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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (1) / Pathetic Prelude〜  作者: 御子柴 流歌
1-2. 雨音はショパンの調べ

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1-2-21. 集合!

 翌々日、水曜日。


 火曜日の朝のうちに募集をかけたレポート処理会は、最終的に参加者が9人となった。

 やはり困っている人はそれなりに居たらしい。


 今週は土日にも部活があり、平日の休みも本日水曜日だけだ。

 部活動に勤しむ生徒が余裕を持ってレポート課題を片付けられる日というのはかなり限られている。

 そんな中、互いに意見などを出し合いつつ集中して出来るかもしれないというのはかなり魅力的な話だと思う。

 正直、それはボクもそう思っていた。


 あえてこの募集にはグループへのダイレクトメッセージなどは使わなかった。

 これはこの勉強会創設メンバーである6人――ボク、神流、佐々岡くん、和恵さん、エリー、早希ちゃん――の総意だった。

 もしこれで音楽室がいっぱいになるくらいに集まってしまったりした時には、先生方に言っていたことと違うではないかと怒鳴られても一切言い訳が出来なくなってしまう。

 ひと桁の人数を保てたのはとてもバランスがよかったと思う。


 ちなみに、追加された3人を集めてきたのは、神流だった。


 彼女が引き連れてきたのはいずれも7組以外のクラスからで、さらに言えばその3人ともが違うクラス。

 しかも、みんな成績上位側に位置する子だ。


 高島神流はなかなかに機転の利く娘だった。

 要領が良いのはもちろん、上手にその場を立ち回ることにも長けている。

 ただのやかましいだけの娘ではない。

 1人ずつ別々のクラスから連れてきたのだって、話が輻輳してあまりにも多くの部員が来てしまわないように、巧いこと調整したのだろう。


 しかしながら、だ。


 哀しいかな、そんな神流の魂胆が手に取るようにわかるような気がした。



 ――これは結局『スカウティング』なのではないか、と。

 ――――()()()()()()()()()()()()()()()()()を選抜してきたのではないか、と。



 そう思えてもしまうのだ。



「ミズキー、早く行くよー!」


 手早く荷物をまとめた神流が、教室後ろ側の扉の向こうから呼びつける。

 本当に乗り気だ。

 その乗り気をもう少し定期試験のときにも見せてくれれば、ボクとか玲音がほんの少しだけでもラクになれるのだけど。


「あ、もーちょっと待って」

「……何。ロッカーの整理?」

「違う違う、今日のレポートやるときに使おうと思ってた資料、昨日のうちに忘れないようにと思って持ってきておいたんだよ」

「準備いいねえ。……あのー、ミズキぃ」


 何か胡散臭い芝居をしている。

 少しだけ上目遣い、手はおなかの辺りでもじもじとさせている。


「見せろ、っていうことでしょ? そりゃもう、勉強会だし」

「あ、マジで?」

「独り占めしたら勉強会にならなくない?」

「ありがとーミズキ!! マジイケメンだわ、アンタ」

「……そりゃどーも」

「あら、ツレナイ」


 台詞自体は残念そうだが、その顔を見れば完全に冗談なのがわかる。

 神流ももちろんそのつもりで言ってきている。

 もはや定番の流れだ。


「うん。……予想はしていたけど、やっぱミズキ、資料の集め方ヤバいよね」

「……そう?」


 ロッカーから引っ張り出した資料を見て、神流は少しばかり頬を引き攣らせた。

 改めて自分の手の中にある資料を見つめる。

 A4サイズの用紙で、厚さは1センチくらいだろうか。

 自分の部屋で見つけたよくある薄手のクリアファイルに突っ込んできたものの、明らかにキャパシティオーバーだったようで早くも端の辺りが変形している。


「コピー用紙の所為だと思うけどね。安い用紙に入れ替えるの忘れちゃってさ」

「いやー……、それはどうかなぁ。私にはそれだけが原因には見えないんだけどー?」


 そう言われると、完全否定は難しくなってしまう。


 少しでも関係ありそうなところは、使う使わないを問わずそれなりの分量を余さずコピーしてきたと思う。

 こういう資料は蒐集しすぎることは無いと思っている。


「あとは、おっけー?」

「うん、大丈夫。行くかー」

「いぇーい」

「あ、ふたりとも部活?」


 互いに若干勢いの無い返事の応酬をしたところで、通りすがりに箒を持った仲條さんが声を掛けてきた。

 今日は彼女たちの班が教室の掃除当番になっている。


「んー……、今日はちょっと違うんだよね」

「え? そうなの?」

「部活休みだから、ちょっと何人かで集まって勉強会的なことをするのよーん」

「わ、偉い」

「でしょー?」


 感嘆する仲條さんに、最上級のドヤ顔を見せる神流。

 腰に両手を当てるのも忘れない。


 そこで謙遜しないのがスゴい。

 ――レポートすっぽかすよりは確かに余程偉いのだが。


「がんばってねー」

「ありがとー」

「さんきゅー。……ほらほら、行くよー!」

「はいはい」


 ぐいぐいと神流に背中を押されつつ仲條さんの楽しそうな笑い声に見送られて、勉強会会場になる第2音楽室へと向かった。







「早いねー、助かるー」


 2音の前には既に神村先生から鍵を預かっている佐々岡くんが待機していた。

 神流の声に気付き、こちらに向かって手を振っている。


「一応半分くらい来てから開けようと思ってね……と、ウワサをすれば何とやら」

「ん?」

「やっほー。神流、ありがとうねー」

「私たちも参加させてもらうよ」

「なんもさ。こっちこそありがとうだよっ。来てくれて助かるー」


 3組の大政歌織に、4組の赤瀬川あかせがわ結花ゆか


「よかったー、2音だったか1音だったか忘れちゃって。こっちでよかったんだよね?」

「あってるよー」


 さらに後ろから来たのは、8組のさわ好海このみ


 この3人こそが、神流が自らスカウトしてきた面子だ。

 先述の通り、成績優秀組である。


「来るついでに2組寄ってきたけど、和恵さんとエリーは掃除終わったら来るって。早希ももうちょっとしたら来れるらしいから」

「じゃあ、もう入っちゃっていいかな?」

「いいともー!」

「……懐かしっ」


 神流の威勢の良い返答に思わず小声でツッコミにも似たようなつぶやきを漏らしてしまったが、佐々岡くんが解錠し扉を開ける音のおかげでボクの声は神流の耳には入らなかったらしい。

 神流のことだ、聞こえていた場合何らかの反応をこちらに見せるに決まっている。

 反応が無かったことに安堵しつつ、彼らの後について音楽室へと入った。

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