ジュウハの考察
キャラ紹介
・ジュウハ
人間族、男、元王宮勤めで、王宮を追放となってからはディアスの軍師、戦後はエルダンの軍師
遊びや文化的なこと、平和を好み、基本的には戦争反対派
十分な軍備をし、しっかりと情報収集をし、数倍の戦力で相手を圧倒するのなら賛成はするが、それでも消極的
モンスターという戦いを避けられない存在がいるのだから、人類全員でそちらと戦うべきと強く考えている
――――刺突を放ちながら ジュウハ
鋭く正確な刺突でもって人型亀の手足を軽快についていたジュウハだったが、決して全力は出さずに、気力体力を温存した戦い方を徹底していた。
相手の目的が見えない状況で全力なんて出していられないと言うのが一つの理由だったが、それよりも強く懸念していたのは、相手が人型と言うことだった。
たまたま、偶然人型になったとかであれば何の問題もないが、何か目的や理由があっての人型となると厄介だ。
人の戦い方や戦術、戦略を模倣しようとしているとしたら? ドラゴンの甲殻に筋力、火を吐く人型の軍団が出来上がったとしたら?
今ジュウハが放っている刺突すら模倣される可能性がある以上は、全力を出す訳にはいかなかった。
(ま、模倣なんてのが目的だったなら、対処は簡単でありがたいんだけどな。
手を抜いた状態を模倣させたら良い、極端に弱い人間を模倣させたら良い、あえて隙だらけの戦い方を模倣させてその隙を突いたら良い。
こちらの模倣をするってんなら、どう模倣させるかを上手く誘導してやりゃぁ、ドラゴンの甲殻と炎があってもただの雑魚……。
むしろ本能で暴れまわるドラゴンより楽な相手で本当にありがたいったらないね。
それに手のうちようは他にもあるしな……)
と、そんなことを考えながら刺突を放ち続けて……相手の動きを待つ。
人間で言う肘や膝を狙って何度も何度も……そろそろ切断出来るのではないか? というくらいに刺突が決まりに決まった所で、人型亀に動きがある。
ゆらりと体を揺らし、手の平から甲殻で作ったのか、鋭い棘のようなものを生やし……それを握ってジュウハに、今までジュウハが放ってきた刺突と全く同じ動きでもって刺突を放ってくる。
それをジュウハは剣でもって受けて軽くいなしながら、ちらりとディアスを見やる。
小亀を倒し終えたディアスは全力でもって戦斧を振り回し、他の人形亀を滅多打ちにしていて……それを見たジュウハは舌打ちをし、人型亀が尚も放ってくる刺突を軽く受けながら思考を巡らせる。
(やはり模倣か! 狙いは俺じゃぁなくてディアスだろうな。
連敗を喫する中でその原因を特定し、そいつを排除するのではなく模倣しようとしたって訳だ。
しかしディアスを真似てもな……ディアスの強さはその身体能力や動きだけにある訳じゃぁない。
経験と直感……魔力がないからこそ鍛えられたらしい鋭敏な五感があって始めて成り立つもんだ。
ただ形だけ真似た所で意味がないし……それにディアスにはアレがあるからなぁ)
一瞬でそんな思考をしたジュウハは、周囲で様子を見ている……援護に入る機を伺っているニャーヂェン族やゴブリン族、犬人族に向けて声を張り上げる。
「手出し無用! 俺とディアスで対処する!」
それからディアスに向けて声を上げる。
「ディアス! 戦斧は使うな! 手斧だけで戦え!」
それを受けてディアスはすぐさま戦斧を手放す。
いちいち疑問を抱いたりしない、反論したりしない、ジュウハがそう言ったのならその通りにすべきだと、一瞬のうちに判断して腰に下げていた手斧を手に取り……どこにどう投げても絶対に手元に返ってくる神器での戦いを開始する。
(俺の剣とそっくりの甲殻を作りやがった所から、武器も模倣するんだろうが……神器の模倣は出来ないはずだ。
あの戦斧ならとりあえず形だけは模倣出来るし、それなりの戦い方にはなるだろうが……あの手斧は模倣しようがないはず。
模倣しようと投げた時点で全てが破綻する……あの特殊な力まで模倣するってんならお手上げだがな)
なんてことを考えていると、ディアスが相手をしていた人型亀が手斧のような甲殻を作り出し、すぐさまディアスと同じような動きでもって投擲する。
……が、当然のように甲殻は地面に落ちるだけでそれ以上の動きは見せず、だと言うのに人型亀はまるで手斧が戻ってきたかのような動きをしようとする。
手斧を持っていないのに持っているかのように動いてみたり、ディアスからの一撃を戻ってきていない手斧で受けようとしてみたり、その動きは完全に破綻してしまっていた。
それを見てこれは決着したなと確信したジュウハは、更に手を抜いた緩慢な動きでもって、目の前の人型亀の喉を一突きにするのだった。
――――手斧で戦いながら ディアス
ジュウハの指示を受け、戦斧を手放し手斧で戦い始めると、人型亀の動きが目に見えておかしくなった。
手斧のような甲殻を作って投げるまでは良いが、投げた後は手斧がないのにあるように動いてみたり、持っていない手斧でこちらの手斧を受けようとしてみたり、何がしたいのかよく分からない。
こうなると普通の亀を相手にしていた方がよほどに厄介で、先程の小亀の方がいくらかマシだっただろうなぁ。
人型になって立ち上がってしまったせいで、弱点と言える甲殻のない部分が前面に出てしまっているし、何もかもが失敗してしまっている。
おかげで手斧を投げれば投げる程、傷が増えて血が流れて……どんどん弱っていくのだから、こちらとしては大助かりではある。
複数体現れた人型亀だったが、そんな有り様なものだからどんどんと減っていってしまって……結局そのまま何事もなしの決着となってしまう。
「……まぁ、目標の素材は手に入ったから良かったんだよな、うん」
周囲に倒れ伏す小亀と人型亀の死体を見やりながらそんな声を上げると、刺突剣の汚れを懐にしまっていた布で拭いながらジュウハが言葉を返してくる。
「素材としては小ぶりで、質も悪そうだが……まぁ、楽に手に入ったのは何よりだ。
ただこいつをドラゴン素材って言って良いものなのかは迷うとこだな。
外見からしてアースドラゴンの系譜ではありそうだが、アースドラゴンだと言い張るには無理がありそうなんだよな」
「あー……まぁ、これをアースドラゴン素材と言い張るのは難しいだろうな。
……そもそもこれは何なんだ? アースドラゴンの子供や親戚か? そうだとして何だってまた私達の前に現れたんだ? 普通にアースドラゴンに出て来られた方が厄介だったぞ?」
「そのアースドラゴンの大群をどっかの誰かさんがあっさりと討伐したから、形を変えてきたんじゃねぇかな。
そして恐らく狙いは模倣だ、アースドラゴンの大群をあっさり倒すこちらの戦い方を真似ようとしたんだろうよ」
「……亀がこちらを模倣してどうするんだ? 亀のまま戦い方を変えるとかした方が厄介だろうに。
たとえば……亀が空を飛んだら驚くし厄介だと思うぞ。
そもそも亀にそんな変化を与えられるなんて、何者の仕業なんだ? 亀が自分でやったのか?」
「……空を飛ぶための労力で早く動くなり、火力を上げた方が良いんじゃないか?
そして何者の仕業かは……まぁ、考えるだけ無駄だろうな、それこそ神々に聞いてみるしかないだろうさ。
……ま、アースドラゴンの方が厄介だったっていうのはその通りだ、負ける気はしないが面倒な相手だってのは確かだからな」
と、そう言ってジュウハは私の肩をバンバンと叩いてくる。
それを受けて私も叩き返してやろうかと手を振り上げると……直後地響きのような凄まじい吠え声が響いてくる。
その声の方へと視線をやると2体の亀……アースドラゴンの姿があり、それを見たジュウハががっくりと項垂れ声を上げる。
「……結局出てくるのかよ!? さっきのはただの捨て駒か!?」
そう言ってジュウハはすぐさま剣を振り上げて構えを取り……先程の戦闘では静観していた皆も構えを取る。
私もすぐさま戦斧を拾い上げて構え直し、駆け出す。
……そうして私達は、小亀と人型亀と、アースドラゴン二体という戦果を得て、堂々の帰還を果たすのだった。
お読みいただきありがとうございました。
次回は戦いを終えてのあれこれの予定です




