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えろ女の下着

「で、できたーー!!」


希美は自室で呑気に、えろ教の女信者のための試作品を作っていた。

女子の気持ちを高める事必至の作である。

女子とは、かわいいもの、美しいものを目にするだけで気持ちが上がる生き物だ。

希美はこの作品を女信者達に作らせて、商売に繋げるつもりだが、これを見るだけでも、いや自分が作れるようになればさらに、女子の多くは幸せを感じる事ができるだろう。



希美は、早速出来上がったものを見せるために、女中に紫を呼びに行かせる。

しばらくして、襖の外から声が聞こえた。


「えろ様、紫です」

「おお、来たか!入ってくれ」


カラリ

襖が開き、単の下着姿の紫が入ってきた。


「なんで、また下着で来るんだよ!?」

「伽を期待して」

「嘘つけ!からかって楽しんでるだけだろ。私が女としないの、『ユカ』なら知ってるだろ!」

二人はいつの間にか、『えろ様』『ユカ』と愛称で呼び合う仲になっていたようである。

流石は、ズッ友だ。

ただし、女の友情とは、時に残酷なものとなる。


紫は含み笑いで言った。

「うふふ、知ってますよお。えろ様が衆道一筋の男好きだって事は」

「それも、違うわ!!」

「またまたあ、城では有名ですよお?武田様と松平様を湯殿に誘い、お三方で刺しつ刺されつの大乱戦」

「何だ、その噂?!!」

「はいな。私、見てしまいましたの。えろ様達が仲良く湯殿から出ていらっしゃるのを。皆様、何やら頬が上気して、しっとりと汗ばみ、まさに今一戦交えてきたかのようなお姿で……」

「風呂入ったら皆こうなるよね?……ちょっと待って、ユカが見た?」

「はいな。その話を女中に話しましたら、一気に拡散を」

「犯人、お前かよ!!」


顔を手で覆い、床に突っ伏してしまった希美に、紫はしれっと話を変えた。

「ところで、私に何か御用ですか?」



希美は先程のショックを引きずりながらも、なんとか起き上がると、紫に完成した試作品を渡した。

「以前話した、女の気持ちを高める商品の試作だ。ちょっと着けてみて欲しい」


紫は、折り畳まれたそれを広げた。

そして、息を呑んだ。


「ほ、ほわわわあああ……!!何これ!何これえ!!ふ、ふつくしひぃーー!!」



紫の目は、希美から渡された『湯巻き』に釘付けとなった。

希美は、レース編みを駆使した『湯巻き』を作ったのである。



紫の頬が上気している。その眼は輝きながらもうっとりと対象を見つめ、口はだらしなく綻び、涎が垂れそうだ。

希美は確信した。

これは、高値で売れる、と。

「ふふ、かわいいものを見た時の女子の顔をしておるな。どうだ?着けてみたいだろう?」

希美の言葉に、紫はこくこくと頷いた。

「いいぞ。着けて見せてくれ。実際着けたら、予想とは違ったりするからな。女子が服を買う時は、試着が肝要だ」


紫はスパッと単を脱いだ。さっさと湯巻きも外して、素っ裸になる。

男(希美)の前だというのに、なんと色気の無い脱ぎ方か。希美はちょっと呆れた。

当の紫は、もう希美が男である事すら目に入らないほど、新たな湯巻きに夢中であった。

重そうな胸を放り出し、その繊細な織りに引っかけぬよう優しく腰に巻き付け、腰の紐を結んだ。


現代で生きた希美は、どうしても下着は隠すためのものという感覚がある。そのため、腰から脚の付け根辺りまでは、糸の色に合わせて白の布にしたが、そこから下は脚が透けて見えるレースとなっている。


湯巻きを着けた紫は、もったりとした白い胸から優美に腰がくびれ、その白肌に添うように白の布が腰回りを隠していた。だがその白布は、ギリギリの所から白レースになっているためうっすらと艶かしく脚が見え、見え辛いからこそ逆に白布の中身への想像を掻き立てる。

紫は、最高の下着モデルだ。


希美は鼻息荒く賛美した。

「いいじゃん!レース湯巻き、やっぱ思った通り、エロかわだよ!それ、長めに作ってるから、裾からチラ見せしてもかわいいと思う!」

もう、言葉が完全に女子おばさんに戻っている。

乳丸出しの美女と手を取り合って、女子言葉でキャピキャピする柴田勝家。

何から突っ込めばいいのか、わからない。


紫も興奮している。

「これ、これ、素敵過ぎて堪らないですぅ!!なんでこんな素敵なものを考えつけるんですか?!神?ねえ、神なの??」

「神だし。知ってんでしょ?これを考えついたのは、……あー、……」

希美の脳裏に、レース下着を思い付いた時の事が浮かんだ。


「あー、確か久五郎が頭に巻いてるふんどしを見て……」

「……あー、父上の。……知りたくなかったー」

「ほんと、ごめん」


全部、河村久五郎が悪い。



希美は気を取り直して言った。

「河村久五郎に罪はあれど、レースの美しさに罪はないから!紫ならわかるでしょ?美しいレースを纏う時の胸の高なり。男を落とす以外で、女が女として最高に輝く瞬間!」

「わかる!わかり過ぎます!これ、『れえす』って言うんですね。なんと美しい織り……これは、どなたが作ったのですか?私、他にも欲しゅう御座います!!」

詰め寄る紫に、希美は言った。

「私が作った。作り方はえろ教の女信者に教えるから、不器用じゃない限り根気があれば、誰でも作れるよ」

紫は目を見開いた。

「えろ様が、これを?!私にも、教えていただけるのですか?!」

「教える。その代わり、えろ教女信者は、このレース編みを覚えて商品を作って欲しい。糸は提供するし、出来上がったものは買い取る。わかるだろ?レースは、確実に高値で売れる」

希美の真剣な目を見返し、紫は頷いた。

「わかりまする。かような美しきもの、裕福な女なら、金に糸目はつけますまい」


希美は紫を見て笑った。

「それに、このような美しいものを自分で作れるのだ。なんせ、糸と専用の棒さえあれば質はともかく似たようなものは作れるのだからな。内職で金も手に入り、美しいものに関われる。技術も身に付くから、自分のためにちょっとしたレース小物を余った糸で作る事も可能だ。気持ちが高まるだろう?」

紫の目が煌めいた。

「最高に高まりまする!」


「そこでだ」

希美は紫に、顔を近づけた。

「えろ教の女信者を纏められそうな女達を集めよ。レース編みの講習説明会を開く。稼がねばならんからな。この技術、えろ教女信者以外門外不出、買い取るのは柴田のみとする。これを守れる者かどうかは、お主の眼で見極めよ」

「御意で御座います、えろ様」

妖しい笑みを浮かべ、紫は承知した。

「紫、お主をえろ教女信者部総取締役とする。お主が『えろ』の女として輝き、良き手本となるといい」

紫は頭を垂れた。

「有り難く拝命致しまする。ならば、私はこれより、『大えろ女』と称して女信者達を導きまする」

「お、おう……」

(『おおえろおんな』……えろ教女信者のトップみたいな事かな?すげえ、痴女っぽく聞こえるよお!)


『エロの申し子』紫の事だ。あながち、そのイメージは間違ってはいない。


「では、早速他の女信者と繋ぎを取りまする」と立ち上がった紫が、乳丸出しの湯巻き姿のまま出ていこうとするのを、希美は慌てて止めた。

「このような美しいものを身に付けているのですから、皆に見せて自慢したい!」

と、駄々をこねる半裸の紫は、『大えろ女』の称号にふさわしい女である。



後日、紫を通じて開催されたレース編み講習説明会は、失神者が出るほどの盛り上がりを見せた。

特に、試作品の御披露目で、紫が半裸の湯巻き姿を晒した際は、女達の突き抜けた歓声で森部城が揺れ、何事かと駆けつけた男達がラッキースケベ状態のまま希美にぶん殴られる羽目になった。


『血の湯巻きホイホイ事件』はさておき、えろ教女信者は嬉々としてレース編みをマスターし、希美の商売に多大な貢献をする事となり、えろ教女信者の間では、様々なレース小物が流行った。

希美はレース編みに使う糸を捻出するために、武田に生糸のための養蚕を斡旋、比較的海に近い松平には塩害に強い綿花の栽培を頼んだ。


これらの産業はそれぞれの土地に根付き、特産物として武田と松平の財政を潤す事となる。




そして、共存共栄を計る希美達に心火を燃やして見つめる眼がある事を、この時の希美はまだ知らなかった。

昔の女性は、ノーパンが基本です。

下着のようなものとして、湯巻きと呼ばれる、腰に紐のついた腰巻きスカートを履いていたようですが、そんなに下着感覚では無かったとか。

戦国時代に南蛮人が始めて女性用下着(今のようなパンツはまだ無いのでズロース的なやつ?)を日本に持ち込んだそうですが、それを初めて手にしたのは豊臣秀吉らしいです。


女ものパンツを持って、しげしげと眺める秀吉の姿が、目に浮かびますね!


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