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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (1) / Pathetic Prelude〜  作者: 御子柴 流歌
1-2. 雨音はショパンの調べ

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1-2-13. みやげ話はその後で

 祐樹の予想は基本的に正解だった。


 放課後。今日の割り当ては第2音楽室になっていることは前もって伝えておいたが、祐樹は忘れずにしっかりとコピーをし終わった日本史の板書ノートを返しに来た。

 来る途中で吹奏楽部や合唱部の2年生が持っていた見学旅行土産を視界に収めたらしく、昼休みに見せてきた羨望の眼差しをさらに強めていたのが印象深い。


 ちなみに、この日の夜のこと。

 結局気になっていたので『野球部の方のお土産はどうだったか』と『木刀を買った先輩は居たのか』と言う質問をダイレクトメッセージで振ってみた。

 数分の後に返ってきたメッセージに依れば、『生八つ橋が有っただけ予想の数百倍マシだった』ことと『4人居たが、学校に持ってくることは禁止されていたので写メだけ見せられた』とのことだった。

 ご丁寧に祐樹は、それはそれは勇ましく自慢げに木刀を掲げる4人の先輩の写真を転送してきた。

 一体生八つ橋以外に何が配られたのかは、最後まで教えてもらえなかった。


 翌日、同じく野球部の玲音に聞いてみても色の良い答えは返ってこなかったところを見ると、少し残念だがこれは『知らぬが花』案件として霧の中に打ち捨てるのが正解なのかもしれない。

 生憎、祐樹と玲音以外に仲の良い野球部員が居ないので、他に探りを入れられる相手が居ないのだ。

 それにしても、あんなにいろんな感情が綯い交ぜになった玲音の顔は見たことが無かった。

 彼にあのような顔をさせるモノとは。

 ある意味、七不思議に匹敵するレベルの謎だった。


「はいはい、お土産気になるのはわかるけど、5時まではしっかり練習するよー!」


 部長の藤林ふじばやし香奈かな先輩のよく通る声。

 2音の空気はいつもよりは緩やかにではあるが、それでもしっかりと引き締まっていく。

 部長とは斯く在るべき哉、なんて思ってみたりする。


「5時からだったらいくらはしゃいでもオッケーだから。メリハリが大事!」


 飴と鞭、なんて言葉が容易に浮かんでくる。

 この人は部員達の操縦が巧い。

 だからこそ部長に任命されたのだが。


 ところで『いくらはしゃいでもオッケー』に対して先輩数人が盛大に呼応しているのは何故だろうか?


「……ごめん。2年生はしっかりしてよ」


 ――ですよねー。


 なんでだー、と反論がちらほらと聞こえるが、そのどれもが本気では無い。

 もちろん部長のトーンも本気の物では無い。


「よーし、集まってるかー?」


 一頻り笑いが治まったところで神村先生の登場だ。

 少しだけ扉の前で待ってくれていたような気がするのは、たぶん気のせいではないのだろう。


「おお……、随分大量だな。去年より多くないか?」

「そんなことないでーす!」

「そうでーす!!」


 音楽室最後方に置かれている机には、こぼれ落ちそうなくらいの袋や箱やらが載せられている。

 中には若干不穏な雰囲気を醸し出しているモノが混ざっているような気がしてならないのだが、それは後で解ることだろう。

 めちゃくちゃ気になるけど。

 明らかに京都らしくはない袋だし。


 しかし先輩方のテンションの高いこと。

 旅行疲れなどとは無縁だと言い切れる。

 むしろ、旅行によって思いっきりリフレッシュできたことによって、余計に元気になっているようにしか思えない。


 小さくため息を吐いた神村先生は半ば諦めたような顔をしている。


「……そうとは、ちょっと思えんのだが。まぁいい。まずは各パートごとで、いつも通りに始めるぞ。2年生は久々だから今日は基礎練だけにしておこう」


 ハイ、と揃った返事。

 ともすれば体育会系かと勘違いする人が居るかもしれないくらいには、強く響く揃った声。

 腹式呼吸やロングトーンで培われたものだ。

 一朝一夕には身につかない。


「あと、今日はちょっと臨時で職員会議入っているから、あとは部長とパートリーダーに任せるからな」


 再度の返事。

 今度は部長とパートリーダーのみ。

 それでも充分な声量だ。


「……で? 何時からアレやるんだ?」


 藤林先輩を向きつつ、神村先生は顎で土産の山を指す。


「一応5時くらいからの予定にしてます」

「じゃあ、その5分前くらいまではしっかり練習してくれ。そのあとは……」


 周囲を軽く見回す。

 そして鼻で笑い、さらに苦笑いを追加。


「わかったわかった。それこそ、羽目だけ外さないようにしてくれりゃいいわ」


 返事。

 ただし今回は「いぇーい!」の大合唱。

 誰ひとりとして間違うことなくノリきった辺り、さすが我が部と言えると思う。親しき仲にも礼儀ありとは言うが、やはりそれ以前にみんなの仲が良くなくては。


 いつもの厳しい印象もどこへやら。

 これにはさすがの先生も諦めたようで、軽く肩を落としながら会議へと向かっていった。しかし、その後ろ姿は何となく楽しそうなものに見えた。


「あー。割とご機嫌だわ、アレ」


 不意に横から声がした。先生の長女である春紅はるか先輩が、ちょっぴりニヒルな人を装ったような笑みを浮かべている。

 ――そういう先輩も楽しそうに見えますが。


「あ、やっぱりそうなんですね」

「わかる?」

「何となくですけど。……先輩も似たような感じですしね、今」

「え」


 唇を歪めつつ、単音で返事。

 ――え、何か問題発言でしたか?


「え、やだ。同じとか、ちょっとやだ」

「そんな、『お父さんの下着と一緒に洗濯とかヤダ』みたいなノリで言わなくても」

「その時期はもう終わってる」


 ――経験済みか。


「何つーの? 中年のおっさんと同じ感じとか、ちょっと無理だわ。うーわ、瑞希くんに言われるのツラーい……。帰ったら女子力磨こ……」


 げんなりしつつも少しだけ目の奥に火を点す春紅先輩。


 ――だけど、すみません先輩。

 その言い方だと、絶対帰ったら宿題も放り出して速攻でゲームをやってしまう小学生男子と同類にしか思えません。


 とはいえ、数秒前に不用意な発言で若干傷つけてしまったので、自分の口を堅く綴じておくことにした。


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