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猪(ぶた)は進化した

ド変態回です。(今さら)

少女趣味や少女嗜虐を思わせる場面があります。

ご注意ください。


始めは畠山義継の一人称から、途中でいつもの三人称に切り替わります。


畠山『義続』が間違って『義継』になっていたので修正しました。教えていただき、ありがとうございました。

能登国。わしはその能登守護職を代々受け継ぐ、名門畠山家次男、畠山義続として生を受けた。

本来なら、嗣子である兄が家督を継いで当主となるはずだった。

だが、兄は死に、わしが家督を継いだ。


父畠山義総(よしふさ)は名君で知られていた。

家臣達は皆が父の元に国を支えた。それに、七尾城を建設し、あの上杉の攻撃から城を守りきるほどの戦上手でもあった。

いや、それだけではない。

公家や連歌師を迎え入れ、商人や職人を保護し、七尾城下を「小京都」と呼ばれるほどに栄えさせたのだ。

そんな父の跡を継ぐ。

重圧ではあったが、わしは家臣達の期待に応えられると信じておった。

皆、わしについてきてくれると信じておったのじゃ。

父にそうしたように。


現実は、違った。

家臣達は、わしを侮った。

わしの努力は否定され、家臣共の都合のいいようにねじ曲げられた。

皆がわしを馬鹿にする。わしを軽んじる。


「お父上ならばこうしていた」

「お父上ならば、こうはならなかった」

「お父上の頃ならば」

「お父上ならば」

「お父上ならば……」


誰も彼もが、わしを見ないで父を見た。

家臣共は、好き勝手にふるまい、争い、わしの能登国を我が物のように扱い始める。

室達も、わしを見ぬ。表だってはわしを立てる振りをして、子を孕むための道具にしか見ておらぬ。

裏でわしを悪し様に言うておる事くらい、知っておるのだ。 

口では笑うておるが、その目は嘲りの色を滲ませておるのだから。


結局わしは、家臣共の勝手な争いの責任をとる形で隠居して、家督を息子の義綱に譲らねばならなくなった。

なんという屈辱か。

わしがどのような思いで当主の座を降りたか。

それを知ってか知らずか、横で義綱の母である室が喜んでおる。

わしが悔しさを理解もせずに。


そんな折、わしは鷹狩りに出かけた帰り、十ほどの年頃か、どこぞの家臣の幼い娘が馬に乗せてもらっておるのを見た。

危なっかしく、ぐらついておる。

あのまま落ちれば、怪我をするだろう。

わしは何とはなしに、近付いた。


娘はわしに気付き、数名の近習を引き連れた大柄なわしを見て、怯えた目を見せた。


その目に、わしは一瞬でたぎった。

わしを無条件に恐れるその弱さとあどけなさに。

娘は、そのまま馬からずり落ちた。

開いた裾から見える白い太股、落ちて地に伏し泣いておるその弱々しさ、感情をそのままに泣いておる顔、全てに興奮した。

その純粋さを、わしは欲したのだ。


その後、わしは精力的に復権を図った。

うまく家臣等の不満を煽り、年寄衆筆頭格の温井、三宅を謀殺したのだ。

ざまあみろ、だ。

わしを蔑ろにした罰じゃ。

今は、息子の義綱と共に、権力をなんとか取り戻しておる。

だが、油断はならん。家臣等がいつ牙を向くかわからぬからのう。


わしが、本当に癒され、そしていつだって欲しているのは、幼く弱き娘だ。

あれらを眺め、愛で、時に屈服させ怯えさせる。

わしの意のままにな。

室達が嫌悪の目でわしを見る。不快でたまらぬ。

これだから女は、ダメなのじゃ。


女になる前の娘こそ、わしを満足させる至高の存在である―――。





(などと、考えてた時期がわしにもありました)


義続は、脂汗を滲ませながら、太股にぐっと力を入れて木馬を挟んでいる。

三角木馬。

本来は、女専用の拷問具であると義継は聞いた事があった。

義続にお勧めの『えろ』と言われ、この木馬に乗せられて早三日。

最初は苦痛でしかなかった木馬が、今や、耐えて良し、耐えきれずとも良しの()()()()()()()状態である。


何より、義続の回りにはたくさんの木馬仲間がいて、皆が切磋琢磨しながら更なる高みを目指しているのだ。

木馬隊の隊長は、七里という元一向宗の坊官だ。

元宗教家として昔とった杵柄だろうか、義続達を言葉巧みに煽り、これまで知らなかった新たな扉へと導いてくれる。

今では七里の励ましも、罵倒も、義続達にとっては、等しく御褒美。


(はふうっ!わしは今、最高に充実しておる!仲間と共に、最高の瞬間を塗り替え続ける。この時間こそが、至高の時(プライスレス)!!)



七里隊長が義続に声をかけた。


「おい、新入り!このぶた野郎!気持ち良さそうにフゴフゴ鳴いてるじゃないか!」

「はひい!ありがとうございます!」

「どうだ、木馬は最高だろおっ!?」

「最高でーすっ!」「「「最高でーすっ!!」」」

義続が答えると、何故か他のメンバーも復唱する。

七里は、満足そうに頷いた。

「それなら、次の段階に移っても良さそうだな」

「次の段階じゃと!?」

「ああ!?ぶたの分際で、何だその口の聞き方はあっ!次の段階()()()、だろおがっ!」

「もーしわけござらぬう!!隊長、次の段階とは何で御座ろうか!?」

七里は、ニヤリと笑んだ。

「御褒美の追加だ。おいっ、誰か縄と木玉ぐつわを持ってこい!」

「え?」



なんやかんやして、義続は無事に『えすえむセット』をフル装備した。

R15ギリギリスタイルの義続に、七里隊長は言った。

「なあ、ぶた。お前、わしにこんな風に罵倒されて、どうじゃ?嫌か?腹が立つか?」

「御褒美でっす!」

一瞬の躊躇もなく、義続が答える。

七里隊長は「ふむ」と、義続を見た。

「そこまで仕上がっておれば、更なる高みへは容易に昇れよう。おい、入れろ!」


室内に、尾山御坊で働く女中達がゾロゾロと入ってきた。

そして、義続の姿を見て、顔をしかめる。

「何あれ」

「見苦しいわ……」

「気持ち悪い」

「最低ね」


彼女達は、七里から頼まれて悪口を言いにやってきた女中達である。

希美の元で働く以上、この程度の変態姿など見慣れているし、なんならこんなもの、『えろ教徒』としてはただの修行風景でしかない。

だが、頼まれた以上、彼女達は『ぎやまんの仮面』をつけて、迫真の演技をしてみせた。

七里は、それに同調するように、義続を煽っていく。


「お前の情けない姿を見られているぞ?天下の大名様が、変態行為だ。これが領民にバレたら、どんな目で見られるのだろうなあ?」


女達が、自分のあられもない姿に軽蔑の眼差しを向けている。

己れの心に突き刺さる、辛辣な言葉の数々。

もし、彼女達が室だったら……。家臣だったら……。領民だったら……。


義続の体が、おこりのように震えている。

軽蔑の目。嫌悪の目。嘲りの目。

己れを傷つける言葉達。

不快で、不快で、たまらなかったそれらに……、



今は、たまらなく興奮している!!


「は、はあっはあっ、さ、最高じゃあ!見ないで、いや、見てくれえ!もっと、わしを見てくれえ!!そして、思う存分感想をくれえええ!!」

「ふふ……、ぶため。さとったな」


そう。義続は悟ったのだ。

これまでは、自分を見てほしくて、しかし見てもらえなくて、それが苦しかった。

しかし、嫌だったあの嫌悪の目。嘲りの目。

確かに見られていたのだ。

自分は、どんな形にせよ、注目を浴びていた。

ただ、負の視線に耐えられず、誰も見てくれないとうそぶいていた。


しかし彼は、進化した。

あらゆる種類の視線を悦びに変える最強生物。


『まぞぶた』へと!


悦べないぶたは、ただのぶたなのである。


彼の鬱屈は消えた今、ロリコンという性的嗜好は多少残ったものの、女への不信感と少女への嗜虐趣味は消え去った。

そして、悦びへの渇望だけが残る。


(娘に、思いっきり罵倒されたい)


少女を虐めない分、以前よりマシにはなったが、これはこれで問題だった。




その頃、希美は三日前にもたらされた訃報により、溜まった仕事に加え、葬儀に参列するための関係各所への連絡調整に忙殺されていた。


そう。とうとう三好義興が死んだのである。


ようやく段取りがつき、明日には出発できそうだとふと力を抜いた時、希美はハッと思い出した。


「あれ?そういえば、畠山義続(ニセ信玄)、どうしたんだっけ!?」


七里に預けてすぐに訃報の使者がやって来たため、すっかり忘れていたのである。

希美は、すぐに七里を呼んだ。


「お呼びですかな?」

「ああ。実は、畠山義続なんだが、すっかり忘れていてな。お前に預けてから、どうなった?いつ帰ったんだ?」

「まだ、おり申すぞ」

「え?」

「まだ、尾山御坊におり申す。長丁場になる故、あのぶた……じゃない、畠山殿の供にはしばらく御坊で預かる旨を伝え、供の者共々、連日、木馬を堪能してもらっており申す。先ほど、完璧に仕上がりましたぞ!ハッハッハッ」

「……え?ぶた?仕上がり……え?え?」


少しして混乱から立ち直った希美は、慌てて木馬隊の詰め所兼道場に向かった。

はたして、そこには『まぞぶた』として仕上がった畠山義続が木馬と一体化していた。

ケルベロスと見まごうばかりの一体っぷりである。


「は、畠山殿……。これは……」

戸惑う希美に、義続は朗らかに笑った。

「おお、柴田様!いや、えろ大明神様!あなた様のお導きにより、わしは生まれ変わり申した。わしの事は、どうぞ『ぶた』と罵って下され!」

「うわあ、ナチュラルに、罵られようとしてくるぞ。やべえ。ちょっと、懲らしめるだけの予定が、何故か『まぞ豚』に仕上げてしまった!」

頭を抱える希美に、義継は言った。

「えろ大明神様よ、気に病まれるな。わしはこれで良かったと思うておりますぞ。こうなったおかげで、能登に帰ったら幸せに暮らせそうじゃ。感謝してもし足りぬ。もし、どうしても気に病むのなら、わしを罵ってくれるだけでよいぞ?」

「どうしても、罵られたいのね、この豚野郎っ!」

「はうっ!軽めの馳走、ありがたいのう……」

希美は、天を仰いだ。


義続は言った。

「えろ大明神様よ。そもそもわしがこちらへ参ったのは、武田と神保の事なのじゃ。当主の息子は神保につくと決めたのじゃが、わしは正直迷っておった。武田はえろ大明神様と同盟を組んで御座ろう?あなた様が能登に攻め入るのではないか。わしは、それを探りに来たのじゃ」

「はあ」

「じゃが、既にわしの気持ちは決まった。わしは、えろ大明神様側につくよう、息子を説得してみせまする」

「え!?そんな事したら、武田のストッパー、神保君が!!」

「えろ大明神様、わしがえろ大明神様の傘下に入った暁には、是非、三角木馬隊に!」

「いや、それはいいけど……」

「おお!ありがとう御座います!では、早速に帰らねば。仁山、乙部、参るぞ!」

「「御意!」」

端の方で木馬に乗っていた義続の供が、木馬から飛び降り、義継の縄を解く。

「お世話になり申した。では、急ぎまする故、これにて御免!」

「あ、はい……お気を付けて……」


『まぞ豚』は巣に帰っていった。

「あ、待て!三頭のぶたよ、餞別に『三角鞍』を持っていけ!」

七里が義続を追いかけていく。


一人残された希美は、乗り手を失った木馬と共に、呆然と立ち尽くすのであった。

畠山義継さんは、これで『ノータッチ』なロリコンになってくれたはず……。

奥さんともうまくいくといいなあ。


この時代は、前田利家のロリコン野郎みたいに、十二才の女子と結婚してすぐ子供作るのがおかしくない時代。

せめて、母体に負担がかからない年での出産を広めたい所ですね。

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