#7 模擬戦 後半
試合の準備場所に着いた時から霧崎刀華は緊張はピークに達していた。
なぜか、理由は決まっている。蓮が自分の戦いを見ることになっているからだ。蓮に自分の刀での戦いを見てもらうのはじつに5年ぶりである。蓮に強くなった自分を見せる絶好の機会でもある。技などを間違えて負けても、きっと蓮は優しい言葉をかけてくれるはずだ。
蓮はそういう奴だし‥‥‥‥。
でも、そんなことは私のプライドが許さない。相手の子とは何度も戦って一度も負けたことがない。
だから、勝てるはずだ。懸念材料は緊張しすぎていることぐらいだ。
前にやっていた試合が終わった。
よし、次だ。落ち着く為に深呼吸してカプセルに向かう。
「刀華、まだランプが赤です」
ペアの子が冷静につっこんでくる。
あっ、やば。カプセルは上のランプが赤だと作動しない。赤の時は、フィールドの整備などをしている。青になったら準備が終わった合図でカプセルも作動する。
いつもはちゃんと確認するのに。
「刀華、神崎君が来て緊張しているのはわかるけど、もうちょっと落ち着いたら」
ペアになってくれた子が呆れた表情を見せていた。ペアの子はこの隊の副隊長でこの学校でできた親友だ。
「ごめん」
そうだね。落ち着かないと。
「はぁ。全く、あの男のどこに刀華が惚れているのか。あの男の良さが私にはわからないのですけど」
副隊長が酷いことをいってきた。
「かっこいいところとか、優しい所とか」
真剣に答える。
副隊長がため息をつくながらジロリとみてくる。
「私、神崎君と同じクラスだけど彼のそんな所見たことないんですが」
「今は少し薄れているからだよ。きっと」
「そうですか?」
「うん、うん。きっと蓮のそういう所みたら希美も気にいるよ」
「そうだと、いいですけど」
ようやく、ランプが青になった。
二人ともカプセルに向かって歩く。
「刀華、足引っ張らないでよ」
いつもの私だったら『希美こそ』と返すのだが、さっきの感じだと引っ張るかもしれない。
「が、頑張る」
希美はまた『はぁ』とため息をついた。
そして、フィールドに着いた。
「刀華、私は魔法の方倒すから、斧の方お願いします」
希美が笑顔で言ってきた。
「えっ、なんでいつも逆でしょ。」
「何言ってんですか。魔法の方担当したら、魔法を避けたり切ったリして終わっちゃうじゃないですか。それより、力のある方と戦う方が、私、あんな大きな男でも倒すことができるっていうアピールになるのではないですか?好きな男の前ぐらいかっこつけてきたらどうです?」
希美は最後に滅多にしないウインクをしながら説得してきた。好きな人と言われ、身体が熱くなる。
「ま、毎回言っているけどそ、そんなんじゃないって」
「その反応と。いつもの神崎君を語っている姿からしてバレバレですから。いい加減認めてください」
「う〜〜〜〜」
やばい、集中できない。
「きて、千鳥」
昔、武器作りに失敗していた頃、蓮に『こうするとやりやすいんじゃないか』と言われて、やり始めた方法だ。
やり始めた頃は、恥ずかしかったがこの学校に来てやっている人が一定数いたので今はその感情はない。
もうすぐ、開始か。緊張する。
「がんばって、刀華。神崎君にいいとこ見せてきてくだい」
希美が細剣を構えながらからかってくる。
「こんな緊張している時に、もっと緊張させること言わないでよ」
がんばって、刀を構える。
「模擬戦、スタート」
ついに、開始の合図がなる。希美は宣言どおり魔法の方につっこんでいった。希美はいつも通りだし大丈夫だろう。問題は私だ。
斧の男と向かい合う。その後、緊張をほぐすために動かず、相手の出方を待つことにした。相手の斧使いも出方を伺っているのか動いてこない。
すこしすると相手が動いた。斧を横に振る。それぐらいは余裕をもってかわす。斧は一回の力はでかいがそのぶんスピードはない。斧の人に向かって刀を振りかざした。斧の男がふと笑みを浮かべる。その瞬間、斧が戻ってくる。敵も一発で決められるとは思っていない。いそいで、振りかぶっていた刀でその斧をガードするが。
「くっ………」
斧のパワーにふっとばされる。
斧の男はその隙を逃さず斧を地面に突き刺す。慌てて着地の瞬間、横に飛ぶが間に合わない。左肩のに切り傷ができる。
技名〈ソリッドアース〉
斧を力いっぱい振り下ろすことで直線上に空気の刃を飛ばす技だ。
しかし、傷の痛みで眼が覚めた。
男に向かって走る。また、斧を横に振る。今度は後ろに下がりながら、振られてくる斧の上を叩き、地面に突き刺す。もう、斧は間に合わない。
〈刹刃一襲〉
相手を切り裂く。そして、勝負はついた。
「勝者、霧崎チーム」
審判がコールする。
「お疲れ様」
希美が肩を叩きながら声をかけてくれた。
はぁ。試合には勝ったけど。緊張して一撃食らうとは情けない。蓮にかっこ悪いところ見せちゃったな。
ふぅ、刀華も想像通り、かなり成長しているようだ。
はじめこそ、慌てて調子を崩していたものの、一度傷を食らってからは多分いつもの調子に戻ったんだろう。斧を叩くところにもそこに行くまでも無駄な動きはなかったし、最後の〈刹刃一襲〉も早くなっていた。
刹刃一襲は俺が最後に教えた技だけど、ここまでスピードを上げたか。
遠いな‥‥‥‥‥‥刀華まで‥‥‥‥。