#12 第8隊の現状
「全く、何かと思いましたよ。放課後、時間空いてますかなんて言われて」
山中先生は呆れたように話す。
「しかも、空いてますって言ったらどこか二人きりになれる場所ありますか?ってほぼ告白前に言う言葉ですよ」
「すみません」
「まぁ、先生でよかったです。今後、告白と受け取られかねない言葉は慎むように。わかった?」
「はい、わかりました」
そういえば、この前刀華にも勘違いさせたよな。俺の言い方誤解を受けやすいのかな。気をつけよう。
「で、本題は確か霧崎さんの周りで起こっていることについて知りたいでしたっけ。その件に関しては了解しました」
「本当ですか!!」
蓮は机から顔を乗り出した。
よかった。これで少しは刀華を助けられるかも知れない。
「落ち着いてください。その前に2つ質問させてください」
「わかりました」
「1つ目、なぜ私なんですか。本人に聞けばいいし、それに同じクラスには辻さんがいるではないですか。彼女達に聞けばいいのでは」
これは、簡単だ。
「本人である霧崎さんに聞く訳にはいきません。あと、辻さんですが昨日ちょっとギクシャクしてしまって。こんなことを聞ける状況ではないと思いました。なら、第8隊の顧問である先生が1番事情を知っていると思ったので」
「あ〜〜。昨日の〈神崎、霧崎を押し倒し事件〉のことで、辻さんとギクシャクしてしまったと」
蓮の顔が赤くなる。
改めて言われると恥ずかしいし、申し訳なくなるなこれ。
あとなんだよ、その事件の名前。〈霧崎 刀華 銃撃事件〉とかじゃダメなの?
「では、2つ目です。こちらの方が本題なのですが、なぜ霧崎さんのことをそんなに知りたがるのですか。昨日、お世話になったからだけではないと思うのですが?」
やっぱり、言わないとダメか。まぁ覚悟していたけど。刀華も辻さんに言っているし先生は信用できるからいいよね。
「わかりました。その代わり誰にも言わないでください」
「わかりました」
先生はうなづいてくれた。
「俺と霧崎は小学校ころ仲良かったいわゆる幼馴染なんです。なので、霧崎が落ち込んでいたらその原因を知りたいんです」
「え…………」
そうだよな。いきなり、学年一の落ちこぼれと学年一と思う才女が幼馴染って言われたら戸惑うよな。
「なんで、誰にも言っちゃいけないのですか。別に普通の理由ではないですか」
「いや、俺の幼馴染と知られたら周りの反応が変わるかも知れませんし。俺は彼女に無理をさせたくないんです」
山中先生はため息をついた。
「神崎くん、細かいところで優しいよね」
それは、褒められているのか。
「でも、そのような理由ならわかりました。霧崎さんの周りで起きていること、お話しをします」
「よろしくお願いします」
「神崎くんもクラスルームで行ったので知っていると思いますが今、学校内で襲われる生徒が増えているって」
「言っていましたね。俺も今日襲われましたし」
山中先生が詰め寄ってくる。
「今日、襲われたんですか?大丈夫でしたか?」
「ええ、なんとか。逃げきれました」
「そうですか。良かったです。運良かったですね」
山中先生が俺から離れてモニターに画像を移す。
「3週間前から急に増え始めました。ほぼ1日から3日に1人必ず襲われていました。1人目が森、2人目が人がいなくなっていた広場と遅い時間に犯行があり、また、被害者の全員が足をなんらかのもので撃ち抜かれいたので同一犯だと思われています。昨日、神崎達が襲われたのと同じ犯人です」
昨日の奴そんなにやっているのか。
「でも、そんなにやっていたら犯人が特定されていてもおかしくないじゃないですか」
「それが、この事件の難しいところでね。犯人が使っているのが飛び道具だからそういう武器を使う生徒を見張っていたのだけど見つからなくて。魔法だとほぼ誰でも使えるから」
でも今の話だと霧崎はなんであんなに思い詰めているんだ?
「なんで霧崎はあんなになっているんですか?」
先生は蓮の方を向き直す。
「実は、4人目までは規則性はなかったのですか、5人目から第8隊の生徒だけが襲われていて、第8隊の生徒だけでもう8人の被害者が出ているんです」
「つまり、自分の隊の人が襲われ続けているから刀華は責任を感じていると」
「多分、そうでしょう。それに今日は第8隊でない神崎くんが狙われました。自分のせいで襲われていると感じてしまってもおかしくありません」
山中先生は窓の外を眺める。
「霧崎さんには気にしなくていいって話したんですけど責任感の強い彼女には無駄でした」
先生が窓を開けて、部屋に風が吹き込んでくる。山中先生の長い黒髪がなびく。
「霧崎さんは誰かを頼りたいはずです。幼馴染を神崎くんが少しでも彼女のことをわかってあげて、落ち着かせあげてください。お願いします」
返事は決まっている。
「わかりました。自分のできる範囲で頑張って見ます」