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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (1) / Pathetic Prelude〜  作者: 御子柴 流歌
1-2. 雨音はショパンの調べ

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1-2-XXX. 霧が晴れたら


 外は真っ白。

 一瞬雨が夜更け過ぎに雪に変わったのかと思ったがそんなことはなく、霧が立ちこめていた所為だった。

 市内南部は山も近いのだが、今日は霧の所為でその陰も見えなかった。


 今日も車で仕事へと出かけていく父・御薗浩輔(こうすけ)に、母・千里(ちさと)はいつもより心配そうに『行ってらっしゃい』を送った。

 この天気では注意をしてもしすぎるようなことはないだろう。


 母はそのまま私にも似たような言葉をかけてきた。

 流石に心配性が過ぎると思うのだが、作ってもらったお弁当と一緒に素直に受け取っておくことにする。

 このままでは私が学校に着くまで心が保たなさそうだ。

 どこかで立ち止まるたびにスタンプでも送りつけておこうと思った。


 少しだけ昨夜の雨が残ったような朝は、空気がかなり冷えていた。

 私が家を出るタイミングでは、まだ近隣の小学生たちは家の中。

 メインの通学路にもなっているはずの通りも、まだ眠ったままのように静かだった。

 寒さが際立つ。

 ちょっと厚めの手袋にして正解だった。


 10分もかからずに最寄り駅に到着。

 いつもは足止めされる国道をまたぐ横断歩道の信号が、今日は私が来たちょうどそのタイミングで青になってくれたおかげだった。


 濡れた階段端の滑り止めのようなもので逆に靴底が滑ったが、何とか無事に改札を通り抜け階下にあるホームへと降りる。


 程なくしてやってきた地下鉄に乗ると、幾分か寒さは和らいだ。

 これから徐々に人が増えていくのに合わせて車内の気温も上がっていくので、そのあたりには注意。

 幸運なことに今日はまだ座席に余裕があった。


 人並みに飲み込まれそうになりながらも何とか乗り換え。

 着いたホームで深呼吸していると、見慣れた姿があった。

 ゆっくりと近付けば、その見慣れた人影もタイミング良くこちらを向いた。


「……あれ? 聖歌?」

「おはよー。……珍しいね、こんな時間に」


 小野塚くんに『朝くらい一緒に来ればいいじゃん』と言われ、『申し訳ないけど、その時間はまだ寝てたい……』と言って、周囲を完全に唖然とさせた一言を吐き出した彼だ。

 本当に珍しい。


「……雪でも降りそう」

「それ、この時期だったら別に珍しくもないじゃん」

「あ、そっか」


 その他の地域ではいざ知らず、北国の晩秋ではネタにもならなかった。


「だからって槍も止めてくれよ」

「うん」


 別にそこまで言うつもりはなかったけれど、おとなしく頷いておいた。


「でも、ほんと珍しいね」

「ん……。眠れなくて、うとうとして目が覚めてって気付いたら6時で……」


 その時点で寝るのは諦めた、ということらしい。

 よく見れば彼のまぶたはものすごく重たそうだった。

 そこだけ重力が5倍くらいになっていそうなくらい。

 今にもぴったりと閉じてしまいそうだ。


「昨夜、何かしてたの?」

「……日本史の暗記」

「え」

「ちょっとガチって机に向かったら、そのまま妙に目が冴えちゃってさぁ。慣れないことはするもんじゃないな……」

「そ、そうなんだ」


 ――勉強には慣れて欲しい気もするけれど。


 他にもいろいろと思うことはあるけれど、タイミングが良いのか悪いのか、轟音と風を纏って地下鉄がやってきた。

 乗客がほとんど入れ替わるようなくらいに混ざり合いながら、何とか今日も無事に乗り換えに成功した。


 そこからは少しずつ人の数も減っていきながら月雁駅に着き、地上へと上がる階段を進んでいく。

 外へ出ると、霧はすっきりと無くなっていた。

 意外にも青空がのぞいている。

 空気はもはや冬そのものだが、それでも気持ちはいいものだった。

 いい目覚めにはなりそうだ。


「ふぉあぁぁぁあ……、はふぅ」


 欠伸なんだかため息なんだかよくわからない声が隣から聞こえた。

 隣の彼にはそうでもなかったのかな、なんて思っていると、何故かすぐに苦悶の表情を浮かべた。


「あ、やべっ。眠気覚ましのミントがキツい……」


 冷気とミントのダブルパンチを食らったらしい。

 申し訳なかったけど、こっそりとちょっとだけ笑ってしまう。


「もう……」


 つくづく恰好のつかない人だけど、ちょっとだけ笑って、ちょっとだけ元気になった気がする。


 最近はあまり天気も良くなかったし、昨夜はかなりの悪天候だった。

 それからしてみれば、気分も晴れやかになるくらいの空だ。



 ――何かいいことが、ありますように。


 そんなことを思いながら、なおも欠伸が止まらない彼に向かって手招きをした。


御子柴です。

お初の後書きになります。


ここまで読んでこられた方も、

ここだけご覧になった方も、

ありがとうございます。


基本的には静謐に、ときどき会話の応酬を突っ込むような。

そして、とてもとても展開がゆっくりとした、クセがスゴい本作ですが、

これにてようやく第1章第2部が終了となります。

これからも遊びに来ていただければと思います。

後書きも、ストーリー展開に動きが出たときとかにこそこそっと書いたりしますので、

そちらも含めて、なにとぞ。

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