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#18 初デート(仮) カフェ


「失敗したな。これは」


少し遅めの昼食は結城さんに教えてもらった最近女子に人気のあるカフェに行くことにした。普段は行列のできる繁盛店らしいのだけど今日は並ばずに店に入ることができた。流石に中は満員だったが。

刀華も「以前から気になっていた」と喜んでいたからよかったが、入ってからが地獄だった。

中はカップル、カップル、カップル。多分、俺らもそうみられているのだろう。

唯一の救いはその中にシュルツ第1騎士学校の生徒がいなかったことだ。刀華はもちろん学校で有名だし、俺もある意味有名である。見られたらすぐ噂になるだろう。


「蓮、スパゲッティひとくちもらうわよ」


刀華が俺の皿からスパゲッティをフォークですくう。しっかり巻きつかれた大量のスパゲッティが俺の皿から消える。


「ちょっと待て!!それ、絶対ひとくちじゃないだろう!!」


「うるさいわね〜。人参(にんじん)あげるからそれでちゃらってことでいいよね」


刀華はスパゲッティを食べると自分のハンバーグのトッピングである人参をすべて俺の皿に移してきた。


「おい、それただ刀華が人参嫌いなだけだろ」


刀華は昔は人参が嫌いで毎回残していた。


「別に嫌いじゃないわよ。ただ、食べる時ちょっと気後れするだけよ


「それを嫌いって言うんだよ」


俺はそういいながら人参を頬張る。俺は別に人参嫌いじゃないから別にいい。



「お待たせしました。当店特製スペシャルパフェでございます」


結城さんの情報によればこのカフェは特製パフェが人気らしい。なので頼んだ。俺達の前にパフェが置かれる。ちなみに俺はイチゴ、刀華は抹茶(まっちゃ)だ。さっきも思ったけど本来ならデートで食べる物、逆じゃない?女子が昼からハンバーグ食べないよ。普通。


「これがあのパフェね。女子の中で美味しいって有名だったの。蓮、よくこの店知ってたね」


刀華の目はもう多分パフェしか見えてないだろう。


「俺の同室の新聞部のやつが教えてくれたんだよ」


「あー、五十嵐ね。たしかに彼なら知ってそう」


さすがに女子に聞いたとは言えない。


その後、2人でパフェを食べる。


ほのかに感じるイチゴの味がかなり美味しいかった。これは、有名になる訳だ。半分ぐらい食べてから刀華の手が止まり隣の席を見ている。


「どうした?お腹いっぱいになったのか?」


ハンバーグなんて食べるから。


「いや、そういう訳ではないのだけど。」


俺もつられて隣の席を見る。そこにはカップルと思われる男女がパフェを食べさせあっていた。いわゆる『あ〜ん』というやつだ。


「もしかしてあれがやりたいのか?」


「いや、別に。ただ、ちょっと好きな人にやられているのを想像しちゃって」


刀華が赤くなって照れる。刀華好きな人いるのか。なんかムカムカする。

多分、嫉妬(しっと)ってやつだ。


「やってみるか?」


「えっ!蓮はいやでしょ。あんな恥ずかしいことするの。それに私となんて」


「俺は全然平気だけど」


むしろ刀華とならしたい。


「いや、でも‥‥‥‥‥‥」


やっぱり、踏ん切りがつかないか。しょうがない。俺がしなければならない状況を作り出してあげよう。


「じゃ、俺はここでボウリングの罰ゲームのお願いをします。俺たちもあ〜んしましょう」


これで楽になるはずだ。


「そうなら、しょうがないわね〜」


しょうがないと言っているわりには刀華の顔はかなり緩んでいた。そして、机の下でガッツポーズしたのが確認できた。本当に素直じゃない奴だ。


「ほら、口開けて。私からするから」


刀華が自分の抹茶パフェをスプーンですくい準備する。

俺は口を開けた。刀華の顔が近づいてくる。


「はい、あ〜ん」


俺の口の中に抹茶パフェが入れられる。やっぱり、恥ずかしいなこれ。


「じゃ、次は俺な。刀華、口開けて」


自分のイチゴパフェをスプーンですくう。刀華が口を開ける。


「あ〜ん」


刀華の口にイチゴパフェを入れる。


「美味しいね。この味も。ていうか、蓮、真っ赤」


「恥ずかしいだからしょうがないだろ。そういう刀華も赤いけど」


「やっぱり、恥ずかしいかったから」


そういいながら、刀華が顔を伏せる。


「で、交換するか?」


「いいや」


刀華はまた下を向きながら抹茶パフェを食べ始めた。俺も自分のイチゴパフェを食べようとした時、自分の失敗に気がついた。


店員さんを呼ぶ。


「どうなさいましたか?」


「すみません。もう一本スプーンもらっていいですか?」


「はい、かしこまりました」


よし、これで大丈夫だ。


「どうしたの、蓮?スプーンなんかもらって?」


刀華がパフェを食べながらきく。


「いや、さっき間違って自分のスプーンであ〜んしちゃったから。」


「えーーーーーーーーー!!!!」


刀華は叫ぶと同時に急に食べるのをやめ、下を向いてしまった。


「どうした?刀華?」


「なんでもない。」


なら、大丈夫かな。また、あ〜んやりたいのかと思ったけど違うと思う。というか違うことを信じている。あれをもう一回やる勇気と気力は無い。


『蓮と間接キス。蓮と間接キス‥‥‥』


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