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男になる覚悟

う、うわあああぁぁーーー!!今気付いた!日間歴史ランキングで、1位になってるぅーー!

あわわわわ………

ありがとうーー!ありがとうございます!!頑張ります、自分なりに(保険)!

これは、中耳炎になんてなってる場合じゃねえ!

普段はのどかな勝村は、緊張に包まれていた。

突如他領の織田軍約二千が現れ、この村に陣を張ったのだ。

信長はこの村での乱取りを禁じた。が、多くの村人は近くの寺社に身を寄せた。自領にとって敵方の軍が攻め寄せて来たのだ。無理もない事だ。


(ああ……第一村人が……)

遠くに飯の煮炊きの煙が見えた辺りで人を発見し、村への案内を頼めるかと思った希美だったが、第一村人(予想)はこちらを見るなり叫びながら転がるように逃げ去った。

(めちゃくちゃ怯えてた)

それはその筈だ。もし乱取りを禁じていなければ村人は悉く殺され、犯され、奪われることになる。第一村人は慌てて村に知らせに行ったのだろう。

「追って斬りますか?」

馬廻り衆の武者が信長に確認したが信長は、

「無用」

と断じた。


信長率いる織田軍は悠々と村に入り、村に残っていた老人に話をし陣を張った。

織田軍の統制はとれており、村人に無体をすることはなかった。現代の感覚が抜けきれない希美はほっとしたが、これは問題の先送りでしかないことはわかっていた。

場合によっては乱取りが許されることもある。そのことを勝家の記憶で知っていたのである。



陣が張られ、ようやく腰を落ち着けた希美は来るべき戦の事を考えると、ため息をついた。勝家として転生し、流されるままここまで来た。どうせなら知将になってやろうと決意もした。

だが、実際に人を殺すことなどできるのか。

いや、やろうと思えばできるのだろう。希美は馬に乗ったことはなかったが、勝家の体が自然と動き、危なげなく乗れていたように。

人を殺す技術も勝家の体が覚えている。その流れに乗ればよい。

だが、その後は?


(逃げるなら今だよなあ)


希美は側に侍る次兵衛を見た。自分の率いる家臣団を見た。自分の領から戦に出た者どももこの陣中にいるだろう。

そして、朴訥ながらも家臣に心を配り、織田家と自領を守ってきた勝家を思った。


(逃げちゃならないよねえ……)


「殿」

不意に次兵衛に声をかけられ、希美はそちらを向いた。

「何だ」

次兵衛は希美の目をじっと見ていた。たっぷり見てから、にやりと笑んでおもむろに口を開いた。

「男の目に、なっておりますな」


(こいつ、殺すぞ)


誰が心まで男化してる、だ。希美は殺意を覚えた。

そんな事とは知らない次兵衛は満足そうに笑って言った。

「殿がわし等を思うて槍をふるわれるのは知っております。だが、わし等も……」

次兵衛は重ねた。

「わし等も殿をお守り致しまする。のう、皆!」

「「「「「応!!!」」」」」


野太い声だ。歴戦の男どもの歓喜の声だ。主を、故郷を、自分達の手で守れることを誇っている男の声だ。

(ああ、柴田勝家は、こんなにも愛されているのだな)

希美は不思議と心が凪いだ。

(私は、私が、柴田権六勝家だ。ならば、私はこいつらを守るために戦う。人を、殺す)


実際に人を殺せば、自分の心がどうなるかわからない。しかし、皆が自分のために戦い、殺すなら自分も同じ泥を被ろう。敵は私達を殺しに来る。私達も殺しに行く。そこから逃れられないなら、いや逃れぬと決めたなら、殺してでも守る。

希美は立ち上がった。


「私は、柴田権六勝家だ!!私が、皆を守るっ!守るぞ!!」


腹から声を出した。乱世の人間となる希美の決意表明だった。


「「「「「応っっっ!!!」」」」」

柴田勢は気炎を上げた。この上なく、一つにまとまった。


希美は、乱世の男となる。

つ、次こそは合戦に入るはず!

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