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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (1) / Pathetic Prelude〜  作者: 御子柴 流歌
1-2. 雨音はショパンの調べ

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1-2-8. 合コンマスター爆誕の危機?

 気付けば活動限界時間を15分もオーバーしていた。

 一応時計は見ていたような気がしてはいたのだが、結果から考えればあまり思考に訴えかけては来ていなかったのだろう。

 そうでなければ、こんなに片付けの時間でバタバタする必要なんてないのだ。


「ごめんねー。最後どたばたさせちゃって」

「いえいえ、それだけマジだった、ってことだと思うんで」

「マジメー」

「いやいや」

「いやいやいやいや」

「いやいやいやいやいやいやいやいや」

「……ごめん、いきなり変なゲーム始めさせないで?」


 ワードの発音回数を2倍にしていくゲームなんてする気は無い。


 里帆先輩と片付けをしているところにいきなり首を突っ込んできた神流にツッコミ返しをするのは、当然の行動だと思う。


 今日はいつも以上に有意義な時間だったと思う。

 それは、同じオーボエ担当のメンバーの顔を見ればよく分かる。

 いつにも増して充実感に満ちた顔をしていた。


 後輩の話をあまり聞いていないような態度だった里帆先輩ではあったが、いざ練習時間が始まると現役だった頃の血が騒いだのか、すっかり真剣な眼差しで1年生部員を見つめ、タイミングを見計らって過度にはならない程度のアドバイスをしてくれた。


 全く以て先輩達はいつもこうだ。

 ひとたびスイッチが入れば、そこに向かって全力投球。

 入学から半年も経ち、学校祭や夏季体育祭を経て、今ではもう完全に理解できる。

 これは部活の雰囲気でもあり、校風でもあるような気がしている。


「あ、そのアイディア頂きっ!」

「何の?」

「え? そのゲームのアイディア。打ち上げとか合コンで使おうかな、って」

「あれ? カンナちゃん、まさか合コンマスター?」


 ――そこに食いつくんだ、里帆先輩。

 わりと予想通りだけど。


「へっへー。実はですね、中学の吹奏楽部と来週プチ同窓会がありまして、何か面白いことできないかなー、って思ってたわけですよ」

「なるほどね! たしかに何か余興っぽいのあると良いよね、そういうときって」

「……そのままだと難易度の割にめんどくさそうだと思うんだけどな」

「そう? 何で?」

「単一ワードの連結は間延びしやすいと思うよ? 『10回クイズ』みたいな感じなら悪くないけど、下手すると無限に続きそうな気がするし。やるんだったら、似たような言葉を組み合わせてやるとか、早口言葉っぽいのにするとか」

「おー、なるほど」


 手の平にメモを取るようなジェスチャーをする神流。

 出来れば後片付けの手を止めないで欲しい――というか、そもそもの話、自分のグループの作業を終えているのだろうか。


「あれ? これはまさかミズキくんの方が合コンマスター説、有る?」

「は!?」


 またしても、死角から音速の攻撃。


 久々の邂逅とはいえ、いくら何でも里帆先輩からの口撃に対しての耐性が欠落しすぎな気がしてきた。

 先輩たちが現役だった頃は、もう少しばかりは巧く対応できていたと思っていたのだが。

 ――もしかしたら、そもそもそんなことは無かったという説が浮上してくる。


「へー。ミズキってば、そうなの?」

「それは無いっ」


 そう言ってから、あまり力を込めて否定するような内容でも無さそうな気がしたが、まぁ良い。


 そもそも合コンとかそういうことに気を向けている時間がない。

 今日だって、部活が終われば帰宅途中に昨日買い忘れていた物資の調達のため、スーパーに買い物に行かねばならないというのに。


 休日だって例外では無い。

 食材や生活必需品の調達を、適切なボリュームでする必要がある。

 車を運転できればそんなことを考えなくてもいいのだが――母がこちらにいるときであれば何も問題は生じない――生憎まだ免許を取れる年齢ではない。

『軽くて乗りやすいのが便利でしょ?』と、特に何でもないタイミングで母が買ってくれたクロスバイクで、大型のリュックを背にして、安売りのチラシが折り込まれれば適宜そこに赴きお店をハシゴしなくてはならないのだ。


 ――もちろん、それもある種の言い訳に過ぎないのだが。


「コイツの場合は合コンなんてする必要無いっすから」

「ちょー、待て待て。爆弾置いてくなって」


 譜面台を運びながら背後を通過していた中のひとりがとんでもないことを吐き捨てていった。

 今のは誰だ。

 言葉の内容に気取られた所為で声まで認識しきれなかった。

 判れば後で軽く()()をしてあげたいところなのだが。


「ははー、なるほどなるほど。わざわざそんなところに顔を出すまでもない、と」

「そっかー。ミズキくんもオトナなのかー。なるほどねー」


 悪代官に入れ知恵する越後屋のようなものすごく根性の悪い笑みを浮かべながら、神流はボクの脇腹を肘で小突く。

 正面からも同じような表情で里帆先輩が値踏みするようにこちらを見ている。


 むず痒さのようなものを伴って、自然とため息が漏れる。


「ウソウソ、イッツ・ツキカリアン・ジョーク!」

「似非アメリカンジョークみたいな言い方やめれ」


 そして、月雁高校にそんな文化など存在しない。


「……ふたりのボケとツッコミ、ちょっとレベル上がった? テンポ良くなったよね」

「同じクラスだしねー」

「まぁ、そうね」


 ――不本意だが。正直疲れる。言わないけどね。


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