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御仏のお告げにドキッ!気まぐれ金柑☆道

朝が来た。

信長が昨日の夜の内に、使い番を時間外労働させ、岐阜近辺の重臣達に召集令状を届けたようで、午後を回った頃には林秀貞を始めとする大方の重臣が揃い、軍議が開かれた。


信長から事情が説明され、近江攻めの決定が告げられる。

相手が簒奪者とはいえ、六角は格上の守護大名。観音寺城は、多数の郭、支城を持つ堅牢堅固な名城だ。

三好や一向宗の動向も気になる。

軍議は白熱したが、希美の言葉で皆、凍りついた。


それは、こんな事情だった。



六角、三好、一向宗について知りうる情報を出し合い、いかに攻め行くかを話し合っていた時の事である。

滝川一益が、希美に尋ねた。


「権六、お前、以前の美濃攻めでは、天候や斉藤義龍の病を知っていたよな。今回も何かわからんのか?」

「あー、あれな……」

希美は気まずげに目を逸らした。

あの時は、まだ柴田勝家となって日が浅く、希美もそんなにやらかしていなかったため、史実を知っていればこの先の事を予見できた。

しかし、今は……。


(えろ教がやらかしまくってて、歴史が改変されまくってるから、わっかんねえー!!)


まさに自業自得であった。

しかも三好である。

戦国武将としてメジャーはメジャーだが、一般的な女子に「戦国時代の三好氏ってどうなったか知ってる?」と聞けば、「いや、まず誰なの、それ(笑)」と返ってくる確率は高いだろう。

ちなみに希美はというと、微妙に一般的な女子からズレていた。


(うーん、三好かあ。三好さんと絡んだのなんて、乙女ゲーム『三好一族の淫棒~逆ハーレムの乱~』で片っ端から三好一族の男共を落としていったくらいだわ……。あのゲーム面倒臭かったのよねー。三好男子って死にやすいんだもん!一つでも選択肢間違うと討死やら、病死やら……。三好一族逆ハー完成させるまでに、何度殺した事か……殺……)


「あ……」

「なんだ!?何か知っているのか?」

「三好実休が死んだのは、去年だったよね?」

希美の問いに一益が答えた。

「ああ、確か畠山との戦で討死したはずだ」

(やっぱ史実を元にストーリーが作られてる。実休のバッドエンドは畠山との戦で討死だった。このストーリーでいくと、畠山戦でピンチの実休を助けてから一年後、長慶の息子義興が病に倒れるのよ。そんで、特別な薬草を取りに行くイベントが……)

イベントはどうでもよい。

重要なのは……、


「じゃあ、今年、義興が病死だわ!」



そして、(希美を除いた)全員、凍りついた。




(義興のバッドエンドルートは病死だった。なら、えろ教の影響は関係ないよね。セーフ、セーフ!)

何がセーフなのかはわからないが、希美は安堵の息を吐いてふと信長を見た。

信長は、なんか面白い顔をしている!

「殿?其を笑わせようと、そんな絶妙な表情を……?」

「その方の非常識さに、驚き呆れ果てて頭が痛いのじゃ、この大うつけ!!毎度毎度、どこ情報なんじゃ!?」


(あ、やべ!そっか、これも未来予知……。よし、適当に誤魔化そう)

「わはははは!」

「笑って誤魔化せると思うなよ、権六ぅ!」


信長がヤンキーばりにメンチカツを切ってくる。

それはもう、ザックザクで揚げたての……。

違った。メンチだ。

信長が、「ああん?!」とか、「パラリラ?!」とか言い出しそうだ。


希美は、目を泳がせて何か適当な言い訳を考えた。

(お告げは、やっぱまずいよなー。殿が私を利用する云々もあるけど、今や史実から離れてきているんだ。未来予知はもう難しいかもしれない)

悩みながら、一益を見る。

目力が凄い。よほど情報元を知りたいのだろう。

一益に「情報元だよ」と、『三好一族の淫棒~逆ハーレムの乱~』をプレイして見せてやりたい。

三好三人衆が主人公わたしを取り合って、あわや内乱になる場面シーンなぞ、血沸き肉踊ってしまう。

隠しキャラの松永久秀愛用の茶器である平蜘蛛に、主人公わたしがこっそり火薬を詰めるイタズラを仕掛けたら、頭に灸を据えながら蓋を開けた久秀が驚きのあまりお灸を平蜘蛛に落として大爆発してしまう、バッドエンド場面シーンの美麗絵には、思わず涙してしまったものだ。

(爆発する瞬間の松永久秀のあの表情が無駄に美麗で、東大寺大仏殿に放火する久秀のほっかむり姿の美麗絵に匹敵するほどだった……)


そんなどうでもよい事をつらつらと考えていたら、希美は思い付いてしまった。

(東大寺、大仏……!そうだ、やっぱりお告げでいこう!御仏からの一方通行って事にすれば、いける、いける!)



希美は、東大寺の大仏ポーズで告げた。

「御仏の仕業……。たまに御仏が気まぐれにお告げを送りつけてくるので御座る」

御仏に対し、酷い言いぐさである。

ざわ……ざわ……。

周囲がざわめいている。

おおむね、皆、信じているようだ。

一部を除いて。

信長、一益、林秀貞あたりの胡散臭げな目付きときたら、池田恒興がゾクゾクするほどである。

希美はどえむではないのでそんなのにゾクゾクはしなかったが、丹羽長秀のねぶり回されるような視線には、違う意味でさっきからゾクゾクしっ放しだ。


信長はこめかみを押さえてぼやいた。

「嘘だ、と言いたいが、実際その方は死なぬ体で甦っておるしのう……まあ、よい。それは確かなのだろうな?」

「当たる確率は高う御座る。ただし、働きかけ次第で未来は変わり申す。故にあまり当てにするものでは御座らぬ。ただまあ、病なら変わる事は無いかと」

「ふむ……。義興はいつ死ぬ?」

「確か、六月に倒れて八月に死ぬ予定」

信長は呆れ顔で希美を見やる。

「まるで旅にでも出るようじゃの……。まあよい。ならば、急ごう。すぐに戦支度じゃ。まずは日野城を目指す。そこを拠点に観音寺城に向かう。五月のうちには観音寺城を包囲する。それと平行して、彦右衛門(一益)、お主は、六角承禎の死の真相と三好義興の死の予言を触れ回れ。予言が当たれば心が折れようし、当たらずと動揺を誘えるであろう」

「ははっ」

「佐渡守(秀貞)は兵站を差配せよ」

「はっ」

「権六は六角右衛門督と共に一足先に日野城へ向かい、加賀衆と越後衆をもって、我らの行軍の地均じならしをしておけ」

「御意!……あ、殿、公方様には?」

「む……。確かに知らせねば、仲裁だのと首を突っ込んで来かねぬな。ちょうどよい。あの男を使おう」

「あの男?」

「ふん、越前にて使えそうな男を拾うた。土岐氏の流れを汲むらしい。才もあり、連歌や茶湯に通じておるから、京に遣いに出すにちょうどよいわ」

そう言って、信長は傍に控えていた小姓に「おい、十兵衛を呼べ」と命じた。

どうも、越前からこちらに移り、岐阜城下に屋敷を与えられたらしい。


(へえー、十兵衛さんか。どんな人だろう)

十兵衛と呼ばれた男を待っている間も、軍議で細々とした事が決まっていく。

しばらくして、小姓が十兵衛の来訪を告げた。


「失礼致す。明智十兵衛様が到着されました」


広間に、三十半ばの目元涼やかな色白イケメンが入り、平伏した。

「明智十兵衛光秀、仰せによりまかり超しまして御座る」



「ふ、ふおおおおお!!金柑頭の人お!?」


「失礼な事を申すな、この大うつけ!!」

希美は信長にしばかれた。

まさに、『おま言う』。

理不尽であった。


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