ジュウハは
エルダンとジュウハの聖地入りについても伯父さんは賛成してくれた。
今後伯父さんの野望……イルク村を聖都にするというそれに協力するという条件付きで。
これによりエルダン達も公式に大メーアを信仰することになるらしい。
以前、神殿の建立を記念してメーアの石像を贈ってくれたが、その程度ではなく神殿建立くらいの本気さで信仰し、聖都であることを認めて……信仰を広めるために尽力をする。
どうあれエルダン達も新道派を認める訳にはいかず、ジュウハとしても大メーア神殿を利用するつもりではあったようなので、願ったり叶ったり。
聖地の知識という特別なものを得られるならと頷いてくれて……今度は4人で聖地に向かうことになった。
私、伯父さん、エルダン、ジュウハ。
階段を降りて吸い込まれ扉、そしてあの地図を見た部屋に入ると、やっぱり小メーアが顔を出してくれる。
「また来たの……とは言えないわね。
隣領の領主にはこちらも興味を持っていましたから、こうして足を運んでいただけたことは幸いでした。
……まぁ、そちらの副官と共に本来は聖地の知恵に触れることが出来ない立場、相応の自重はしてくださいますよう」
と、小メーアが声を上げると、エルダンは丁寧な一礼で頭を下げ……少し遅れてジュウハも続く。
それから顔を上げたジュウハは呟くように声を上げる。
「……やはり俺様も人間族ではないのか。
まぁ、あの戦斧なんかが扱えない時点でそうなんだろうが……ふぅむ、どんな血が入っているんだかな」
「……まぁ、世界を滅ぼした連中の直系だ、なんて言われるよりはマシだろう」
私がそう返すとジュウハは小さく笑い、それから小メーアが以前してくれた説明と大体同じことをもう一度説明し、エルダンと共にそれに耳を傾ける。
説明を受けて世界地図を見て、決議についても説明を受けて……説明が終わるとエルダンは情報を受け入れるためなのか考え込み、そしてジュウハは矢継ぎ早の質問をし始める。
「北にモンスターの拠点があるとのことだが、具体的な規模は? 瘴気さえ浄化したならそこは居住可能になるのか? 古代以前はそこにも人が暮らしていたのか? その辺りに聖地はないのか?
……土地としての価値はどうなんだ? 資源はあるのか? 俺様達にモンスター退治をしろってんなら、当然そのくらいの調査はしてるんだろうな?」
それに大して小メーアは曖昧な答えしか返さず、どうやらそこまでの調査はしていないようだ。
そんな態度を受けてジュウハは数秒悩み、それで十分だったのか頷いて力を込めた声を上げ始める。
「……なるほどねぇ。
そういうことなら大体の方針は決まった。
ひとまずは北は放置だ、南下してくるモンスターの迎撃はするがそれ以上はしない。
モンスターがどこからどうしてやってくるのか、放置しても問題ないのかといった、いくら議論しても得られない答えが得られたからな、それだけでも十分な情報で必要な対策は問題なく立てられるだろう。
そして北を放置している間に南を開拓、当初の予定通り港との接続を目指す。
エルダン様の代でどうにかそこまでを成し、以降は次代に任せることになるだろうな。
だが開拓に成功したならその豊かさで人と食料に余裕が生まれるだろう、そこから北方開拓をする余裕も生まれるはずだ。
あとは北方開拓成功の暁には資源豊富な北方の土地を全て開拓者に与えると公言したなら無謀な連中がこぞって北方に向かい、モンスター退治をしてくれるだろうよ。
相応の被害が出るだろうが……それ以上の生産力があればなんとでも出来る、だから俺様達の世代が目指すのはそこだな。
北方開拓のための土台作りだ」
なるほど……ジュウハがそう言うのなら、そうするべきなのだろう。
そして私達の代では北方に向かうのは無理なのだろう。
危険な後処理をセナイ達の代に押し付けることになるが……私達に出来るのは出来るだけ土台を整えてやることだけ。
次代が少しでも楽を出来るように、開拓を進めていくしかないのだろうな。
なんてことを考えていると、同じくあれこれ考えていたらしいエルダンも口を開く。
「分かったであるの、ジュウハ殿の方針に従うであるの。
どうあれ南方開拓は必須、モンスターの拠点が北にあるということは南は手薄なはず、そちらに注力し、数年以内に海に到達してみせるであるの。
しかしジュウハ殿、僕にはまだまだ―――」
「えぇ、聞きたいことは山程あります、恐らくは色々と隠しているのでしょう。俺達には言っていない事も見せていない事も山程にあるはず。
……が、そもそもとして俺達は招かれざる客です、俺達のために作られた設備じゃねぇっていうのにあれもこれも教えてくださいというのは筋が通らないと言うか、神々に対する態度ではないでしょう。
どうしてもならまずはディアス達の聖都構想を応援してやることです、そうやって貸しを作ればそのうちなんらかの形で返してくださるはずです。
聖地の神々ってのは妙に義理堅いようですから……ディアスの奮闘に応えたように、こちらにも応えてもらえるよう奮起するしかありません。
それとエルダン様、海に繋がる前からディアス達を通じて茶や砂糖を輸出しましょう。
ディアス達から海へ、海からこの地図にある各国へ。
そうしながら誼を結び、大メーアの教えを広めていけば……聖都は王国にとっての聖都ではなく、世界にとっての聖都になるはず。
聖都の隣で影響力を持ち続けるというのは悪くない方策で、新道派の連中に売るくらいなら海の向こうに売って、海の向こうの品を仕入れましょう。
その方が確実に利があります……世界にこれだけの国があると知れたこと、それ自体が有益、他に先んじて行動すべきです」
「なるほど、確かに……その通りにするであるの」
ジュウハの言葉にエルダンがそう応え、それで方針が決定となったようだ。
そしてそんな様子を見ていた小メーアは、小さなため息の後に口を開く。
「まぁ、賢しいのは悪いことではないわよね、そして聖都とやらのために頑張るのなら相応に報いてあげましょう。
……が、このディアスと同じように扱ってもらえるとは考えないように、今日のこと自体が特別、特例中の特例みたいなものですからね。
とは言え、全く報いないという訳ではありません、真摯な態度には相応の報酬でもって応えますよ。
とりあえず領内にメーアがいないのかよく調査するように、野生の子達がいるのなら好きにさせてあげるように。
大メーア様を失望させてしまうような真似は慎むように、そうなったら私にだってどうにも出来ないのですから」
その言葉を受けてエルダンとジュウハはもう一度深く頭を下げて……そしてそれからまたあれこれと、今後についての話し合いを続けるのだった。
お読みいただきありがとうございました。
次回はまたイルク村に戻ってのあれこれです。




