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もう全部、御仏のせい!

またもや寝落ちして、朝起きたら………書いてた文章データがふっ飛んでたよー(泣)

「うわあああぁぁーー!!」


末森城の廊下を、一糸纏わぬ姿で走る男があった。その均整のとれた裸体を大事な部分まで惜し気もなく披露しながら次兵衛の居室へ駆け込んだ男。


柴田権六勝家こと、希美であった。


「殿!!……よ、夜這い?!」

不穏な事を口走る次兵衛の顔を、希美は駆け込んだ勢いのまま踏みつけた。


「で、出た……」

「ふぁ、ふぁにぐぁ?(な、何が?)」

希美は次兵衛の顔から足を下ろした。

「女……髪の長い女が……湯殿に…………」

「尼ならともかく、湯女が髪の長いのは普通では?」

「湯女だが、湯女ではない!私に迫った!」


次の瞬間、次兵衛は立ち上がるや否や部屋を飛び出し……かけて、てきぱきと自分の湯帷子を取り出し希美に羽織らせると、部屋を飛び出した。

(あの男、有能なんだが、危機管理としてどうなんだ……)

希美は次兵衛の姿を見送ると、ため息をついたのだった。



発端は、天王寺屋助五朗についた希美の出任せだった。

女と結婚したくない希美は、「あの世から戻るのに、御仏から女犯を禁じられた、これを犯せば死ぬ事になる」などと口走ったのだが、これ以上縁談が来ぬようにと、積極的にこの話を広めたのである。


結果、まずは城内に変化があった。

これまで勝家と関係があった女中や湯女からのアプローチが無くなり、女中達から遠巻きにキャーキャーと言われるようになったのである。

何事かと訝しんだ希美だったが、坊丸の言葉で事態を把握した。


「おやぶん、きのうからわたしつきの『はま』と『いよ』が、なかたがいをしてこまっているのです」

「一体どうしたのだ?」

「わかりませんが、なにやら『とのがうえじゃ』『いやじへえどのがうえよ』といいあっております」

「……坊丸よ、お前は決して介入してはならぬ。その二人は手遅れよ。決してわかり合えず永遠に争わねばならぬ修羅道に落ちてしもうたのよ」

「ええ?!すくえぬのですか?」

「うむ、御仏とてその争いは救えぬ。お前は巻き込まれぬよう、関心を向けてはならぬぞ」

「わ、わかりました!」

(城の女共、腐ってやがったか……)


ちなみに、小姓達はなぜかアップを始めたようです。


そして変化は城外からも訪れた。

他国から見目の麗しい女がこぞって送り込まれてきたのである。

これは、『柴田勝家は女と交われば死ぬ』と聞いた周辺諸国の反織田勢力が、武勇の誉れ高い柴田勝家の暗殺を狙っての事であった。

(にしても、露骨過ぎやしませんかね……なんか現在の末森城下、美女率高いんだけど。せっかくだし、美女コンテストでも開くか?まあほぼ全員暗殺者なんだが)

マニアックなミスコンになりそうだ。


その上で、今日の事である。

末森城に入ったばかりの希美が一番に作らせた自慢の湯殿(現代風の湯船に湯を張るタイプの風呂)で、希美は湯女に背を洗ってもらっていた。

その湯女が突如たわわな胸を希美の背に押し付け、「こちらも、致しますね……」などと吐息混じりの甘い声で囁きながら、下半身に手を伸ばして来たのである。

勝家大事の城中の女が、主の命を奪うと知って手を出すはずもない。

希美は仰天し、女に性的に迫られた生理的嫌悪から湯女を蹴り飛ばし、悲鳴を挙げながら湯殿を逃げ去った。

そして、今に至る。


(女避けのためにあの出任せを広めたのに、逆に女がこぞって寄ってくる……)

それも、ハニートラップばかりである。

(肉食系女子、マジで怖い)

希美が若かりし頃の自分を、ちょっとだけ反省していると、次兵衛が戻ってきた。


(あ、私、裸だ)

この時初めて、希美は自身が湯帷子を肩に羽織っただけのフル○ン状態である事に気づいた。

男の前でほぼ裸。希美は恥じらうべきか一瞬考えたが思い直した。

(そういえば、私、男だったわ。いやー、男って楽だなあ。人前でフル○ンでも、全然恥じらわなくていい!)

希美は男を勘違いしていた。


そして次兵衛はフル○ンで堂々と胡座をかく希美の前に座った。

アリーナ席最前列である。


次兵衛は報告した。

「女を捕らえました。今取り調べております」

希美はうんざり顔で言った。

「最近ちともて過ぎるの。城下にも女が増えておる。今日なぞはとうとう湯殿にまで入り込まれる始末。どうにかせねばの」

次兵衛は頭を下げた。

「面目次第も御座りませぬ。これよりは警備を更に厳しく致しまする」

そして続けた。

「そして殿の湯殿の世話は、相《棒》たるこの次兵衛めが全て賄いまする!」

顔を上げた次兵衛の目が爛々としている。

「嫌どす」

「何故?!」

(相棒、湯殿、裸の付き合い、何も起きないはずもなく……なんて状況、全力で回避するだろう)


しかしまだ希美は気付いていなかった。

相棒(意味深)な次兵衛とフル○ンで二人きり、次兵衛の居室にいる事に。

しばらくしてそれに気付いた希美は、そそくさと自室に帰ったのだった。




その頃、清洲城では乱破の棟梁からの報告を聞いた信長が困惑していた。


「権六が堺の天王寺屋と繋がりを持っただと?」

「は、天王寺助五朗の姪を助けた事が切欠になったようです」

「天王寺屋といえば、本願寺と繋がりがあろう」

「三好とも繋がっておりまする」

「あのうつけめ……天王寺屋から物資を得れば、こちらの情報が筒抜けになるのをわかっておるのか!?」

「柴田殿とて、以前は信行様の家老として勤め、堅実な策をとる男で御座る。わかった上で、堺の豪商と繋がる事での利を見たのではないかと」

「いや、あの男、頭を打ってからうつけになっておるからの。何も考えておらぬのではないか?」

「さて……」

「まさか、その姪を娶ったのではあるまいの?」

「いえ、持ちかけられて断ったようで」

「ふん、縄をつけられるのは避けたか。一向門徒に改宗されて、一揆勢に加担でもされたら敵わぬわ」

「それが……」

「なんじゃ、……よもや改宗を?」

「いえ、天王寺屋の嫁取りを断った理由なのですが、柴田殿が御仏にお会いした時、女犯を禁じられたからなのだそうで……」

「…………」

「…………」

「な、なんじゃ、そりゃあ?!何で権六が御仏に会うのじゃ!」

「なんでも、頭を打ちあの世へ行った際、現世に戻る条件として御仏に女犯を禁じられたとか。それを聞いた周辺の大名が、鬼柴田の泉門よと、せっせと末森に女間者を送り込んでおりまする」

「あ、あんの、うつけめがあっ……!!権六を呼べ!今すぐ、此処に、呼び寄せよっ!!」

「落ち着かれませ。次の美濃攻めの評定に参加するよう、既に召集の使いを送っており申す」

「ふーーっ、ふーーっ」



(いやあ、権六よ。殿、無茶苦茶怒ってるぞ!悪いなっ、仕事なもんでね)

織田の情報網たる甲賀乱破衆の棟梁、滝川彦右衛門一益は爽やかに笑った。


この後、希美はまた清洲へ向かう事となる。

とうとうタッキーの登場です!

忍びなれども、忍ばない!忍ぶどころか暴れるぜ!

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