衝突戦
現状
・ディアス達
砦から砦への転戦中、目的は物資を奪って戦闘能力を削ること。
・謎の指揮官達
砦を襲う存在に気付いているようで、動きを読み、ここに来るはずだと当たりをつけた上で襲撃をしかけようとしていたらしい。
隠蔽魔法から飛び出したということは、相手から見ると突然そこに現れたことになる。
金色の光り輝く鎧を着た私が、まず見逃すはずがない派手さの人物が突然現れたことになる訳だが、相手に動揺は一切ない。
あの女性指揮官がそこにいると言ったからにはいるはずだと、そう確信していたようで、その表情からは凄まじさすら感じてしまう。
「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」
声を上げ、戦斧を振るう……刃を立てずに斧の腹でもって殴ってやろうと思っての一撃だが、力はしっかり入れていて簡単に防げる一撃ではなかったはずなのだが、1人が大盾で受けて、何人かが大槍を突き立ててきて、あるいは絡ませたりとして動きを完全に止めてくる。
これにも驚かされた、回避されたり受け流されたりはよくあることだがまさか完全に受けられてしまうとは。
ならばと戦斧を振り上げての次の一撃を入れようとするが、それをまた兵士達は必死になって止めようとしてくる。
「攻撃を当てる必要はない! 弱らせろ!!
全身鎧相手に無謀な真似はするな、まずは体力を奪って動きを鈍らせるんだ!!」
そこに響く女性の声、私の鎧の出来を見てなのか、そんな指示を出してきた。
確かに出来の良い全身鎧を相手に致命打を与えるのは難しい、隙間がなく弱点らしい弱点がなく、それだけの鎧を与えられている時点で手練れでもある訳だから、何をするにしても簡単にはいかない。
鎧すら貫く一撃で倒すか、衝撃で倒すか……ロープでも張って転ばせた後に拘束してしまうか、ロープを引っ掛けた上で馬などで引きずり倒すか。
大体の場合でそんな方法になる所を、連中は鍛え抜かれた連携でなんとかしようとしているようだ。
それもまぁ悪くはないんだが……私やクラウスでも危険のある作戦で、あまり頭が良いとは言えないな。
その上、数も質も劣っているとなると……最初から破綻してしまっているとも言える。
引っ掛けるためのような爪のついた大槍で、どうにか戦斧を絡め取ろうとしてくる兵士達だったが、私の力には敵わないようで動きを止めることは出来ず……戦斧を地面に叩きつけてやると、引っ張られて転んだり槍を手放してしまったりと連携が崩れ始める。
そこにクラウス達が続く。
私の背後から、隠蔽魔法から飛び出す形で突然現れて、連携が崩れてしまった連中に飛びかかり、武器を奪うなり腕や足を打ち据えるなりして戦闘能力を奪っていく。
クラウスは攻撃で、ソマギリ達はロープなどを使った拘束で。
そしてすぐにクラウスが私の補助に入り、ソマギリ達は周囲に散っての警戒態勢となる。
ソマギリ達はとにかく身軽で柔軟、どんな所にでも隠れ潜むことが出来る。
木の上、岩陰、時には敵陣の中にまで隠れ潜んで……敵が隙を見せたならまたそこからの奇襲を仕掛けるつもりのようだ。
更には隠蔽魔法を使いながら鬼人族達も動き回っていて……包囲してからの射撃の構えを取っているはずだ。
更には犬人族達もその周辺で構えて遠吠えでの威嚇を行うはずで……このまま決着となるはずだったが、それを相手の指揮官が覆してくる。
「折れるな! 諦めるな! お前達ならドラゴンだって狩れる! ドラゴンより強い人間などいるものか!!」
そう声を上げて自ら突撃をしてきて、その幅広の剣でもって斬り掛かってくる。
まさか過ぎるその一撃に対し、一瞬反応が遅れて……その一瞬を無理に取り返そうとするよりもあえて受けた方が良さそうだと判断し、鎧でもって受ける。
光が迸り、剣を弾き……その光が驚く女性の顔を照らすが、次の表情にはこちらが驚かされることになる。
笑った。手強い敵と出会えて嬉しいとばかりに笑い、踊るかのような仕草で弾かれた剣の勢いを殺すことなく体を回転させて、次の一撃を放ってくる。
それも弾くと今度は土を蹴り上げて、こちらにそれをぶつけてくる。
二度攻撃を弾かれて、すぐにその仕組を探りに来たらしい、土すらも弾いたのを見てまたも女性指揮官は良い笑顔を見せてくる。
完全に攻撃を防がれてもあの笑顔か……クラウス達からの攻撃で命を落とすかもしれないというのに、一切恐れた様子がない。
……もしかしたらその覚悟を既に終えているのかもしれない。
時たまこういう人間はいるものだ、自棄になっているとかではなく、何かがあって覚悟が決まって命を落とすということを受け入れて、恐怖というものを克服してしまっている人間が。
死を深く考える機会でもあったのか時間でもあったのか……若く見えるのに、色々な経験をしているようだ。
そしてそんな彼女のことを周囲の兵士達はよく信頼しているらしい、心酔していると言っても良いかもしれない。
彼女が攻撃を繰り返してどうにか鎧の反発を破ろうとしているのを見てか、それぞれ懸命に剣や槍を突き出しての攻撃を仕掛けてくる。
攻撃を仕掛けながら彼女を守るように、あるいは彼女と連携するように動き、未熟ではあるものの目を見張る連携力を見せてくる。
後は経験さえ積めば立派な軍隊になることだろう……ああ、アレだ、ジュウハのようなまともな軍師も必要かもなぁ。
意気も連携も良し、しかし何もかもが考えなし。
……もしジュウハがいなかったら私達もこうなっていたのかなぁと、そんなことを思いながら深く踏み込んでもう一度戦斧を思いっきり振るう。
連中は私を弱らせると言っていた、体力切れを狙うと。
しかし相手にも体力ってものがある訳で……今は士気の高さと女性指揮官からの檄でなんとか耐えているようだが、そのうち限界が来るはずだ。
体力切れを狙うのはこちらも同じこと、その上こちらの方が装備の質が良いと来た。
向こうは防御の事も考えなければならないが、こちらは狙わなくて良い、武器の破損も考えなくて良いし……私の大雑把な動きで生まれる隙もクラウス達がなんとかしてくれる。
最近はクラウスだけでなくソマギリも私の動きに慣れてきたらしく、よく動いてくれている。
普通に戦闘をしても活躍してくれるが、隠れ潜んだ武器を投げたり、煙玉とやらで視界を奪ったり、ちょっとした音を立てたりして相手を驚かせたり鈍らせたりしてくれたりと、風変わりな活躍もしてくれている。
そんなソマギリが投擲を始めると、鬼人族からの射撃が始まり、気絶させるためなのか矢先を布で包んだ矢がどこからか放たれる。
そうして兵士達の多くが倒れるなり気を失うなりする中、女性指揮官はまだまだ諦めていないようで目を輝かせてくる。
輝く目でこちらを睨み、そのままこちらに突っ込んできて……なるほど、私の鎧の力で矢を避けようという魂胆らしい。
ならばと私が戦斧を横に振るっての一撃を放つと女性は、なんとも身軽に跳び上がってそれを回避し……落下する勢いのままに幅広の剣を思いっきり、振り下ろしてくるのだった。




