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領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第十九章 一つの真実

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手紙



 話し合いが進み、準備が進み……その時を待ちながら日々を過ごす中で、私は手紙を書くことにした。


 サーシュス公爵とシグルザルソン伯爵、その2人に向けたもので、王都には近付かないで欲しいと、そんな内容の手紙となる。


 聖地どうこうの事情までは書くことは出来ないが、王都には危険があり近付けばその被害に遭う可能性があると知らせておくべきだろうと考えたからだ。


 本当に聖地が関わっているかの確証はないが、リチャードがおかしくなったということは確かなことで、その辺りの事情は2人にも伝わっているはずだ。


 そこで私からそんな内容の手紙が届けば、それなりの警戒をしてくれるはず、迂闊な行動は控えてくれるはず。


 2人までがおかしくなると本当に収拾つかなくなる、ついでにエルダンの勝ち目もなくなる……本音を言えば聖地のことを教えてでも王都から遠ざけたいのだが、流石にそれは問題がありそうなので隠しながらの説得となる。


 2人はこれをどう受け止めるだろうか? エルダンを勝たせるための工作と思うだろうか? 私が何か企んでいるとでも思うだろうか?


 色々と不安は残るが……精一杯の誠意を込めた手紙を書くしかないのだろうなぁ。


 これで上手くいけば良し、上手くいかなくても仕方なし、何もしないよりはした方が良いはずで、頼むから王都には近付いてくれるなと想いを込めながら文字を書いていく。


 手紙を書くことは得意だ、文章に関しても皆に褒めて貰えている、今の状況に私に出来る一番の手のはずで……多くの目に見守られながら書き進めていく。


 座卓の前に座る私の膝にはフランシスとフランソワがアゴを乗せていて、脚の上には六つ子達、頭の上にはチャイ、座卓の上には眼鏡を光らせるエイマと興味津々のメイゾウ、そして背後にはベン伯父さん。


 腕を組んで堂々と立って、私の手元を見下ろしていて……なんとも懐かしい気持ちになってしまう。


 子供の頃もこんな視線を浴びながら読み書きの勉強をしたものだなぁ……いや、あの頃の方が厳しい視線だったかな。


 手紙を書き上げたらサーヒィに託し、それぞれの屋敷近くにいるゴルディアの知り合い、つまりはギルドの仲間に届けてもらうことになっている。

 

 流石にサーヒィ達が直接と言うのは問題がありそうだからなぁ、こうしてもらった方が良いだろう。


「味方をしてくれとは書かないんですね?」


 ある程度書き上げた所で、エイマがそう声をかけてくる。


「そんなことを言える仲ではないからなぁ。

 特にエーリング……シグルザルソン伯爵は、あちらから仲間になってくれと頼みに来てくれたのを断っている。

 断っておいてこちらの都合の良い時だけ仲間になってくれは通らないだろう。

 それに私達は今回隠れて動く訳だから、仲間になってくれたとしても連携などは難しいだろうしなぁ」


「それは確かに……。

 連携するとなるとエルダンさん達でしょうけど、それなら交渉すべきはエルダンさん達ですしねぇ。

 あとは相手側の受け取りですが……王都に近付かないで欲しいだけでどこまで通じるかどうか……」


 と、エイマがそう言った所で、伯父さんの声が上から降ってくる。


「一度ディアスと会って話した人間なら、ディアスがどういう人物かはよく分かっておるだろう。

 無闇な裏や悪意がないことは察するはず、公爵と伯爵となれば文章に込めた想いも感じ取れるはず。

 わざわざ王都に近づく用もないだろうからな……黒幕が呼び出そうとしたとして、それを受ける理由もないだろう」


「……そうか、黒幕は黒幕でどうにか呼び出そうと画策はする訳か。

 悪用した聖地が王都にあるとして、そこまで引っ張り込まないといけない訳だからなぁ。

 ……そして聖地か、私なら入り込んでも問題ないらしいが、入り込んだとして黒幕や聖地をどうにか出来るものなんだろうかなぁ」


 私がそう返すと、フランシスとフランソワが「メァメァ」と鳴いて大丈夫だと伝えてくる。


 そして、


「大丈夫、その心配はいらないわよ。

 今大メーア様が動いてくださっていますし、他の聖地も貴方に味方するとの声を上げています。

 もちろんあちらに味方する聖地もあるようですが、それは少数……多くの聖地が味方し、その時には力を貸してくれることでしょう」


 と、そんな声がして床からニュッと小メーアの顔が現れる。

 

 ユルトには床があり絨毯が敷いてあるのだがお構い無しで現れていて、六つ子達が毛を膨らませて警戒感を顕にしている。


 しかし他の皆はもう慣れたもので、特に驚くこともなく挨拶だけをしている。


 一応は神様の使者なので挨拶はするけども深くは関わりたくないと、そんな態度が見て取れる。


 メーアを守護する神の使いなのに六つ子達にまで警戒されているのはなんとも言えないが、フランシスとフランソワは丁寧に頭を下げていて、それなりの敬意を抱いているようだ。


「……ああ、聖地の神々が助けてくれるのはありがたい話だ。

 ……それで力を貸してもらうのに何か条件とかあるのか?

 あるいは感謝の捧げ物をするとか……結構な数の神々が力を貸してくれることになるんだろう? 何もしない訳にはいかないと思うんだが」


 私がそう返すと床から這い出てきた小メーアが、ちょこんと後ろ足を投げ出す形で座りながら言葉を返してくる。


「アレを廃棄してくれたことに対するお礼みたいなものだから、そういうのは必要ないわよ。

 まぁ、神殿でお祈りを捧げるなりして感謝の気持ちを示すことは良いことだとは思うけどもね、無理をしてどうこうする必要はないわ。

 ……何度も言うようだけど本当に感謝しているの、更に言うなら多くのドラゴンを狩ってくれたことも感謝しているし、今回起きようとしている騒乱に冷静に対処しようとしていることにも感謝している。

 ……普通はね、隣領のように行動するのよ、自分達の野心なり利益なりを優先するものなの。

 それが悪いとは言わないけども、そうはせずに前に進むことが出来るのは尊いことでもあるわ。

 今もそうやって対価を求めるのではなく差し出そうとしているし、聖地に至った時も何を求めた訳でもなかったものねぇ、そういう点はすごく評価しているのよ」


 そう言って小メーアは口でニコりと笑いかけてくる。


 それを受けて私はなんとも言えず気恥ずかしくなり……とりあえず書きかけの手紙を書き上げるかとそちらに意識を戻す。


 すると小メーアはトコトコと歩いてやってきて手紙を覗き込み、


「この手紙が信じてもらえるよう、こっちでも手を打っておくから、気楽に書いちゃいなさいな」


 と、そんなことを言ってくる。


 それを受けて私は色々と言葉を返したくなったが、それをしてしまうと切りが無いのでとにかく手紙を完成させようと意識を戻し、残りの文を仕上げていくのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回は各地の動きとか、になります



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― 新着の感想 ―
実際ディアスはヨコシマなことを考えるような輩には見えないもんなぁ。 あるとしたら、奸臣に言いくるめられた場合とかディアスの勘の良さを知らなければ可能性は検討するかな? それでも「手を組もう」とかではな…
味方側の神様方々の期待が凄いですねぇ・・・。
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