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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (1) / Pathetic Prelude〜  作者: 御子柴 流歌
1-2. 雨音はショパンの調べ

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1-2-23. 成長戦略千差万別

 ――その娘、か。



 自分で言っておきながら。

 浅ましいものだった。


「っていうかさ」


 話題の転換を図ろうとするよりも早く、神流が口を開いた。


「ミズキのノート、まだ私コピーさせて貰ってないって話だけどさ」

「うん」

「授業の無いときとかに見せてもらうっていうのは良い?」

「……神流ン家に持って帰ったりするとか?」

「うーん……、それは極力、私がしたくないけど。いやさ、結構なページ数な感じがしてるから、流石に全部コピーさせてもらうのはいろいろキツいかな、って思ってて」


 祐樹も、たしかに言っていた。

 彼の場合は、テストがダメだった場合の条件と財布が薄くなることを天秤に掛けた上で、財布を薄くする方を選んだという話。

 基礎練ばかりになるのは、後々に自分のためになることとは言え辛いのには代わりがない。


 我らが吹奏楽部は練習メニューが変更されるようなペナルティこそ無い。

 しかし万が一追試になったとしても、自己責任であるのだから当然なのだが、全体練習はノンストップ。

 教科によっては補講になるため、最悪2週間くらいは拘束される場合もある。

 当然練習に出られないので本人が困る。

 加えて、欠員を出すことで全体的な練習にも遅れをもたらす。

 百害あって一利無し。

 見放すようなことする必然性は皆無。


 ――少し、魔が差した。


「神流って、参考書とかってどうやって買ってる?」

「滅多に買わないけど……、中学のときはお金もらって………………!!」


 強烈な答えが彼女の中で導かれたようだ。

 こういうときに神流は察しが早くて助かる。

 言葉を最小限にしても伝わることの気安さ加減。


「ミズキ、ホント時々だけど、めちゃくちゃに悪人の思考になるよね」

「言い方よ」


 尤も、参考書代を貰うという体裁でお金をせびるのならば、素直に参考書を買った方が各方面に被害が出ないと思う。

 それでもなおこちらを求めるのであれば、ボクとしては悪い気はしないけれど。


「この勉強会のときもそうだったなー」

「え、なになに。海江田くん何したの?」

「佐々岡くん、ストップ」


 放っておくと各所に鰭を搭載したようなお話が展開されそうな予感がしてきた。

 澤ちゃんが食いついてきたところで強引にリリースさせておく。


 あの時も魔が差したのは事実だが、そこまでの言われ様は受け容れがたいものがあった。


「流石に胸が痛むんだったら、前期末から何ヶ月か分だけコピーして、あとは自分のノートに追加で書き込むとかでもいいけど? どうせ席近いんだしさ」

「ああ、なるほど」

「1日あたりノート1枚分とかで書き込みしていけば、そんなに重労働にもならないでしょ?」

「……ミズキが暗記系の科目のテストに強い理由が、ようやく確実に解った気がするわ」

「いきなり全部を目の前に積むと嫌気差してくるでしょ? そういうときはある程度時間に余裕持たせた上で小分けにして、自分で『うわぁ……』って思わないようにするんだよ。そしたら『塵積も』じゃないけど、案外乗り切れるモンだよ」


 要領よくやろうとするのは、昔からかもしれない。


 祐樹がノートの物量に一瞬腰を引きつつもしっかりとコピーして帰っていたのには、かなりの根性があると感じたものだ。

 余程基礎練祭りが嫌だったのだろう。


「はぁー……、なるほど。それが海江田メソッド的な?」

「メソッドって言えるほど確立はしてないよ?」


 大袈裟な名前を冠するほどのことはしていないとは思うが、佐々岡くんの目は若干本気の色をしていた。


「いやいや、それでもでしょ。ほら、ネットとかテレビとかでも時々転がってるじゃん、『トップ大学に受かる勉強法』みたいな」

「あるねえ。……いや、そんなに()()()()()じゃないでしょ」

「そこなんだよ」


 言いながら佐々岡くんはビシッとこちらを指差した。


「ああいうのって『売れる』のを意識してるせいか、親世代には刺さっても俺に刺さらねえんだよ。何て言うのかなー、もう少し当事者のことも考えて欲しいようなカリキュラムだったりするわけよ」


 なかなかの熱弁だった。

 少し飄々としたところもある佐々岡くんには珍しい。

 女子陣も同じ事を思っていたようで、結花を除いた全員が目を見開き気味になっている。

 結花も驚いていないわけではないようで、表情はいつも通りだがシャープペンシルの芯をぱきりと折っていた。


「随分詳しいね」と、早希ちゃん。

「ウチの親、自己啓発本みたいなのが結構好きだから、それの煽り喰ってるってわけよ。合う・合わないもとくに調べもしないで『これが良い』、『あれが良い』とか時々やってくるからめんどくさくてさ」

「適当にあしらえばいいじゃん。下手に構ったりするから過干渉になってくるんじゃない?」

「カンタンに言ってくれるなぁ……」

「……まぁ、それぞれの事情はあるか」


 少し言い過ぎたと思ったのだろうか、幾分か結花がトーンダウンした。


「とまぁ、そんな感じだから、極力部屋で勉強したくないんだよね……」

「塾とかは行ってるの?」


 早希ちゃんが訊く。


「いや。中3の1年間だけは行ってたけど、今は。……塾の時はラクだったけどなー、テキストやって、それに併せた参考書で勉強してたら付けいられる隙が無くなってさ」

「だったらさ!」


 先ほどから何やら考え込んでいるような顔をしていたエリーが、急に口を開いた。

 結構な声量だったのもあり全員の視線がエリーに向けられたが、彼女はほんのりと恍惚の表情を浮かべながら続ける。


「これからも部活休みの日とかに、このメンバーで勉強会やろうよ!」

「おお?」


 真っ先に興味ありの反応を示したのは、ある意味当然というか、佐々岡くんだった。


「みんなの勉強法とか訊いてみたいし、海江田くんのノートも見てみたいし、そもそもわかんないこと聞きやすいし」

「それさ、できたら、部活停止期間になったら毎日やれないか?」


 エリーのアイディアに補強をするように、佐々岡くんが提案を重ねてきた。


 月雁高校では勉学への集中を期すために、定期考査1日目から数えて2週間前になると全ての部活動が停止されることになっている。

 テスト問題の漏洩防止のための職員室への入室制限は定期考査1週間前からだ。


 この期間の過ごし方如何でテストでの順位が大きく変わる人も居る。

 ――もちろん、基本的には下がる方向にだが。


「今回みたいに、鍵なら俺が神村先生から直接借りれば良いだろうし」

「それナイス!」


 グレイトー! と添えてエリーがサムズアップ。


「私も乗っかろうかな。正直、このレポート不安だったんだよね。でもこんなにサクッと出来上がっちゃったし」――と、早希ちゃん。

「わりとそれぞれ得意科目違ってそうだから、教え合いもできそうだよね」――と、歌織。

「異議無し。部活休みのときは時間を持て余し気味だから、私も助かる」――と、結花。

「みんなと話せるのも楽しいしねー」

「……せめて勉強に絡めたこと言ってくれない?」


 神流らしいけど。


「そういうミズキはどうなのよ?」

「ボク? ……賛成だよ?」


 神流にはツッコミを入れたものの、内心同じ事を思っていた。

 何だか楽しくなりそうだ。

 そういう楽観的観測に基づく予想図のようなものが脳裏に出来上がってきていた。


「ってことは、全員異論無し?」

「無し!」


 1度限りと思われていたレポート片付け会が、正式に勉強会へと発展を遂げた瞬間だった。

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