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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (1) / Pathetic Prelude〜  作者: 御子柴 流歌
1-2. 雨音はショパンの調べ

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1-2-XX. ランチタイムの訪問者

 青空を見るのはかなり久しぶりな気がした。


 澄んだ空気は上空まで碧に染め上げている。染め残しはほとんど見られない。


 ここ最近は雨が多かったり、そうでなくても重たい雲が街の空気を支配していたので、少し気持ちも身体も軽く感じていた。


 野球部の集まりがあるとかで、教室に彼の姿はない。3時間目の授業が終わった瞬間にはお昼ご飯を机に広げ終わっており、私がお弁当のおかずを1品食べ終わるとほぼ同じくらいに食べ終わり、颯爽と集合場所へと向かっていった。


 私の『行ってらっしゃい』は果たして彼に届いていたのだろうか。



「せーかちゃーん、こっちおいでー」

「あ。うーん、今行くー」


 危うくまたしても孤食化しそうになっていたところに、すみれちゃんが声を掛けてきてくれた。渡りに船。すみれちゃんの横の席をお借りすることにする。


「祐樹くんって、割と聖歌ちゃんを放置しがちだよね」

「それは仕方ないよ。野球部って結構集まり多いみたいだし」

「あの件? 次のテストで赤点混ざったら云々っていう……」

「んー……、今日はそういう話じゃないっぽい」


 一度閉じた弁当箱の蓋を再度開けながら答える。


 今週の練習メニューについての話がある、とか言っていた。

 今日は久々に外での練習ができるのではないだろうか。

 基礎練習が大事であることは頭では理解できても、やっぱりボールを使った練習を多くしたいはずだ。

 これからの季節は雪上練習になるようなことも言っていたし。

 外での活動がメインになる部活動、冬期間の宿命だった。


「聖歌ちゃん、またひとりにされた?」

「僕らも相席良いかな?」

「どーぞー!」

「うん、いいよ」

「サンキュー」「ありがとねー」


 購買から帰ってきたらしい小野塚(おにょD)くんと、その横には新藤しんどう政雪まさゆきくん――小野塚くんの後ろの席に座る、バドミントン部所属の男子――だった。


「さっき祐樹とすれ違ったからさ。急いでたみたいだったから話訊けなかったんだけど……」

「また部活の集会みたいよ?」

「忙しいな、野球部」

「最近けっこう大変そうだよねー。弟に、高校の野球部ってこの時期どういうことしてるのか訊いてきて、って言われてるから今度訊いておかないと」


 たぶん中学よりは大変なんだろうけど――とサンドイッチにかじりつきながら、新藤くんは言う。


「え? どうしてまた」

「ウチの弟野球部だったんだけどさ、月雁ここに来たがってるんだけど」

「あれ? そうなん? 知らなかっ……あ、やべ」


 口の端からたまごサンドの中身をちょっとだけこぼしながら小野塚くんが驚く。


「きたないなー。……で、それ私も初耳だわ」

「……そういえば言ってなかったかも。今、中3でこの前引退したところだけど、サウスポーピッチャーでさ」

「マジで!? ピッチャーなの? なにそれかっこいいじゃん!」

「テンション高いな、お前」

「そりゃーアガるでしょ。だって、政雪くんの弟さんでしょ? しかもピッチャーとか、絶対クオリティ高いに決まってるじゃん」

「……何だよ、クオリティって。何のだよ、クオリティって」

「ねーねー。身長どれくらい?」

「えー……何センチとかはわかんないけど、抜かれてはいる」

「マ・ジ・で!?」


 珍しく呆れた感じの小野塚くんに、その様子を全く気にすることなくさらにハイテンションなすみれちゃん。


 たしかに、すらっとした感じで爽やかな雰囲気の新藤くんに似た印象であることを前提にすると……、すみれちゃんが色めき立つのも無理は無いかもしれない。


「写真とか無いの?」

「今は……無いかな」

「今度見せて!」


 かなりの食いつきを見せるすみれちゃん。

 興味津々なんてレベルじゃない。


「いいよー。……そういえば、ちょっと前の新聞の切り抜きがあったっけ」

「え。新聞に載ったの?」

「夏の区の大会で優勝したからね」

「……やべえヤツだ」

「自慢の弟だよ、マジで」


 思わず、という感じで小野塚くんが溢す。

 ――言葉と、たまごを。


 本当に自慢なのだろう。

 弟さんの事を語るときの新藤くんの目がとても嬉しそうなのだ。

 心の底から応援しつつ、尊敬もしているような。

 でも、すごくかわいがっているのが伝わってくる。


「っていうかさ。それくらいの力あるなら私立の特待取れるんじゃないの?」

「話は来てるんだけど、政宗まさむね……ああ、弟の名前『政宗』っていうんだけど、アイツそんなに私立に行くのに乗り気じゃないんだよね。どうも、ウチに来たいのが強いらしくて」

「へえ。……まぁ、それはウチとしては嬉しいよな。良い選手が来てくれるんなら」


 最近は甲子園でも地域代表校として出場した学校は割と上位まで勝ち進んでいることが多い、と彼から聞いていた。それだけこの地域の学校のレベルが上がっているということらしい。野球のことはまだあまりよくわからないのだが、熱弁に押されながらもそれだけは理解していた。



「――――3組の皆さん、どもでーす! カオリ居るー?」

「はーいっ!」

「居たー! ちょっと、こっちこっち!」

「なになにー?」


 何か、嵐のようなものが来て、元気な返事を残した1人を連れて、そのまま去っていたような気がする。


「今のって、……誰?」

「高島か? 高島神流。7組の、吹奏楽部の」

「……うん、たぶん」

「……間違いなく、神流だわ」


 新藤くんの疑問に答える小野塚くん。


 声の主の姿は一瞬しか視界に捉えられなかったので曖昧な答えになってしまったが、あたしの中の疑念は確実に確信へと変わってきている。


 扉の側からは、談笑というには甚だ破壊力に満ちた声量。


 いつでもすごく元気な印象が鮮烈だし、何よりも――。


 よく見ているから、よくわかる。


 あれは確かに、7組で吹奏楽部に所属する高島神流ちゃん。


 そして、彼女に連れて行かれたのは同じく吹奏楽部の大政おおまさ歌織かおりちゃん。


 ふたりとも吹奏楽部として腹筋トレーニングは怠っていないのがよくわかる。

 ――笑い声が、すごい。

 しっかりとおなかから出ている。見習わなければと思わずには居られなかった。


「ま、とにかく写真な。忘れなければ明日とかにでも」

「ありがとー。やっば、めっちゃ楽しみなんですけど」


 すっかりハイテンションのすみれちゃん。


 たしかに、区大会を勝ち進んだピッチャーである新藤くんの弟さんのことは気になる。気にならないなんて言えない。


 だけれど。それ以上に――。


 廊下で神流ちゃんと歌織ちゃんが話している内容の方が気にかかった。


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