかしゃかと振ってみせる。


「でもナイスタイミングね。今から行くところだったから」


 今日の鍵当番は歌織だ。

 3組は5時間目が選択科目である芸術の授業。

 歌織の選択は音楽で、担当が神村(かみむら)先生。

 しかも第1音楽室を使っていたので、そのまま先生から鍵を預かることができていた。


 3人連れだって歩く。

 とはいえ、大した距離ではない。

 雑談が盛り上がるほどの時間もかからずに、第1音楽室は目の前だ。

 鍵を開けて中に入れば、やはり空気は少しだけ冷えている。

 もちろんヒーターは入っているが、人がいなかった分だけ一般教室の方面と比べて寒さを感じた。


「今日は、あとは……和恵(かずえ)さんと、好海(このみ)と?」

「好海が連れてくる子かな」

「ん。じゃあ、これくらいか」


 言いながら、音楽室の前の方、ピアノに近くにある机と椅子をちゃちゃっと並べ替える。

 多くても8つくらいで充分だろう。

 ついでにカバンからノートを取り出して、自分の席を早々に確保する。


「お、仕事がはやーい」

「ありがとー」


 ふたりも揃って机にカバンを置く。

 神流はさらにその流れでボクのノートを手に取った。


「そうそう、これこれ。これよー。これがよく効くって評判の」

「……薬か何かかな?」

「ある意味、特効薬みたいな?」


 あまり間違っていなかった。


「コピーは、今度授業あるときにさせてもらうわ」

「そうしてもらえるとこっちも助かるかな、授業ないときだと持ってくるの忘れそうだし」

「ん。了解」


 全員が集まるまではもう少しかかりそうな予感もある。

 歌織も興味深そうに、神流が今読んでいるものとは別にまとめてあるノートを見始めた。

 せっかくなので解説のようなものを混ぜながら、徐々に自分のアタマを勉強モードに切り替えていく。

 ついでにミントも数粒口に入れておいた。




 数分後。


「来たよーっ」


 ドアが開ききる前から声が響く。

 好海の登場だ。


「ごめんね、掃除がちょっと長引いちゃって」

「だいじょぶ、だいじょぶ。まだ準備してただけだから」

「それで? お友達ちゃんは?」


 歌織が答え、さらに神流が言葉をつないだ。


「……ごめんね、その前に私がいて」

「あら、ごめん」


 和恵さんだった。

 拍子抜けしたような声を出す神流。


「ほらほら。ふたりとも、入って入って」

「男子ひとりいるけど、だいじょうぶな人だから」

「ぶっ」

「……ちょっと和恵さん? それってどういう……」


 横で神流が噴きだした。

 微妙な物言いの和恵さんにかるく文句を付けようと、扉の方に顔を向けた――。




 ――――のだが。




「……え?」


 思わず目を見開く。


 あまりにも意外な登場に、視線を逸らすことが出来なかった。


 それは、ちょうど目が合った彼女も同じだった。


 視線はそのままぼんやりとしたまま真っ直ぐにぶつかりあっている。


 好海が連れてきた友人さんの、その後ろ。

 恐らく、その友人さんのお友達というポジションなのだろう。




 ――御薗(みその)聖歌(せいか)が、そこにいた。




 自分の口が半開きになっていることにも、ようやく気付く。

 これはちょっとマヌケに見えそうだった。

 慌てて閉じる。


 それを見てか、聖歌も口を真一文字に閉じた。

『お口チャック』な顔だった。

 大きな目は見開かれたままなので、どうにも幼さが際立って見える。


 かつて、見たことのある顔だ。

 ふたりで騒いで、おばさんに怒られて、でも然程反省していないときに見たことのある表情だった。


 不意に見つめ合う恰好になっているのだが、目を離せない。

 視線を逸らすのは明らかに違っている感じはする。

 だけど、そうかといってこのまま見つめ合っているのも、何かが間違っているような気はしてしまう。


 何となく、小さく、右手を振ってみた。

 机のすぐ上で、見えるか見えないか微妙な大きさで。

 たぶん、表情はそのままにして。


「……!」


 すると彼女は、ハッと気付いたようにさらに目を大きくした。

 一瞬、少しだけ俯いたように見えたが、再び上を向いた頬は少しだけ赤らんでいるようだった。


 そして、唇には少し力が入ったような感じには見えるが、小さく手が振り替えされた。







お読みいただきましてありがとうございます。


……言うほど意外じゃないかもしれないですけどね。

彼にとっては、意外だったのですよ。


さて。

ひたすらにずれていたものは、何年か越しに少し交差したようですが。

どうなりますやら。

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