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そして、題名へ

足踏み回になってしまった……

後半の歌の部分は、残酷描写が入ります。ご注意を。


歌詞が著作権にひっかかるのでは?というご指摘を受けて、確かに!と思い、歌詞の部分を消しています。歌を思い出しながら、意訳に当てはめていただけると幸いです。

「《大魔鬼婆は緑の歌》♪」



夏も深まり青々とした稲が一面に育っている。その稲の海を、行軍中の織田軍歌が青田風と共に吹き渡り、さざ波を作った。


(おい……織田軍の軍歌になってるんだが)

馬上の希美は、やってしまった感に魂を飛ばしかけていた。


信長を始め織田軍の面々は、美濃勢の首を刈るこの歌を思いのほか気に入ってしまったらしい。

あの武勇の誉れ高い『髭剃り柴田』が美濃攻めの士気を高めるために作った歌らしい、という事が広まり、尾張では大人から子どもに至るまで知られ、歌われているようだ。

希美は心の中で、後世の『おお牧場は緑』に関わる全ての人間に遺憾の意を表明した。



(そして、なんだ、『髭剃り柴田』って!?)


とうとう希美は『髭剃り柴田』の称号を得てしまっていた。尾張の人々が、空前の髭剃りブームの火付け役となった柴田勝家を評価し、この称号を与えたらしい。

他にも、『御仏を拒んだ男』『女間者集め』『足切り柴田』などろくな称号が無い。


希美は現代で、柴田勝家の『瓶割り柴田』の称号だけを初めて見た時、「勇者かな?小さな明銭でも入ってたの?」と突っ込んだが、今はそんな自分を恥じるしかない。


(『瓶割り柴田』は、エピソードを考えると普通にカッコいい称号だった。でも、私が柴田勝家になってからこっち、妙なエピソードの妙な称号が増加中!ご、ごめんーー、御本人様!!)


以前の希美は知らなかったが、今の希美にはわかっていた。

希美のような柴田勝家に興味の無かった一般的な女子には、豪快な武人としてのみ描かれた映画やテレビのイメージしか無いが、知っている人は柴田勝家という武将が『武』以外にも長けた有能な将だと認知されている事を。

そして、希美が柴田勝家に転生してしまった事で、それが改変ならぬ怪変しつつある事を。


(どうせ戦国武将に転生したなら知将になりたい、と思ってたのに……柴田勝家にスマートでクールなイメージを持たせたかったのに……)

希美は脱力した。

(私のせいで、知将どころか、普通の武将ですらなくなっとるがなーー!)



しかし、希美は無駄にポジティブだった。

歴代の上司から評価される度に、「賢くはないけど」が接頭語となる頭の残念な希美にとって、失敗は日常茶飯事。落ち込みはするが、絶望していてはいちいち身が持たないのだ。


(いや、ここからよ!)

希美は奮起した。

(盗賊団捕縛の時だって、最後はあれだったけど、ちゃんと知謀を認められたじゃない。これから頭の良さアピールすれば、知将、いけるいける!)

(まずは、この美濃攻めで、あわよくば知将アピールよ!)

何がどんな状況で『あわよくば』になるのかはわからなかったが、希美は俄然やる気になった。




八月の燃えるような日射しの中、青田に怪しい軍歌が響く。

希美の怪進撃は、ここから始まろうとしていた。








織田軍歌『大魔鬼婆は緑』 (丹羽長秀意訳)



(大魔の鬼婆の顔は恐ろしげな緑色をしている)


(海のような草原に風が吹いているよ)


(大魔の鬼婆の顔は恐ろしげな緑色をしている)


(草原だと思っていたら、早苗の如く土に埋められ、顔色が青ざめている美濃勢だったわ。よくこんなに集まったと、「ほいっ」というかけ声で鬼婆がその首を刈っているよ)


(流れ出した大量の血は、雪解け水が川となるが如く山を下り谷を走っている)


(さらに野を横切るように流れ、畑に流れ込み肥料とならん)


(いつだって鬼(柴田)婆は呼びかけているよ、「ほいっ」と美濃勢の首を刈れ、とね)






希美「誰が鬼婆だ!そんな恐ろしい呼びかけなどしとらんわーーー!!」

気が弱いせいか思った以上に、意訳に精神的ダメージをくらってしまった……

深淵を覗き込んで、覗き返された感じですかね。闇米、怖い奴です。

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