表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/249

夢だけど、夢じゃなかった

ピーピピピ、ピキョピキョピキョ、ピピ……


「う、るさ……」

無意識に呟いた希美は、徐々に意識がはっきりするのを感じる。どうやら窓の外に鳥が来ているみたいだ、そんなことを考えながら、光が射す方向へと目を向けた。


(あれ?障子??実家に帰ってたっけ?)

マンションの我が家には洋室しか存在しない。

希美は思わず和室のある実家かと考えたが、段々と意識が明晰になるにつれ、実家にある障子とは違うことに気付き、ガバリとその身体を起こした。


「え?どこ?」

室内をキョロキョロと見回し、希美は思い出した。夢の中の出来事を。

ハッとして着物をはだけさせる。


胸、……ない。

腹の脂肪、……ない。

褌の中、…………ある。


(嘘でしょ……)

Fカップの巨乳だったんだぞ、デブだけど。希美はちょっとだけ現実から逃げた。

しかし、逃げたところで胸は無いのだ。

あってはならぬものはついているが。


「ゆ、夢だけど、夢じゃなかったー……」

いつか言ってみたいと思っていた有名な台詞を呟いてみる。空しく室内に響いた。

(この台詞って、こんな絶望的な感じになるもんなんだ)

希美は、へたりこんだ。


希美は考察してみる。

(最後の記憶は、お迎えの途中で道を歩いている時、なんかすごい衝撃があった事。その後、気がついたらちょんまげだらけだった)

(異世界転生……いや、逆行転生、憑依転生か?)


希美は昔から小説が好きだった。

子どもの頃は図書館に入り浸り、シャーロックホームズやアルセーヌルパンを読んだ。ライトノベルにもはまり、恋愛ものを中心に乱読した。親もクリスマスプレゼントに、天文学シリーズや古典文学全集を枕元に設置した。

長じては時代劇好きもあり、時代小説にもはまったが、最近では倹約もあり、無料の小説投稿サイトの作品を乱読するようになった。

その中で特にはまったのが、転生ものだった。


(所詮、小説の中だけの話だと思ってたけど、まさか自分がそんな目に合うとは)

希美は呻いた。

「何で男……」

(TSとか、誰得なのよ)

女として生まれて四十ウン年。男に生まれたかったと思ったこともある。しかし、今さら体を男にされて、戸惑わないはずはない。


(これからどうしよう)

希美はまだ知らない。

今がいつなのか、ここがどこなのか。

自分が誰、なのか。


「柴田様、お目覚めでしょうか?」


希美がそれを知るのは、まもなくだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ