新たな子供達
・ディアスの孤児時代の仲間達
・ゴルディア
男、酒場の主、ギルドの長、孤児の副リーダー
ディアスと一番近く、喧嘩もし、意見を唯一ぶつけられた人物、ディアスが去ってからもディアスを支えるために頑張っていた
・イーライ
男、ゴルディアの補佐、アイサの夫
孤児達の中では一番の常識人、かつ普通枠、特に秀でた才能はないが人間性で信頼を集めていた
・アイサ
女、ゴルディアの補佐、イーライの妻
直接戦闘は苦手だが搦め手なら最強クラス、ディアスに勝てないまでもディアスを嫌がらせることは可能で、戦いたくない相手となることは間違いない、魔法の腕はそこまでではないが工夫で強力だと見せかけている
・エリー
心は女、商人、外交官
商人ではあるが、実質隠居状態、弟子たちに任せて最終的な決算だけを行う形に移行しつつある
外交官に面白さを見出しつつあり、そちらに夢中
ナタリー。
ニール。
マヌエル。
それが今回やってきた3人の名前だった。
3人ともイーライ達と一緒に面倒を見てやっていた子供達で、つい最近まで王都で暮らし、頑張っていたらしい。
ナタリーは女優、ニールとマヌエルはその補佐や脚本、会場の準備などで。
そしてナタリーこそが私の戦場でのあれこれを広めてくれた張本人であり、女優として成功するや、その立場を利用して自分好みの物語に仕立てた上で、それはもう散々にやらかしてくれたようだ。
しかしそれを叱ってはいけないようだ、ナタリーのそういった活動があってこそゴルディア達の運営するギルドが認められ、動きやすくなり……結果、戦場にいる兵士達を応援しようと様々な物資が届いたこともあったようだ。
そういったことを含めて全てはナタリーの計画通り、ナタリー的には何もかもが上手くいっていたようだ。
「誤算だったのはお父様が辺境に飛ばされちゃったことよねぇ。
会いに行きたくても行けないったら……ほんともう何度女優をやめようと思ったことか!」
イルク村に移動し広場に用意された席に腰を下ろし、アルナー達が用意してくれた歓迎の食事を前にしてナタリーがそんな声を上げる。
アルナーにとってはナタリーもニールもマヌエルも仲間で家族、私の養子という扱いになるようで、母として歓迎してやらなければ気が済まないらしい。
ゴルディア達から大体の事情を聞いていたナタリー達もアルナーのことをすんなりと受け入れている。
黒髪黒目、大きな瞳とすらりと高い身長が特徴的なナタリー。
ナタリーよりは色が薄いが同じく黒い短髪、垂れ黒目のニール。
垂れ目で丸顔と、柔らかな印象を受ける顔だが、背は高く腕が長くしっかり鍛えているので、兵士向きな体つきをしている。
マヌエルは昔はもっと薄い髪色だったと思うのだが、今では真っ赤な赤髪をしていて、褐色気味だった肌色も濃くなっている……日焼けでもする仕事をしているのだろうか。
体つきはがっしりで身長はそこまで高くないのだが、それでもちょっとした威圧感を覚えるくらいの筋肉量だ。
そんな3人は孤児仲間の中でも姉弟のように仲の良かった3人で、それは今も同じらしい。
王都でも関わり合う仕事をしていて、一緒にこうして来てくれて……今もニールとマヌエルが、ナタリーにもうちょっとマシな態度を取れと、そんな説教をしていたりする。
「うっさいわねぇ、良いじゃないのこうしてお父様に会えたんだから。
第一あそこにあのまま残ってても良いことなかったわよ、なんかこう……危なそうな感じしたし。
嫌な予感したし、ここに来て本当に良かったって、勘でそう思うもの」
説教を受けてナタリーがそう言うと、ニールとマヌエルが凍りつく。
更には様子を見に来ていたゴルディアとイーライ、アイサ、エリーまでが凍りつく。
……なるほど、ナタリーのアレは今も健在だったのか。
と、私がそんなことを考えた直後、ゴルディアが立ち上がり鷹人族達の家へと駆けていく。
イーライ、アイサ、エリーも似たような動きを見せて……焼き立ての肉料理を大皿に持ってきてくれたアルナーが、それを見て首を傾げながら私達の前に大皿を置いてくれる。
「……なんだ? 何かあったのか?」
そしてそう問いかけてきて、私はナタリーの方を見て話して良いかとの確認を視線で行い、ニールとマヌエルが構わないと頷いてきたのを受けて口を開く。
「ナタリーは昔から勘が良くてな、それがまた結構な確率で当たるんだ。
起こること全てとか何もかもを感じ取ってくれる訳でもないし、当たらないときは当たらないんだが、かと言って甘く見ることは出来ないくらいには当たってなぁ。
私が戦争に行くと決めた時、仲間のほぼ全員が反対していたんだが、ナタリーだけは賛成してくれていてな、その理由が勘でそう思ったから、だったんだ。
最終的にゴルディア達が折れてくれたのもナタリーのおかげだったりしたなぁ」
「ふーむ……マヤの占いのようなものか?」
「かもしれないな、似た何かを直感的に感じ取れる才能みたいなものを持っていたのかもしれない。
……そんなナタリーが王都で嫌な何かを感じたと言うのなら、王都で何かが起ころうとしているのだろうなぁ。
災害かモンスターの襲来か……サーヒィに頼んでエルダンやエルアー伯爵にも知らせておこう、あとはダレル夫人にも知らせて家族への手紙なんかも用意してもらった方が良いかな」
「その方が良いだろうな、あくまで勘の話ではあるが何かがあってからでは手遅れだ。
それを信じるか信じないかはそれぞれの判断に任せた方が良いだろう。
ナタリー達にもこのままイルク村で暮らしてもらった方が良いだろうな。
……女優と言うのはアレだろう? 以前やってきた大道芸みたいな感じで皆が楽しめる場を作ってくれる仕事なんだろう?
今は余裕もあるから、そういう仕事の者も受け入れて増やしていきたい所だな」
と、アルナーがそう言うと瞬間ナタリーが目を輝かせて立ち上がり……いつの間にか口の中いっぱいに頬張っていた肉をモグモグモグッと口を動かして飲み下してから、こちらに駆けてきてアルナーの手を取って声を張り上げる。
「お義母様! そう言っていただけてうれしーです!
歌も踊りも演技も全部得意ですから、毎日楽しくしますよ! 明るく楽しい毎日を約束します!
何なら指導も出来ますよ! 希望者がいれば王都の劇場にだって立てる一流に育てて見せます!
この村に楽しい時間を作り出しましょう!!」
女優をしていたからかハキハキとした喋りで、声は大きくどこまでも通り、あのアルナーが少し気圧されてしまっている。
……だが義母と、家族と呼ばれたことが嬉しかったのだろう、アルナーはそんなナタリーの勢いも受け入れて、手を握り返し「それは良いな!」と話を合わせて盛り上がる。
そしてそのまま何処に舞台を作るとかそういう話をし始め……2人でどこかへと行ってしまう。
するとそれを見てかニールとマヌエルがやってきて、声をかけてくる。
「ま、まぁ、うん、オレ達もここで暮らすのは全然構わねぇよ、向こうに家もあるけどいつでも出てこられるようにしてきたしな」
「ナタリーがああ言ってるんじゃ怖くて戻れないしねぇ。
だからうん、こっちで何か仕事探すから、よろしく頼むよ」
そんな2人に対し私は、
「ああ、歓迎するぞ」
と、そう言って笑顔を返し……2人に近くに座らせて、一緒にアルナーが持ってきた料理を楽しむのだった。




