表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
219/249

尼駆ける銭の閃き中編の続き(←おいっ)

昨日の夜、「ようし、今夜中に更新するぞ!」と意気込んで、スマホ片手に寝っ転がり、気がついたら朝でした。

いやー、久しぶりに十時間睡眠!

そして遊び過ぎた結果、まさかの後編ならずっ。

すみません、もうちょっと続くんじゃ……。

あれからすぐに加賀を発った希美は、肉体チートにものを言わせ、不眠不休で街道を駆け抜けた。

馬を乗り継ぎ、山を突っ切り、走りに走り続け、そして次の日の宵の頃には、伊勢に入ったのである。


長島の寺内町に入る前に、川の水で体を清め、尼姿に変装した希美は門徒として町に入り、願証寺の証意を訪ねた。


「『筑前尼が来た』とお伝え下さいな」

胸元を少しはだけさせ、シャドーで陰影をつけた雄っぱいを寄せながら、門番にあだっぽく話しかける。

門番は、鼻の下を伸ばしながら希美の胸元に返答した。

「ちょっと、待って下さいよ……聞いて参ります」

目は、雄っぱいに釘付けだ。

そう。巨乳は引力である。by乳にゅうとん


希美は万有引力の法則の通り、自ら胸元を門番の男に近付けるようにして、唇を男の耳元に寄せた。

「秘密の仲なの。……こっそり、ね?」

「なむあみだぶつなむあみだぶつもむあみだぶつ……」


阿弥陀仏を揉むんじゃない。

男は返答の代わりに、雄っぱいを拝んでから、荒い鼻息と共に中へと入っていった。


それにしても、顕如といい、この門番といい、門徒のストライクゾーンはどうなっているのか。

(おばさんの頃に比べて、おじさん()の方が、男にもてる、だと……?)

希美は柴勝おじさんのカチムチ巨乳を確認するように揉んで、ちょっと落ち込んだ。



少しして門番の男が戻った。証意に確認をとったようだ。希美を証意の部屋まで案内するという。

案内の途中、ほとんど人とすれ違わなかったので、恐らく人目につかぬルートを通ったのだろう。

そうして、とうとう希美は証意の部屋にたどり着いた。


「ありがとう」

希美が案内の礼をいうと、男は「なんの。もむあみだぶつ……」と希美の胸元に合掌し、両の手をわきわきさせながら去っていった。

(なんなんだ、あいつは……)

彼は、願証寺にその人有りと言われるおっぱい崇拝者、人呼んで『揉み手の銀次』である。だが、そんな事はどうでもよかった。


室内に入ると、証意が平伏して待っていた。

「ようこそおいで下さいました、えろ大明神様!」

そうして顔を上げるなり、キラキラした眼差しで希美を褒めそやした。

「流石、えろ大明神様に御座いますな!全く剃り跡を感じさせぬ白粉ののせ様。色っぽいぽってりとした唇。それに、な、なんと、胸の谷間が……!?」

「ふふん、私ほどの熟練になれば、女の擬態など造作もないわ。それより、殿は?無事だろうな?」

証意は頷いた。

「はい。牢の中で恙無くお過ごしに御座います。しかしご家臣様達も、兵の皆々様方も、未だ命は御座いますが、顕如様がこちらに着き次第、織田様と主だった家臣の方々は処刑されましょう。兵の大半は改宗を迫られるか人買いに売られるか……」

「そうか。ならば、その前に救い出さねばならないな」


希美は、顎を撫でて思案した。

「すぐに助け出したいが、まだその準備が整っていないんだよなあ。抜き差しならぬ状況なら、無理にでも助けに入らねばと思って私一人急いで来たけど、まだ猶予はありそうだし、とりあえず逃走補助の忍びが到着するのを待ってからにしよう」

「では今夜は私の部屋でお休み下さい。私と同室という事になりますが……」

「構わんよ。むしろ、ここでの拠点を得られて助かる。ありがとうな証意!」

「なんの。あの、せっかくなので、よろしければ、えろ大明神様の雄胸の細工をご教授いただければ……」

証意は希美の雄っぱいに興味津々である。

希美は、協力の礼に証意を完璧な尼にしてやろうと心に決めた。


「私の持てる技術全てを、お前に教えよう」


その夜、証意はどこからどう見ても、『大型の尼』になった。

大きいのは仕方ない。男の骨格だ。

しかし、それをいかに女に近付けるかが技術。化粧を施し、胸と肩と尻にまあるく詰め物をし、陰影で胸のふくらみを演出する。その光と闇の技術はレンブラントもかくやである。(大誇張)

その上で女らしい立ち姿や仕草をみっちり仕込み、証意に及第点を与えた希美は、なんだか精神的に疲弊してしまった。

そうして、鏡に見いる証意の横で早々と床についたのである。



「……さま、そんな……」

ガサゴソ

「……ずかしいで……いや……」

ガサゴソガサゴソッ。


(なに……うるさ……、誰よ夜中にゴソゴソと……)

妙な物音に気持ちよく寝ていたのを邪魔され、希美は半覚醒状態のまま目をゆるゆると開いた。

しかし、ここがどこかを思い出し、ガバリと起き上がった。

「そいや、ここ、願証寺!ここには証意しかいないはずなのに、話し声?」


話し声は次の間から聞こえる。証意の声だ。


「や、やめて。違うのですっ」

ガサガサ、ゴソゴソ……


証意の言葉に、希美は眉をひそめた。

「誰かいるの?ヤバイ状況?」

何が起きているか確認しようと、次の間に通じる襖を、音が立たぬよう注意しながら細く開く。


そこに広がる光景に、希美は目を剥いた。


えろ修行のための着衣人形を鏡の前に置き、その鏡に映った己れと着衣人形を見ながら悶える尼姿の証意。


「美しい尼だなんて、そんな……!妻なんて無理ですぅ。本当は私……、私ぃ!私の真実を見て下され、親鸞さまあ!!」


(そ、そこでM字開脚いったあああ!!?)

色々と見るに耐えなくなった希美は、そっと襖を閉めて布団に潜りこんだ。

隣の部屋がうるさい。

マンションなら、壁ドンしている所だ。

だが、こういう時は息を潜めるのが礼儀というもの。希美は夜着を頭までひっかぶり、眠ってしまった。


その夜の希美の夢見は、非常に悪かった。




「えろ大明神様……、えろ大明神様!」

「うう……やめろお、親鸞様、目を覚ませえ……」

「えろ大明神、起きて下され!」

「……だから、こいつは男だから親鸞さ……あ、証意?!」


飛び起きた希美は、キョロキョロと周囲を見回した。

「そっか、ここ、証意の部屋……」

「おはよう御座います、えろ大明神様。何やらうなされておいででしたが」

「悪夢を見ていたようだ。今、何時だ?」

「お疲れのご様子なので、お起こししませんでしたが、既に巳字の正刻(午前十時)を過ぎておりまする。握り飯と白湯を用意しておりまする故、食べながらお聞き下さいませ」

証意に朝食を渡され、礼を言って食べ始めた希美は、証意の言葉を聞くなり喉を詰まらせそうになって、慌てて白湯を飲んだ。


「顕如様がもうすぐ到着する!?」

「はい。先触れがあったように御座います。顕如様が参られたら、私は父と挨拶に参ります。その後、ここに戻って来ますので、それまでどうか部屋からお出になりませぬよう」

「わかった。そう……顕如様が……」


希美は最後に目にした顕如の姿を思い返した。


こちらを見て、微笑む穏やかな若者。えろ門徒のためとはいえ、あの人の信頼を裏切ってしまった。

きっと、筑前尼(わたし)を恨んでいるだろう。

えろ門徒の大坂脱出と筑前尼が姿を消した事の意味に気付かぬような愚かな方ではない。

門徒とて、えろを憎んではいたが、個人としては悪人ではなかった。

思想が操られているだけの人達だ。

だが、敵として希美の大事な者達に危害を加えるなら、あの頃親しくした人達を攻め滅ぼさねばならない。


希美はそんな事をつらつらと考え、そっとため息を吐いた。

証意は希美の心境を知らず、「父の元に行って参ります」と部屋を出ていった。

希美は、障子を通して射し込む光に照らされた握り飯の一粒一粒をしばらく眺めていたが、おもむろに口に放り込むと胃に流し込んだ。



証意は半刻ほどで戻ってきた。

「父親といっしょにいなくていいのか?」

そう尋ねる希美に、証意は首を横に振った。

「私は『不埒』の罰として、謹慎中の身でして。それより、顕如様が牢から織田様を出して対話をするようです。場所はこの宿坊の端にある客室です。どうされますか?」

「もちろん、行く。とはいっても、陰から見守るしかない。どこか良い場所はないか?」

「次の間には父と坊官が控えましょうから、明かり障子の窓の外がよろしいかと。人払いをしておりますし、隠れえろ門徒の手の者に窓を開けさせておきましょう」

「わかった。助かる」


証意は一旦部屋を出ると、少ししてまた戻ってきた。

隠れえろ門徒に指示を出したようだ。


「それでは、時も無いので参りましょう」


希美と証意は尼姿になると部屋を抜け出した。


「証意、何故お前まで尼に?」

「せっかくなので」

「せっかくの意味がわからない」


大きな尼は、隠れえろ門徒の協力を得ながら裏手を抜けて、こそこそと所定の位置についた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ