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えろ蔓延(ただし男に限る)

えろ教回になってしまった。

全て河村久五郎が悪い(笑)

「なにゆえ?!」

河村久五郎が地面に這いつくばり、しなを作ってこちらを見ている。

「師の愛だ」

希美は断言した。

当然、嘘だ。恨み骨髄だ。


河村久五郎は何やら感動したようにプルプル震えて口許に手を当てている。ミス・アメリカかなんかで受賞した人みたいだ。今にも「oh……」とか言いそうだ。


「おおぅ……」

(言ったーー!!?)


「師よ……我が神よ。あなた様の愛の深さ、しっかと受け取りましたぞ!!」

(ヤバイぞ、こいつ。いつの間にか池田恒興の仲間になってるぞ。おのれ、エロ教め!誰がこの善良なエロ親父をこんな変態に導いた?!)

希美よ、お前である。




希美は知らぬ間に自分がエロ神となっている事に気付いた時点で、行く行くはエロ教解散、河村久五郎破門を考えていたのだが、それを信長に伝えると止められた。


信長いわく、

「その方やわしがどう思おうと、この宗教が美濃に広まり受け入れられている事実がある以上、利用せずしてどうするのだ」

という事である。

確かに現代で考えたって、宗教の神が政界に入ればその信者が丸ごと熱狂的な支持者になるのだ。美濃攻略において、有利になるだろう。


最後に信長は言った。

「その方、仏の遣いで神か。くくく……つまり、その方を従えるわしは、『仏と神を従える者』という事よの」

(やだ……中二みたい)

ピシィッ!


「なんで突然ムチ?!」

「ろくな事を考えていない眼であった」

(相変わらずの鋭さ……なんかセンサーでもついてんのか?……ん?)


希美は気付いた。控えている恒興が目をすがめながら半笑いで信長を見ている。

「殿……池田殿があからさまに、『ろくな事を考えていない顔』をして見ていますが」

希美の指摘に信長はとても良い笑顔で言った。

「ん?わしには何も見えぬぞ?」

信長の言葉に恒興がショックを受けている。信長は笑顔で希美を見ている。


(まさかこれ、私を巻き込んだ高度な放置ぷれいが展開されている……?)


乳兄弟って、怖い。希美はもう考えない事にした。




池田恒興はどうでもよい。

そんな事より、希美はエロ教がどうなっているのか、河村久五郎に聞きたかったのだ。

が、まずは久五郎の寝返り感謝タイムだ。


「久五郎、神戸将監を討ち取ったらしいの。お主のおかげで織田は大分有利になった。恩に着るぞ」

久五郎は嬉しそうにはにかんだ。

「なんの。お師匠様に喜んで頂けるならお安い御用で御座る。斎藤も代替わりして、なかなか危ういですしな」

「うむ、森部衆も斎藤勢を攻めて混乱させてくれたとか。裏切りなど心苦しかろうに。感謝致す」

久五郎は満面の笑顔で言った。

「皆、えろ教に傾倒しておりますからな。えろ神様のためと、一同はりきり申した」


「ん?皆、エロ教に、傾倒?」

「えろ神って何だ?」

希美は聞きたくなかった言葉を聞いたような気がしたが、今まで黙って聞いていた可成までも気になったようだ。

乙女な可成にはあまり聞かせたくない。そんな事を思ってしまい一瞬ためらった希美だが、利家がそんな希美の躊躇を、スパイクを履いた土足で踏みつけていった。


「森殿、遅れてますなあ!えろ教というのは、今美濃の男達のほとんどが入信しているという、熱い宗教なんですよ!」

「ほ、ほとんど?!」

希美は慌てて久五郎を振り返ったが、久五郎はにこにこしながら頭を振った。

「いやいや、ほとんどは言い過ぎですよ。三人に一人くらいですかな」

(もうそれ、ほとんどって言っていい範囲じゃねーか!?)

希美は眩暈と動悸が止まらない。

(誰か、心を救うお薬下さい!!小さな丸い粒のやつ!)


そんな希美に構わず、利家は可成に説明している。

「えろ神ってのがえろ道を弟子に教えて、えろ教ができたらしいです。極めれば、着物を見るだけで裸の女が見えるとか、普通に生きてるだけでずっと気持ちいいとか……」

「おい、久五郎!!尾ひれついてんぞ!」

「流石です、お師匠様。生きてるだけで快楽を享受されているとは……女がいらぬはずです!」

「そんな奴はもう人間として終わってる奴だ!」

(ぐぬぬ……私にそんな危ない奴としてこれから生きていけとは……どS信長め。まさかここまで計算して神を止めんなって言ったのか?)


「何やら、とんでもない宗教がはびこっているようだな……」

可成は目を白黒させている。

「実は此度の美濃行きで仲良くなった美濃人に勧められて……」

利家は、懐からどこかで見たような人形を取り出した。

「じゃじゃーーん!某も入信しちゃい申したー!」

「ば、馬鹿ーーー!!」

まさかの利家入信である。希美は叫び、可成は目を見開いている。

久五郎は喜色満面だ。

「おお……前田殿のような織田家の将来を担う御仁が入信して下さるとは……ナニを隠そう、某がえろ神より啓示を受けし最初の弟子でしてな」

「ええー!凄えーー!!」

(おい、ナニのイントネーション……自重しろ)

「そして、こちらにおわす柴田殿こそ、某にえろ道を指し示して下さった、えろ神なのです。讃えよ!」

「ひゃーーー!!柴田殿があっ?!ははーーっ」

「え?!権六が!た、讃えるってこんな感じでいいのか?」

「おいっ!久五郎!!しれっとバラしてんじゃねー!……あ、三左はやんなくていいから!むしろ、やらないで……」

利家ばかりか可成まで平伏してしまうカオスな状況である。

希美は堪らず師の愛を行使し、平伏を止めさせたのだった。



久五郎は片頬がこぶ取りじいさんと化している。

希美は賢いので、また久五郎はやらかすだろうと、もう片方は残してあるのだ。

久五郎は何故か、もう片方も差し出しそうな顔で希美に申し出た。


「実はわしが祭司となって、月に一度信徒達を集めて教会を開いておるのですが、此度はせっかく美濃にお師匠様がおられるので、特別に降臨祭を開く予定なのです。どうか御出席を賜りたく……」

「はあ?!そんなの……」

「ええ!柴田殿!某も出席したいです!お願いします、連れていって下さい!!」

希美はすぐ断るつもりだったが、利家が興奮して言い出すタイミングを逃してしまった。

久五郎はすかさず畳み掛けた。

「お願いで御座る!皆、お師匠様に会えるのを励みに、修行も仕事も頑張っておるのです」

(修行って、女の裸を妄想する練習だよね。即刻止めて欲しい)

「斎藤方の信徒など、お師匠様の教えを励みに織田軍との戦に……」

「いや、励みにしてるえろ神と殺し合いしてるんだが……もしかして、私が討ち取った人達の中に信徒が?!寝覚めが悪すぎるんだけど!!」

「まあ、乱世ですからな」

(何でも乱世で片付けるの、良くないと思います)

「お師匠様……後生です。皆あなた様に会いたくて、修行を頑張ってきたのです」

「違うよね。裸を見たいだけだよね」



久五郎の粘りに希美の心がぐらついて来た時、可成が希美に止めを刺した。


「権六、男らしゅうないぞ!お主がこの者らにえろとやらを伝えたのだろう!えろ教の頭はお主ぞ。出てやれ!」



(お、女だもん……)

希美は肩を落としながら、頷くしかなかった。

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